ライカスマホ実機レビュー:15枚の作例で見る、「Leitz Phone 1」の本気度

Leitz Phone 1 背面カメラ

7月16日、「ライカ初のスマートフォン」(ソフトバンクリリースより)が発売される。

撮影:林佑樹

伝統的な高級カメラメーカーとしてもしくは高級レンズとして見聞きするメーカーの1つであるLeica(ライカ)から、スマートフォン「Leitz Phone 1」(ライツフォン ワン)が本日発売になる。ソフトバンク専売で直販価格は18万7920円(税込、一括購入時)。

Leitz Phone 1の外観については既報の通りだが、肝心のカメラ性能については発表時に触れることはできなかった。今回は、発売目前の実機先行レビューから、カメラ性能を重点的にレポートしていく。

本体の質感、付属品にこだわりを感じる外観

Leitz Phone 1 側面

側面には細かい溝が施されている。

撮影:林佑樹

Leitz Phone 1はシャープの2021年のフラグシップ機「AQUOS R6」をベースにしたモデルで、比較すると、外観デザインのどこに力を入れてるのかがわかる。

まずは本体側面の特徴的なデザインが目を引く。溝が細かく用意されており、滑り止めの役目を果たしている。頂部や底部についてはフラットで、カメラファンにはわかる「Leicaのカメラ」的なつくりだ。

背面には大きなサークルとLeicaロゴがあり、2021年に発表されたスマートフォンで見ると、とても目立つ。また、専用ケースとカメラ用のキャップも用意されており、外観すべてをLeicaにできてしまうのも、独特の歴史を持つブランドを意識している。

ケース

ケースは柔軟性のある素材。

撮影:林佑樹

ケースはゴム製になっており、Leicaロゴもあしらわれている。この手の付属ケースは総じてざっくりしたつくりが多いのだが、Leitz Phone 1の場合は例外だ。

ディスプレイの両端が丸くラウンドした「エッジスクリーン」の端末でよく見られる、手に持ったときの誤入力を物理的に抑制するほか、上下に画面よりも高い「土手」が用意されており、不意の滑落時の耐久性を高めてくれている。

キャップとケース

キャップとケースをつけているところ。

撮影:林佑樹

また。キャップにはマグネットが仕込まれており、本体にセットした際の脱落を防止しており、撮影するアイテムとした場合の使い勝手がよく配慮されている仕上がりだ。

カメラ仕様はAQUOSと同じ、ただし独自のモノクロ撮影モードあり

レンズ

AQUOS R6とLeitz Phone 1に搭載されたSUMMICRON(ライカ製)7枚レンズ。

撮影:小林優多郎

先に記しておくと触れた限りでは、外観とカメラアプリの一部以外はAQUOS R6と同じだ。独自機能もAQUOS R6と同じものが並んでいる。

カメラの描写やチューニングについてもAQUOS R6と似ており、シャープとライカの全面協業で生まれたAQUOS R6の派生モデルと判断していいだろう。

背面にあるカメラは実質1基。広角19mm/F1.9、メーカーはレンズの明るさをアピールしているが、カメラ性能としてはむしろ、非球面レンズを含む7枚構成のレンズのほうが重要だろう。

このレンズは、スマホ向けとしてはかなり大きい「1インチのイメージセンサー」に耐える描写性能を得るべく開発されたものだ。建築物であれば細部のディティールをよくつかむ描写力があり、階調表現についても豊かだ。

アイコン

カメラアプリはアイコンや一部のUIやフォントがAQUOS R6とは異なる。

撮影:小林優多郎

カメラアプリはAQUOS R6をベースにカスタムしたものと思われる。アピールされているのは「Leitz Looks」(ライツルックス)。“Leicaを体現する美しいモノクローム”とされており、独立したモードとして用意されている。

また、倍率やマニュアル設定時の一部フォントはLeica製品でお馴染みの「Leitz- Norm」。ちなみに、ロック画面の時計にも同フォントは使用されているが、システムのフォント設定から選ぶことはできない。

スクリーンショット

標準カメラのユーザーインターフェイス。

撮影:林佑樹

広角19mmとあるが、初期に設定されているのは1.2倍の24mm。19mmの状態では端が歪むほか、描写がやや甘いためと思われる。

また、画角の切替は19mm、24mmに加えて、2倍の48mmがある。24mmと48mmの撮影データはいわゆるデジタルズームだが、撮影後にアップスケール処理が施されれるため、違和感はない。

描写については、AQUOS R6同様に光学的な描写を重視したもの。昨今流行りのAIによる一種のCG処理で高画質化する「コンピュテーショナル・フォトグラフィー」とは真逆だ。

スマホカメラだけでみるとスマホらしからぬストイックな路線。最も、日常的にミラーレスカメラなどを使用している人であれば、この絵作りはむしろ馴染みやすい。

なお、以下に掲載するサンプルショットの一部は、国立科学博物館で開催中の企画展「加速器 -とてつもなく大きな実験施設で宇宙と物質と生命の謎に挑んでみた-」内覧時のものを使用している。
同企画展は2021年10月3日まで開催されており、2021年7月16日時点は来館予約が必要となっている。

屋内で撮影:水や金属の質感表現はAQUOS R6同様に良い

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19mm(1倍)

撮影:林佑樹

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24mm(標準、1.2倍)

撮影:林佑樹

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48mm(2倍)

撮影:林佑樹

AQUOS R6と同様に水や金属の出方がなかなかよく、試しにトリスタン加速器で使用された超伝導加速空洞を撮ってみた。

ややヌメっとした感じになり、(研究機関のメカ写真作品を撮影してきた)筆者的には非常に気分が高まる描写だ。傾向的には、やや明るめに露出設定がされるため、気持ち暗めに設定とほどよい重量感が生まれやすい。

超伝導加速空洞

超伝導加速空洞。溶接のつなぎ目あたりの解像感がたまらない。

撮影:林佑樹

Belle検出器中央ドリフトチェンバー最内部パーツ

Belle検出器中央ドリフトチェンバー最内部パーツのハーネス(中央から伸びているケーブル)や金属の軸を見ると、素性の良さがわかりやすい。

撮影:林佑樹

田町駅

晴天下はほぼ見たままの絵になる。

撮影:林佑樹

モニュメント

くもりの場合は「オートHDR」がオンになりやすかった。

撮影:林佑樹

ケーキ

テーブルフォトは苦手だ。あまり寄れず、18cmほど距離を撮る必要がある。

撮影:林佑樹

光学ボケ

光学的なボケが生じやすく、夜間であればそれを利用してみると楽しいだろう。

撮影:林佑樹

あじさい

AIモードは、AQUOS R6と同じもののようだ。

撮影:林佑樹

いい意味で“ズルい”専用モノクロモード「Leitz Looks」

Leitz Looksは、人によっては「エモい」と感じるような仕上がりになる。筆者感としては“ズルい(いい意味で)”写真表現だが、日常的な記録写真に使用しても雰囲気は高まりやすい。「とりあえず人物を撮影するときは、Leitz Looks」といった具合に便利だ。

また、マニュアル撮影モードで色合いを「0」にすると、Leitz Looksとほぼ同じ雰囲気になる。微妙に違う部分もあるのだが、ほとんど同じといってもいいくらいであり、好みで使い分けてもいいだろう(という処理からすると、AQUOS R6でもLeitz Looksに近い絵を楽しめる可能性はある)。

超伝導磁石のスライス

超伝導磁石のスライス。

撮影:林佑樹

人物

“それっぽく”なるため、人物用としてかなり優秀。

撮影:林佑樹

夜間の撮影データ

夜間の撮影データ

撮影:林佑樹

風景

「モノクロにも色がある」とわかりやすいのは、センサーとレンズ性能のおかげと言える。

撮影:林佑樹

小サイクロトロン用発電機

1935年ごろに使用されていた小サイクロトロン用発電機。

撮影:林佑樹

筆者は直近にAQUOS R6に触れており、カメラ性能だけで見ると、よく似ている。全面協業で開発された製品であるため、当然といえば当然だが、ライカ独自部分は外観やアプリの一部のデザインだけとも言える。

もちろん、撮っているときのフィールは良好であり、(スマホとして見れば)カメラ性能の仕上がりはよく、その点では強く所有感を満たしてくれる。

撮影を楽しみたい+所有感を満たしたいという人には、とても刺さるスマホだ。

(文、撮影・林佑樹 編集・小林優多郎


林佑樹:1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、先端科学までに適応するほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影をテーマとしている。

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