ケネディ宇宙センターにある宇宙ステーション整備施設内で、研究者たちがチリペッパーを栽培している。
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- NASAの宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションでチリペッパーの栽培を始めた。
- 約4カ月で、宇宙飛行士たちはスパイシーな食事を楽しめるようになるという。
- ペッパーは栄養価が高く、深宇宙探査に向かう宇宙飛行士にとっても最適な食材だ。
NASAの宇宙飛行士は、宇宙でスパイスを効かせようとしている。
国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士は、食材栽培収穫実験の一環としてチリペッパーの栽培を始めた。
チリペッパーの種は、2021年6月のスペースX社による22回目の商用補給サービスミッションで宇宙ステーションに届けられた。
今回の実験「Plant Habitat-04(PH-04)」では、48個のハッチ・チリペッパーの種を約4カ月かけて育てる。宇宙飛行士はチリペッパーが赤くなったら味わうことができるが、緑の状態でも食べられるという。
NASAのスペースXクルードラゴン宇宙船運用2号機(Crew-2)ミッションに参画しているフライトエンジニアのシェーン・キンブロー(Shane Kimbrough)は、種に水やり、実験を開始した。NASAによると、キンブローが宇宙で作物を育てるのは、初めてではない。彼は2016年、野菜栽培実験「Veg-03」の一環として「Outredgeous(とんでもない)」と呼ばれる赤いロメインレタスの栽培を行って、それを食べた。
NASAのシェーン・キンブロー宇宙飛行士が、48個のチリペッパーの種が入った容器を植物栽培装置「アドバンスト・プラント・ハビタット(APH)」に入れる。
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NASAによると、チリペッパーは、「アドヴァンスト・プラント・ハビタット(Advanced Plant Habitat、APH)」という、オーブンレンジほどの大きさの装置で栽培される。これは、宇宙飛行士が作物を栽培する軌道実験室にある3つの植物栽培装置の1つだ。
「APHは宇宙ステーション内で最も大きな植物栽培装置で、植物の成長と環境を管理する180のセンサーと制御装置が付いている」と、PH-04のプロジェクトマネージャーを務めるニコール・デュフォー(Nicole Dufour)は述べた。「これは多様性を持った栽培容器で、ケネディ宇宙センターからも実験の制御が可能なので、宇宙飛行士が栽培に関わる時間を削減できる」と彼女は付け加えた。
NASAの宇宙飛行士が宇宙ステーションで、チリペッパーを種から成熟するまで栽培するのは、これが初めてだ。PH-04の研究リーダーのマット・ロメイン(Matt Romeyn)は、「発芽から成長までの期間が長いため、これまでに宇宙ステーションで行われた中で最も複雑な植物実験の一つだ」と話した。
なぜチリペッパーなのか
ロメインによると、チリペッパーはビタミンCやその他の栄養素が豊富だ。また微小重力下でも、しっかり育つ逞しさがある。さらに、調理の必要がなく、収穫してすぐに食べられる。
チリペッパーの色も、宇宙ステーションに搭乗する宇宙飛行士にとって適している。「宇宙でカラフルな野菜を育てることは、心身の健康に長期的なメリットをもたらす」と、ロメインは述べた。
「色や香りのある植物や野菜の栽培は、宇宙飛行士の幸福度の向上に役立つとわかってきた」
実をつけたハッチ・チリペッパー。
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ペーパーの味は、実験の重要な要素だ。PH-04のサイエンスチームリーダーのラシェル・スペンサー(LaShelle Spencer)は「チリペッパーの辛味は栽培条件によって決まる。微小重力、光の質、温度、根部分の水分量が、味に影響を及ぼす。果物が成長して熟し、どのような味になるのかは興味深い」と話した。
宇宙飛行士が食べる食材は、栄養価が高いだけでなく、おいしくなければならない。宇宙飛行士は微小重力の影響で味や臭いの感覚が薄れることがあるので、彼らは辛味や香りの高い食事を好むだろうと、ロメインは語った。
栄養面や補助食品としての観点から、数多くの宇宙農業の研究が行われており、宇宙飛行士が無重力下でさまざまな食材の栽培を行っている。国際宇宙ステーションの宇宙飛行士たちには、2021年5月、エチオピアンケールとして知られるアマラ・マスタードや、以前に栽培したエクストラドワーフ・チンゲンサイなどの新鮮な野菜が供された。
NASAによると、これらの実験は月や火星へ向かう長期ミッションで、宇宙飛行士への食糧供給の解決策を見出すための試みの一つだ。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)