インテルが発表した2021年4〜6月期の決算は市場予想を上回ったものの、アナリストたちからは厳しい意見が相次いでいる。
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ウォール街のアナリストたちは、インテルが7月22日に発表した2021年第2四半期(4〜6月)の業績について、歯に衣着せぬ酷評を浴びせている。
売上高と利益のいずれも市場予想を上回ったものの、売上高は前年同期比2%増にとどまり、第3四半期の利益予想を引き下げたため、アナリストたちはより強い勢いが必要として、物足りなさを指摘した。
ミラボー・セキュリティーズ(スイス)のニール・キャンプリングは、顧客向けレポートに「インテルは慎重に、慎重に、というやり方から脱却する必要がある」と書いている。
インテルの成長はすでに数年前からスローダウン傾向だ。
米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの競合他社が、これまでインテル優位だったパソコンおよびデータセンター向け半導体チップで追い上げを見せている。インテルのデータセンター部門の売上高は前年同期比9%減だった。
また、(インテルのように設計から製造までの一貫方式ではなく)製造に特化した台湾セミコンダクター(TSMC)も強力なライバルとして存在感を増してきている。
「TSMC、韓国サムスン電子、AMD、米エヌビディア(NVIDIA)にとって、現在のインテルは恐るるに足らず。(今年2月に就任したばかりの)パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)には、狩りのターゲットにされて傷を負った獣のような企業体質を捨て去る取り組みが求められています」(キャンプリング)
徐々に投資額を増やしていくにとどまらず、「次世代テクノロジーにすべてを投下する」必要がある、というのがキャンプリングの見立てだ。
それでも、(狩られる側の獲物ではなく)「捕食者」になるには相当なコストがかかるだろう。
インテルは今年3月、200億ドル(約2兆1000億円)を投じてアリゾナに2工場を新設する計画を発表したが、ライバルのTSMCはそれ以上の投資を行っている。
「2021年7月下旬までに得られた情報からは、インテルが存亡の危機を回避したと判断すべきエビデンスはまだ得られていない」(キャンプリング)
2021年2月にインテルの最高経営責任者(CEO)に就任したパット・ゲルシンガー。
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一方、パソコン向け部門は好調だった。
新型コロナ感染拡大による行動制限を受け、在宅勤務などの目的でパソコンを買う人が増え、第2四半期の売上高は前年同期比33%増を記録した。
ただし、2022年に同じような需要が見込めるとは限らない。米証券会社エドワード・ジョーンズのローガン・パークはInsiderの取材にこう答えている。
「今四半期の好業績は、ほとんどがパソコン販売台数の増加に起因するもの。経営陣は2022年もさらにパソコン市場が拡大すると強調していますが、パンデミックという追い風あってこそ(の特需)であって、市場拡大が確実であるとは到底思えません」
潜在的な可能性であり、同時に難題でもあるのが、他社設計のプロセッサを製造する「ファウンドリー(受託生産)」事業だ。
インテルが先述の工場新設と同時に発表したばかりのファウンドリーには、ゲルシンガーCEOによる決算発表時の説明によれば、すでに100社以上の見込み客が殺到しているという。
(米中関係など)地政学的な緊張やサプライチェーンの制約を背景に、アメリカ国内で半導体製造を完結させる必要が高まっており、インテルのファウンドリーは魅力的な選択肢たりうるだろう。
「結局のところ、インテルは納期を守り、新たな半導体チップを開発し、需要を喚起することさえできれば、確実にビジネス基盤を固めることができるでしょう。
今後の大きな課題は、データセンター向けビジネスの規模感を適正化し、長期にわたる継続的な成長を確実にすること。なかでも大きいのがファウンドリーを軌道に乗せることです」(パーク)
インテルは最近、仮想化技術のVMware(ヴイエムウェア)からグレッグ・ラベンダーを引き抜いて最高技術責任者(CTO)に就任させるなどの組織変更も行っている。
パークによれば、ゲルシンガー新体制を望む方向に向かわせる上で、ラベンダーの存在はプラスだという。
「事業計画とここまでの動きをみる限り、(ゲルシンガー体制のインテルの船出は)正しい方向に進んでいるようだが、実際にやらねばならないことはまだ山ほどある」(パーク)
(翻訳・編集:川村力)