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ソニーの最新イヤホン「WF-1000XM4」に隠された“もう1つのすごい新製品”…「脱プラでないと売れない」時代の本気度

WF-1000XM4 パッケージ

ソニーの新型ワイヤレスイヤホンには、本体の他にもソニー開発者のこだわりがこもった“製品”が存在している。

撮影:小林優多郎

「これは、ソニーの隠れたもう1つの新製品ではないか」

ソニーが6月に発売した完全ワイヤレスイヤホンのハイエンド機「WF-1000XM4」のパッケージに初めて触れた時に、筆者はそう感じた。

WF-1000XM4 新旧比較

写真左から前機種「WF-1000XM3」と新機種「WF-1000XM4」のパッケージ。

撮影:小林優多郎

なぜかといえば、長年ソニー製品の取材を続けてきた筆者も初めて見る素材感、ひと目で分かる異なる世界観が、新しいパッケージからは見てとれたからだ。

実はWF-1000XM4のパッケージなどに使われている素材は「オリジナルブレンドマテリアル」と呼ばれる“ソニー独自の紙素材”だ。

確かに、世界的にはストローが紙素材に変わったり、買い物袋をエコバッグに変えたりといった形で、「石油由来のプラスチック」の使用を減らす脱プラの流れがクローズアップされている。

それでもなぜ、ソニーは手の込んだ素材開発をしてまで、紙素材のパッケージをつくったのか。

ソニーの開発担当者が語った「その理由」は、世界的な環境意識の潮流と、グローバルメーカーならではの課題が見え隠れするものだった。

単に「紙素材にすればいい」ではない

WF-1000XM4とWF-1000XM3

写真右のWF-1000XM3のパッケージの中身を見ると、左のWF-1000XM4のものが量もサイズも削減されているのが分かる。

撮影:小林優多郎

まず、ハッキリさせておくと、プラスチックは大量生産品に向いた優秀な素材だ。

軽くて丈夫で、柔軟性もあり、安い。透明のものも簡単につくれるので、製品や部品を保護しつつ、内側を見せるのにも向いている。

WF-1000XM4の包装設計を担当した橋本勝郎氏もプラスチック素材について「使いやすい」と表現する一方、今回WF-1000XM4の“プラスチックを全廃したパッケージ包装”は「苦労をした」と話している。

WF-1000XM4の紙素材

WF-1000XM4の梱包に使われている素材は、すべてオリジナルブレンドマテリアルという独自の紙素材だ。

撮影:小林優多郎

このワイヤレスイヤホンに関連した独自の紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」の採用は実に徹底したものだ。

それは箱や中の仕切りから、製品を包むフィルムに至るまで、この素材であることからも感じられる(充電ケースとイヤホン本体の間にある絶縁シートだけは、別の素材)。

WF-1000XM4には充電用のケーブルやサイズ違いのイヤーピースも同梱されている。従来ならケーブルにはまとめるための針金やソフトワイヤー、埃をつけないためのポリ袋を使っていたが、それもない。

「(プラスチックは)小さいところも、とにかくなくす、使わない」(橋本氏)ために、梱包方法も、同梱品も大きく変更された。前述のケーブルをまとめるバンドもなくしたため、梱包材自体がフタになるようにして固定したり、さまざまな工夫が施されている。

ケーブル

例えば、充電用のケーブルにも“まとめるため”のプラスチック素材は使われていない。

撮影:小林優多郎

グローバルメーカーならでは「脱プラのハードル」

ただ、ソニー初の完全プラスチックレス梱包を実現するためには、一筋縄ではいかない障壁が数多くあったという。

そもそも“脱プラ”にするために必要な素材は? その素材はどんな見た目であるべきか? 同種の製品のなかでは“高級機”にあたるが、価格に見合った風合いは出せるのか? 従来と比べて、どのくらいコストが跳ね上がるのか……。

色の試行錯誤

パッケージの色味も本体同様に、試行錯誤を繰り返した。

出典:ソニー

その中でも、複数の担当者が「困難だった」ハードルとして口を揃えて話していたのは、意外なものだ。

「1番難しかったのは(新素材で)ソニーの包装基準を満たすだけのクオリティーを出すこと」

これには、グローバルメーカーならではの理由がある。

世界各地で製造・販売をするソニーだけに、さまざまな条件の輸送に耐えられるか、輸送後の商品がしっかりとユーザーに届けられる品質を保っていられるか、などの点に独自の指標を持っている。

橋本氏はその中でも特に苦労した点を「(輸送時の)振動による埃の付着」だったと語る。

フィルムも薄い紙

製品本体をキズから守る薄いフィルムも、オリジナルブレンドマテリアルだ。

撮影:小林優多郎

前述の通り、従来ではポリ袋に入れて本体や付属品を埃(主に紙粉)から守ってきた。しかし、“脱プラ”を掲げたWF-1000XM4ではポリ袋は使えない。そこで、薄い紙のフィルムで本体を覆ったり、そもそも紙粉の出にくい素材にしたり、製品の品質管理の部署と調整することでそれらを解決した。

「(紙粉や)埃を極限まで減らしたが、紙だからゼロにはできない。(従来では)品質保証の(担当)部に(輸送)試験後のものを見せて埃がちょっとでもついているとNGだったが、基準を下げてもらった。

もちろん品質的にも見た目的にも、問題はないレベルにした。紙を打ち抜くときも端面から(紙粉は)発生するので、それも除去した」(橋本氏)

世界では「環境に配慮した製品」でないと売れない

WF-1000XM4 本体

本体は確かに主役だが、世界の消費者は本体だけの価値で購入を決めるわけではないようだ。

撮影:小林優多郎

ソニーはなぜ、あえて製品本体とは無関係な部分に労力をかけ、元々の社内基準を変更してまで“脱プラ”にこだわったのか。

橋本氏自身は登山などのアウトドアが趣味で、常々“脱プラ”の意識はあったそうだが、直接のきっかけとなったのは「企画(のチーム)からのストロングリクエスト(強い要望)」だったという。

企画を担当した辻万葉氏はそう強く推した理由を「製品開発前のユーザー調査」だと話す。

「(新製品開発にあたって、世界各国で)どういう商品の機能が欲しいかの観点で調査をしていた。その中で、(製品を)選ぶ基準として『環境に配慮していそうか、していなさそうか』という別の観点からのコメントがあった。

前の製品(WF-1000XM3)でもプラスチックに関してご意見をいただいていたこともあり『改善できないか』と考えたことが発端だった」(辻氏)

WF-1000XM4は、ソニーのワイヤレスイヤホンの中でも最も高い価格帯(3万円台)の製品だ。当然、購入する主なユーザー層は最新技術やトレンドに敏感な人だ。そういうファンが選ぶ「最新トレンド」は、性能はもちろんのこと、特に海外では“環境に配慮した製品かどうか”という視点も含まれているようだ。

ただ、「プラスチックを使わない」という骨子が決まってからは、前述のようなさまざまな課題に直面した。それらの調整を重ねていく過程で、ソニー社内のクリエイティブセンターで別途開発されていた、独自の紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」採用へと進んでいったという。

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