「PDS 70星系」は、地球から約400光年離れた距離にあり、形成の途上にある。大きなリングの中心にあるのが恒星「PDS 70」で、青い円で示されているのはその惑星「PDS 70c」。
ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Benisty et al.
- 衛星の形成に関わる円盤に囲まれた太陽系外惑星が初めて捉えられた。
- 「PDS 70c」はガスや塵から成る円盤に囲まれている。この円盤には地球の月を3つ形成できるほどの質量があるという。
- この星系を研究することで、惑星や衛星がどのように形成されるのかを知ることができるだろう。
太陽系外で衛星の形成過程にあると考えられる様子が初めて捉えられた。
地球から約400光年離れた恒星「PDS 70」の周りを木星型の2つの巨大ガス惑星が回っている。そのうちの1つ「PDS 70c」は衛星を形成しているようだ。研究者らはアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)のアンテナを、このはるか遠くにある「PDS 70星系」に向け、「PDS 70c」を取り巻くガスや塵の円盤を捉えた。
天文学者はこの「円盤」こそが、衛星を生み出すものだと考えている。惑星の重力によって周辺の塵やガスが集まり、惑星の自転によってそれが円盤状に回転し始める。やがてはその円盤の中でガスや塵が塊となって衛星が形成される。この仕組みはまだ完全には解明されていないが、「PDS 70c」を研究することで、多くのことが学べるだろう。
また、同じように恒星である「PDS 70」自体にも円盤があり、そこに含まれるガスや塵がいずれは融合して新たな惑星が形成される可能性がある。
この研究についての論文が、2021年7月22日付けで「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。共著者であるカーネギー研究所地球惑星研究所の研究員、ジェハン・ベー(Jaehan Bae)はプレスリリースで「この新たな観測結果は、これまで検証できなかった惑星形成の理論を証明する上でも、非常に重要だ」と述べている。
下の画像が捉えた「PDS 70c」を取り巻く円盤の直径は、地球と太陽の距離とほぼ同じで、土星の環の直径の約500倍にあたる。
惑星「PDS 70c」とその円盤。
ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Benisty et al.
この円盤には、地球の月と同じ大きさの衛星を3つ作るのに十分な物質が含まれていると、論文に記されている。
論文の共著者でヨーロッパ南天天文台の研究員であるステファノ・ファッチーニ(Stefano Facchini)は「惑星や衛星がいつ、どこで、どのようにして形成されるのかは、まだ明らかになっていない」とリリースで述べている。
「この星系は、惑星や衛星の形成過程を観測・研究する上で、またとない機会を提供してくれる」
「PDS 70」の周りを回るもう1つの惑星である「PDS 70b」には、円盤の形跡が見られない。これは「PDS 70c」がガスや塵をすべて引き寄せたため、双子の惑星である「PDS 70b」周辺では物質が枯渇したことを示しているのではないかと研究者は考えている。円盤は、衛星を形成するだけでなく、そこに含まれる物質がゆっくりと惑星に引き寄せられることで、惑星の成長を促しているとも考えられている。
研究者たちは、チリのアタカマ砂漠に建設中の超大型望遠鏡を用い、「PDS 70星系」をさらに詳しく観察する予定だ。この超大型望遠鏡は、完成すれば地球上で最大の可視光・赤外光の望遠鏡となる。
[原文:Astronomers spotted a distant planet in the middle of making its own moon]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)