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DMで「カス」「ブス」監視アカウントまで。誹謗中傷に悩まされた20代ライターの記録

スマホをみる女性

「何階なら死ねるだろう」。ヤフコメやTwitterでの日々の誹謗中傷に悩まされた(写真はイメージです)。

GettyImages/yamasan

「障害者は子どもを産むな。産むからこうなる」

「障害者なのにヤることヤってるから子どもなんかできるんだろう」

2020年9月、自分の貧困家庭で育った体験をウェブメディアに寄稿し、初めてヤフーニュースに転載された時についたコメントの一部だ。

筆者は精神障害者の父を持ち、家に学習環境がなく、制服をそろえることもできないような貧困家庭で育った。そうした実体験をもとに、副業でライターを始めて丸1年が経ったが、発信すると大挙して押し寄せる、ありとあらゆる攻撃的な声や批判を日々、浴びてきた。

「20代」「女性」「社会的弱者というテーマ」「フリーランス」といった、私の属性自体が、そもそも“叩きやすい”のかもしれない。

この現実に警鐘をならすためにも、自分が体験したことを可視化する必要を感じ、筆を取ろうと思う。

「何階なら死ねるだろう」とビル眺める日々

冒頭のヤフコメ以外にも、冒頭の記事発表後、TwitterなどもSNSも含めこんなものが寄せられた。

「生活保護受給者でもないのに貧困語ってんじゃねーぞカス。自己破産してよ」

「精神障害者が子どもを作らないためにこの方の貧困自慢を教材にしたい」

「乞食野郎。顔が良かったら金に困らないから、この人ブスなんだろうね」

こうしたコメントを読んだ私はしばらくして、強烈な希死念慮にとらわれるようになった。街のビルを見ては、何階なら死ねるだろう、と思う日々が続くようになった。

食欲もなくなり、突発的に涙が出る。出勤はできるものの、休みの日は布団から一歩も動けない。友人から勧められ心療内科を受診すると、重度の抑うつ状態、適応障害と診断された。

ライターとして夢の先にあった残酷な現実。もちろん適応障害を発症したのは、ヤフコメやSNSだけが原因ではない。長年の格安シェアハウス生活に終止符を打ち、一人暮らしを始め、環境が一変したことなども重なった。

しかし、やはり決定打になったのは、インターネット上の誹謗中傷であることは間違いない。

家族にその言葉が直接届くことはないだろう。

しかし、やっと書き手になるという夢がかなうと同時に、自分以上に大切な人が悪く言われるという「残酷な現実」を突き付けられ、呆然と立ち尽くした

どうやって誹謗中傷が始まったのか

twitter

「カス」「乞食」「ブス」。筆者に対する醜い誹謗中傷は後を絶たなかった。

Shutterstock/Koshiro K

そもそも私が貧困や社会的弱者についての記事を書くライターになったのは、あるnoteを出したことがきっかけだった。

当時私は世にあふれる、過剰にセンセーショナルさを前面に出した貧困記事に辟易としていた。世間の貧困への無理解に打ちのめされ、何かに駆り立てられるように、自身の体験を包み隠さず書きつづった。

2020 年の春に書いたnoteの記事が15万PVを超え、数百件のメッセージが寄せられるなど大きな反響があった。それを機に、いろんな関係者をたどって、ライターへの道が開けた。

「人生観が変わりました」「こんな貧困が日本にあるなんて、この年になるまで考えもしませんでした」

そんな数百件のメッセージは、読むだけで心の奥が射抜かれるような感覚を覚えた。

一方で、そのころから中傷も始まるようになったのだ。

noteを出すまではフォロワーは200人ほどで、穏やかなTwitter生活を送っていたが、その後、短期間で10倍に増えた。

5chという掲示板で、記事を揶揄・嘲笑する内容のスレッドが立ち上がり、名前も顔も知らない人達から「貧乏人は見苦しい」「自称貧困」といった言葉が書き込まれる

私のことが書かれたページがあると、わざわざ連絡してくる人がいて、書かれていることを知った。また私の監視用アカウントも複数作成され、同一人物であることをにおわせるものもあった。

1人の人物が7つのアカウントを駆使し、しつこく絡んできたこともある。私がツイートをすると数秒後にそれを引用したツイートがされる。ブロックしてはまた新たなアカウントが作成される。完全なイタチごっこだった。

DMでの中傷は名誉毀損に問えない?

一番多かったのはDM(ダイレクトメッセージ)での中傷だ。「カス」「乞食」「処女」といった言葉を使い、私の出演したイベントに触れ、ラジオに出演したときは、「その関係者とつながりがあるので、お前をいつでもつぶせる」と脅された。

DMは仕事依頼や感想の窓口だったので閉じるわけにもいかなかったが、申請が来るたびに、攻撃的な内容ではないかと心臓がビクついた。

刑法230条は名誉毀損罪について「公然性」「事実の摘示」の上で「人の名誉を毀損した」という構成要件を規定している。 個人に直接送るDMは公然性がないとみなされ、名誉棄損の罪には問えない可能性が高いとされる。

それを知ってか知らずか、警告すると、中傷ツイートは削除するが、DMで法律の知識を並べ、煽ってくる人物もいた。

状況を知った複数の友人が通報したところ、アカウントが削除されたが、通報との関連性は不明なままだ。

被害者にばかり「自衛」求める筋違い

交差点

被害者にも非がある、と「自衛」を求める風潮に疑問がある。

撮影:今村拓馬

ライターになってから、多くの30~40代の先輩ライター、作家と知り合ったが、彼女らは「20代はとにかく嫌がらせが多かった」と口をそろえる。男性から性器の画像が送られてくるのは日常茶飯事、身の危険を感じることもたびたびあったという女性作家もいた。

Twitterによる被害が深刻だったので、Twitterを見なければいいという指摘もあった。

だが、特定の媒体に属する記者でもない、私のようなフリーランスのライターは、Twitterで取材対象を見つけ、コンタクトをとることも多い。

また、時事性のあるトピックに対しTwitterで意見やエピソードを募集して記事に反映させたり、記事のテーマにしたりするなど、そこから生まれた記事も多数ある。

こうした「仕事に不可欠」なツールを、一部の加害者のせいで絶たなければならないとしたら、こんなに理不尽なことはないだろう。

被害者にばかり「自衛」を求めるのは、筋違いだ。いじめの被害者に学校を去れと言うようなもので、本来なら加害者が罰せられ、利用を制限されるべきだろう。

転換期迎える日本で警鐘鳴らしたい

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2021年7月、ジャーナリストの伊藤詩織さん。Twitter投稿で名誉を毀損されたとして損害賠償を求め、勝訴した。

撮影:西山里緒

ただ、SNSの誹謗中傷を巡っては今、社会が少しずつ動き出している。

インターネット上で中傷や脅迫を受けたとして、作家の川上未映子氏が投稿者に対し損害賠償を求めた訴訟で6月、東京地裁は投稿者に323万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

性暴行の被害を訴えているジャーナリストの伊藤詩織さんもツイートでの中傷を訴えた訴訟で7月、勝訴した。

2020年にSNSでの誹謗中傷を受けプロレスラー木村花さんが死去したことは社会に衝撃をもたらした。

自民党小委員会は2021年6月、花さんの母親の響子さんと面会。刑法の侮辱罪の厳罰化法制審議会(法相の諮問機関)で速やかに検討するよう求める緊急提言案をまとめたことを報告した。

情報開示請求の煩雑さや、それにかかる膨大な経費と時間、罪に問える内容の範囲の狭さなど、課題は山積みではあるもの、無法地帯とも言えるネットという言論空間の法整備が急がれている。

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