40兆円ともいわれる宇宙ビジネス市場。
前編に引き続き、宇宙産業に参入している国内の注目企業を紹介していく。
※この記事は、衛星データプラットフォーム「Tellus」のオウンドメディア「宙畑」との共同企画です。「宙畑」がリストアップした企業をもとに、Business Insider Japanが抜粋、カオスマップ化し、解説しています。
※本記事の資本金表記は、各社公式サイトの公開情報をベースとしています
国内で宇宙産業に携わるプレーヤーをまとめた。
背景画像:NASA、デザイン:さかいあい
巨人「SpaceX」が立ちはだかる、打ち上げ輸送サービス
2012〜2019年に打ち上げられた衛星の数。
出典:Bryce Space and Technology
衛星コンステレーションの普及や自社で衛星を持つ企業が出てきたことから、小型衛星の打ち上げ機数は年々伸びている。
需要増を見越して、堀江貴文氏が出資していることから通称「ホリエモンロケット」で知られるインターステラテクノロジズ(本社:北海道広尾郡大樹町/資本金:9500万円)は、ロケットの開発を進めている。
7月3日には、同社2度目となる宇宙空間への到達に成功した。
出典:インターステラテクノロジズ
同社が開発を進めている衛星の軌道投入ロケットは、2023年に完成する計画だ。
打ち上げ輸送サービスでは、アメリカのSpaceXが先行者として立ち位置を確立している。
SpaceXが数十機以上の衛星を相乗りさせて打ち上げることで費用を抑える戦略を取っている一方、インターステラテクノロジズは「一桁安い価格の小型ロケットで日程や軌道を柔軟に設定できる専用の打ち上げが行える点を強み」だとしている。
インターステラテクノロジズの拠点がある北海道大樹町は、地域の産業活性化を見込んでロケットを打ち上げる射場のシェアリングサービスを行う「宇宙港」の整備にも取り組んでいる。
インターステラテクノロジズの事業は、大樹町の宇宙港プロジェクトにとっても重要なマイルストーンだ。
北海道スペースポートの完成イメージ。
出典:SPACE COTAN
世界から注目の「宇宙商社」
衛星やロケットの製造などに直接関わるのではなく「宇宙商社」として独自の立ち位置を確保しているのが、Space BD(本社:東京都中央区/資本金:5億6900万円、資本準備金を含む)だ。
Space BDは、宇宙ビジネスの入り口となる衛星の打ち上げを広くサポートしている。
同社の事業の柱となっているのは、JAXAから選定された国際宇宙ステーション(ISS)からの小型衛星の放出や実験装置利用の仲介事業だ。
衛星は地球を周回する軌道に到達してはじめて利用できる。最近、ロケットで直接宇宙空間に届ける手法だけでなく、まずはISSに衛星を運び、日本実験棟「きぼう」から衛星を放出する方法を選ぶ企業が増えている。
日本実験棟「きぼう」から超小型衛星が放出される様子。放出の準備は、ISSに滞在する宇宙飛行士が行う。
出典:JAXA/NASA
ISSには物資を輸送する定期便があるため、開発が遅れても打ち上げ枠を確保できる可能性があることや打ち上げ失敗のリスクが低いことがメリットだ。
現在、ISSから衛星を放出できるのは、日本の「きぼう」だけで、海外企業の利用も多いという。衛星放出の管理をはじめ、「きぼう」にある実験装置の利用や衛星事業者向けに船外装置の利用などの仲介も、Space BDが担っている。
宇宙空間での需要に応える「軌道上サービス」
宇宙空間に衛星が増えたことで、衛星軌道上でのサービスの需要も高まっている。特に注目したいのが、「宇宙ゴミ問題」だ。
一般的に、運用終了後の衛星は、大気圏に突入して燃え尽きる。しかし、何らかの問題で燃え尽きなかった衛星や破片は、宇宙ゴミとして宇宙空間を漂い続けることになる。
こういった宇宙ゴミ同士が衝突し、他の衛星に危害がおよぶ可能性が指摘されている。
その解決に取り組むベンチャーとして世界的に注目されているのが、日本のアストロスケール(本社:東京都・墨田区)だ。
3月には実証試験用の衛星を打上げ、宇宙ゴミに見立てたパーツを回収する運用を実施している。
実証実験衛星の「ELSA-D」と模擬宇宙ゴミ。
出典:アストロスケールホールディングス
そのほか、宇宙空間の衛星に燃料を補給したり、軌道を変更したりするなど、さまざまな「軌道上サービス(In-Orbit Servicing)」が登場し始めている。
2022年月面での実証へ、しのぎを削る
2024年に有人月面着陸を目指す、NASAの「アルテミス計画」に、日本も本格的に参画することが決まった。その流れを受けて、民間企業による月面探査プロジェクトが再び注目されている。
ロボットクリエイターの中島紳一郎氏が2012年に立ち上げたベンチャー・ダイモン(本社:東京都・大田区/資本金:1100万円)は、月面を探査する小型探査車「YAOKI」を開発した。
YAOKIは、アルテミス計画の一環で2022年に打ち上げられる月面着陸船に相乗りして、月面での実証に挑む予定だ。
ダイモンは大規模な資金調達無しで打上げロケットと着陸船の手配にしている。これは、探査車の小型化と軽量化に成功した結果だ。
月面を探査する小型探査車「YAOKI」。
撮影:井上榛香
ダイモンは総合化学メーカー三菱ケミカルとパートナーシップを結んでおりカーボンファイバー強化プラスチックなど、軽量かつ高強度の素材の提供や技術支援を受けている。従来の探査機のおよそ10分の1にあたる498gに重量を抑え、打ち上げにかかる費用を大幅に削減したという。
なお、同じく月面探査を計画しているベンチャー・ispace(本社:東京都中央区、資本金:99億2982万6415円、資本準備金等含む)は、2022年に着陸船を打ち上げる計画だ。
JAXAとタカラトミー、ソニー、同志社大学が共同で開発した「変形型月面ロボット」で月面のデータ取得を行う。
2022年は、日本の民間企業による月面探査が盛り上がる1年になるかもしれない。