メイシーズの広報担当者は「組織的な窃盗が多発し、繰り返し犯行が行われているごく一部の店舗で、他のセキュリティ手法と併せて顔認識技術を使用している」とInsiderに述べている。
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- NPOの「ファイト・フォー・ザ・フューチャー(FFF)」は、顔認識ソフトウェアを店舗で使用している大手小売業者の動向をチェックしている。
- FFFのレポートによると、メイシーズはこの技術を使用している6社のうちの1つだ。
- ウォルマートやターゲットなどの数社は、顔認識技術を使用していないとNPOに語っている。
アメリカの小売店では顔認識システムが使われており、それがプライバシー保護団体の反発を招いているとAxiosが報じた。
デジタル上の権利保護を目指すNPO「ファイト・フォー・ザ・フューチャー(FFF:Fight for the Future)」は、セキュリティ目的で使用されることの多い顔認識ソフトウェアを企業が使用することに反対するキャンペーンを開始した。この種のソフトウェアは、従業員や顧客の顔をスキャンして保存することができ、通常は万引きや詐欺を防止することを目的としている。
「お店に入ったから、あるいはそこで働いているからといって、顔のデータが保存されたり、それが売られたりするべきではない」とFFFは述べている。
「このような権利を侵害する技術の導入を検討しているアメリカの小売業者は、プライバシーよりも利益を優先させることは間違っていると知るべきだ」
この技術の支持者からすると、顔の画像は個人情報とはリンクしておらず、このシステムにより非接触型の支払いなど、ショッピング体験の向上につながるとしている。Axiosによると、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、少ない従業員で店舗を運営するための手段として、このシステムを採用する小売業が増えたという。
キャンペーンのウェブサイトによると、メイシーズ(Macy's)、アップル(Apple)、ロウズ(Lowe's)、アルバートソンズ(Albertsons)、エース・ハードウェア(Ace Hardware)、H.E.Bグローサリー(H.E.B grocery)の6社が同技術を採用している小売業者となっている。しかし、アップルとロウズの広報担当者はInsiderに対して、それを否定した。
メイシーズの広報担当者は「組織的な窃盗が多発し、繰り返し犯行が行われているごく一部の店舗で、他のセキュリティ手法と併せて顔認識技術を使用している」とInsiderに回答した。
ウォルマート(Walmart)、クローガー(Kroger)、ホームデポ(Home Depot)、ターゲット(Target)、コストコ(Costco)、CVS、ダラー・ツリー(Dollar Tree)、ベライゾン(Verizon)は、顔認識技術を使用しておらず、今後も使用する予定はないとFFFに述べている。
Future of Privacy Foundationの人工知能・倫理担当ディレクターであるブレンダ・リオン(Brenda Leong)がAxiosに語ったところによると、小売店は顔認識技術を利用して、従業員の働きぶりを監視したり、ロイヤルカスタマーを特定したり、買い物客の滞在時間を測定したりしている可能性があると述べている。
ロイターが6月に報じたところによると、4兆5000億ドル(約493兆円)以上を運用する50人の投資家が、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アリババ(Alibaba)、ファーウェイ(Huawei)などのハイテク企業に対し、より倫理的な方法で顔認識技術を開発するよう呼びかけている。最近の研究によると、現状の顔認識システムは非白人や女性の顔を識別する精度が低いことが明らかになっており、人種的なバイアスに対する懸念が高まっている。
2019年には、18歳のウスマネ・バー(Ousmane Bah)さんが、アップルの顔認識によって誤認逮捕されたとして、同社に対して10億ドル(約1100億円)の損害賠償を求める訴訟を提起した。同社はApple Storeで顔認証が使われているという訴えを否定している。
メイシーズ、アルバートソンズ、エース・ハードウェア、H.E.Bグローサリーにもコメントを求めたが、回答は得られていない。
[原文:The 4 retail stores you probably shop at that use facial-recognition technology]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)