木星を周回するNASAの探査機「ジュノー」のイメージ図。
Thomson Reuters
- 木星探査機「ジュノー」が撮影したNASAの動画が公開された。
- ジュノーが木星の最大の衛星である「ガニメデ」に接近した際の最新動画も含まれている。
- 映像には木星のサイクロンとガニメデの明るく白いクレーターが映し出されている。
NASAの木星探査機「ジュノー(Juno)」は、2016年から木星の写真を地球に送り続けている。今回は、木星の轟音を立てるサイクロンや巨大な嵐を通過するときに、探査機からどのような景色が見えるのかが分かる新しい映像が公開された。
また、その映像では木星の最大の衛星で、水星よりも大きい氷の球体「ガニメデ(Ganymede)」も間近からから見ることができる。
ジュノーは2021年6月7日、ガニメデに645マイル(約1038キロメートル)以内に接近して飛行した。これは探査機が到達したガニメデまでの一番近い距離だ(最後の接近は2000年にNASAの木星探査機「ガリレオ(Galileo)」によるものだった)。その1日後、ジュノーは木星へ34回目の接近し、撮影を行った。
アマチュア科学者のジェラルド・アイヒシュテット( Gerald Eichstädt)は、この2つの旅の映像をまとめ、探査機が天体を通過する様子を示すタイムラプス動画を作成した。動画は3分30秒だが、実際にはジュノーがガニメデと木星の間の73万5000マイル(約118万2867キロメートル)を移動するのに約15時間、さらに木星の両極間を移動するのに約3時間かかっている。
以下で動画を見てみよう。
映像の冒頭では、クレーターで覆われたガニメデの表面が見える。氷が固体から気体に変化する際にできる暗い斑点があるのが特徴だ。よく見ると、ガニメデの最も大きくて明るいクレーターのひとつである「トロス(Tros)」が、放出された物質の白い光線に囲まれているのが見える。
この画像の撮影時、ジュノーは時速約4万1600マイル(約6万6948キロメートル)で飛行していた。しかし木星に近づくにつれ、ジュノーは木星の重力によって時速13万マイル(約20万9200キロメートル)近くまで加速した。
動画では、木星が暗黒の宇宙空間から水彩画のように浮かび上がり、その荒れ狂う表面の様子がよくわかる。連なる白い楕円形は、木星の南半球の巨大な嵐「真珠の連なり(string of pearls)」(この動画では8つ嵐のうちの5つが見える)だ。白い光の点滅は稲妻だ。
テキサス州サンアントニオの「サウスウエスト・リサーチ・インスティテュート(Southwest Research Institute)」でジュノーの主任研究員を務めるスコット・ボルトン(Scott Bolton)は、「この動画は、深宇宙探査が、いかに美しいものであるかを示している」と声明で述べた。
「今日、人類が地球の軌道上で宇宙を訪れることができるというエキサイティングな展望に近づいていることは、人類が太陽系の異星人の世界を訪れるであろう数十年先の未来に向け、我々の想像力を駆り立てる」とボルトンは付け加えた。
ジュノーはすでに木星の謎のいくつかを解明している
木星。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS, Tanya Oleksuik
ジュノーは木星の周りを楕円軌道で飛行しており、53日間に1度、木星に接近している。しかし、ガニメデへの接近を行ったことで、その期間は43日間に短縮された。
探査機の主な目的は、木星の磁場のマッピング、北と南の光(オーロラ)の研究、温度、雲の動き、水の濃度などを含む大気の要素を測定することにより、木星の起源と進化についての洞察を得ることだる。
ジュノーは2016年7月に木星の軌道に入った。木星は地球からおよそ3億9000万マイル(約6億2764万キロメートル)離れている。当初は7月でこのミッションは終了する予定だったが、NASAはジュノーでの探査を2025年まで延長した。
木星探査機ジュノーが10回目のフライバイで撮影した木星。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstadt/Sean Doran
これまでのジュノーによるフライバイによって、木星の雷の多くが北極に集中していることなど、重要な発見があった。また、木星の極には嵐が対称的に集まる傾向があることや、木星の強力なオーロラが人間の目には見えない紫外線を出していることなども判明した。
2021年7月9日には、ジュノーの観測によって、なぜオーロラが発生するのかを解明する論文が発表された。その理由は、電気を帯びた原子(イオン)が、木星の磁場で電磁波を「サーフィン」した後、木星の大気に衝突するというものだ。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)