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旅行業界の若手社員はいま…。HISを辞めた20代女性、JTBからソフトバンクへ出向中の28歳

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大手旅行代理店のJTB、HISでは社員の出向を増やしている。

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「出向から戻っても、また出向になるかもしれない…」

大手旅行代理店では、雇用を守るため社員の他業種への出向を増やしている。

出向を命じられた社員にとっては、他社で新たな経験を積むことができる一方で、いつまで続くのか分からない状況に不安を感じる社員もいる。

大手旅行代理店・JTBからソフトバンクに出向中の社員と、出向をきっかけにエイチ・アイ・エス(HIS)からベンチャー企業に転職した2人の社員を取材した。

JTBの営業店、コロナが直撃

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JTBからソフトバンクに出向中の山内悠平さん。

撮影:横山耕太郎

「JTBからソフトバンクに出向というのは、私にとって武器になると思っています」

2021年4月からソフトバンクの法人マーケティング本部に出向している山内悠平さん(28)はそう話す。

山内さんは現在、ソフトバンクでカスタマーサクセスを担当。ソフトバンクの携帯電話を契約している中小企業に対して、利用状況やニーズを把握してサービスを提案したり、利用の継続を促したりするのが主な業務だ。

山内さんは2015年、新卒でJTBに入社。営業店を異動しながら、約5年間、店頭での接客業務に携わってきた。

コロナ前までは神奈川県にある大型ショッピングセンター内の店舗で勤務。国内旅行や海外旅行の提案や、チケットの手配などを任されていたが、コロナで状況は一変した。

緊急事態宣下のたびに相次ぐキャンセル

2020年4月、最初の緊急事態宣言では、店舗のあるショッピングセンターが休館。5月末までの約2カ月間、店舗業務は休止に追い込まれた。

「店は閉まっていましたが、旅行のキャンセル対応もあったため、週に数回は出勤していました。漠然とした不安を感じていましたが、今できることをしようと旅行業務取扱管理者の資格取得の勉強に当てていました

緊急事態宣言が明けた2020年6月からは、来店を予約制にして客数を制限したことから、勤務日が週5日から週約4日に減った。

政府の観光需要喚起政策「GoToトラベル」によって、一時は客足が盛り返したものの、その後は、感染拡大のニュースが流れたり、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が出されたりするたびに、予約のキャンセルが相次ぎ対応に追われた。

出向期間は「1年から3年」

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「店頭の業務は減っていたので、他部署への異動はあると思っていましたが、まさかソフトバンクと言われたときは驚きました」

2021年3月中旬になり、4月からソフトバンクの法人マーケティング本部への出向を命じられた。現在は、週1回の出社以外は在宅勤務をしている。

在宅勤務とはこういうものなのかと知りました。1日数十件、顧客に電話するのが仕事ですが、社内でのチャットを使ったコミュニケーションだけでなく、業務がデジタル化されておりカルチャーの違いを感じています」

出向期間は1年から3年とされている。いつJTBに復帰できるか分からない状況だが、山内さんは「めったにないチャンスだと前向きに捉えている」という。

「旅行業が厳しい状況は、今後数年は続くと感じています。でもワクチンの接種が進み、外出自粛が緩和されれば、旅行の需要は間違いなく復活する。そう思っているし、そう願っています。

やがて旅行業が復活した時のことを考えると、ソフトバンクという成長企業で働ける経験は、武器になると思っています」

JTBグループ、7200人の削減方針

一方で、JTBを取り巻く現状は厳しい。

2021年3月期の連結決算は、1052億円の最終赤字。グループ全体の約25%に当たる約7200人を削減する方針で、2021年度末までに国内の115店を減らしてコストカットを進め、2022年3月期の黒字化を目標に掲げる。

これまでJTBの店舗での接客を担ってきた山内さんだが、「厳しい現状で辞めてしまった同期もいますが、転職は全く考えていない」という。

「旅行が好きという思いでJTBに入社し、今もその気持ちは変わりません。これからJTBもDXの必要性が増していく。具体的にどう貢献できるかは分かりませんが、ソフトバンクでの経験を生かせるチャンスが来ると思っています

増える出向マッチングサービス

コロナ禍における業績悪化から雇用を維持するため、出向を検討する企業は増えている。

人材大手・アデコでは、2021年3月から在籍型出向支援サービス・キャリアブリッジを開始。社員の出向を検討する企業に対し、アデコが出向先の企業を紹介し、アデコは出向元から仲介手数料をもらう仕組みだ。

アデコによると、2021年8月までに約100人が他業種への出向を予定しているという。このサービスを利用し、旅行代理店・日本旅行からICT企業へ出向する男性社員(30代)は、「会社として旅行以外で収益を得る必要がある。全く未経験の業種だが、新しい視点と知識を得られれば」と話した。

HISを辞めてベンチャー企業へ

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HISから転職したユウカさん(仮名)は「他社への出向が転職を考えるきっかけになった」と話す(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

出向が増える一方で、出向をきっかけに旅行業界を離れる人も少なくない。

新卒でHISに入社し、営業を担当していたユウカさん(仮名、20代女性)は、2021年春にHISを辞めベンチャー企業に転職した。

ユウカさんはHIS在籍中の約半年間、他業種の企業への出向を経験したが、「今後も別企業への出向が繰り返されるかもしれない」という不安から、転職を決意したという。

HISでは2020年10月期の連結決算で、250億円の最終赤字を計上。2002年の上場以来、初めての赤字となり、国内100店舗の削減や、海外で働く従業員の削減を発表した。

外部企業への社員出向も加速させており、2021年6月には最大1500人を外部に出向させると発表している。

夏以降に減給、ボーナス出ず

新卒でHISに入社したユウカさんは、主に企業に旅行プランを提案する業務を担当してきた。

「国内でコロナの流行が始まった2020年2月以降は、キャンセルの嵐。キャンセル料についてホテルや航空会社と交渉したり、お客様に説明したりと対応に追われました」

しかし2020年4~5月は休業を言い渡され、6月以降は週に1日は出社し残りは休業する日々が続いた。

「休業中も給与は全額支払われていたのですが、夏ごろから減額になりボーナスは出ませんでした。会社として旅行業以外にも注力し始め、社員には電力や海外SIMなどを宣伝するように伝えられました。ただ、急に言われても難しいですよね」

出向後の不安に、若手の離職

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コロナの影響が長引き、若手社員を中心に転職者も出たという。

撮影:今村拓馬

ユウカさんは2020年秋から他業種への出向を言い渡された。業務内容は、基本的な事務作業がほとんどだったという。出向は約半年で終わったが、ユウカさんの考えには変化があった。

「それまでも転職が頭をよぎることはありましたが、出向する社員が増えてきた時期に若手社員の転職が増えていたこともあり、私も転職を決意しました」

ユウカさんは出向期間の終了に合わせて転職活動を開始。約1年間のブランクを不安に感じていたというが、転職活動は思いのほか順調に進んだという。

HISでの営業経験を評価してもらえました。これから圧倒的に成長しなくてはいけないという思いもあって、大手ではなくベンチャーを中心に面接を受けました」

数カ月後には転職先が決定。上司に退職の旨を伝えたが、上司は残念そうな表情を見せながらも「ユウカさんの若さなら仕方がないよね。会社としても何もしてあげられない」と言われたという。

ユウカさんは現在、ベンチャー企業で営業業務などを担当している。転職後の収入も、コロナ前の水準と変わらないが、「いつかまた旅行業にも関わりたい」と話す。

「もともと旅行が大好きで、HISで働けたことにも感謝しています。顧客本位で考えるスキルは、どこの業界でも生かせると今は感じています。

まだ転職したばかりではありますが、いつか今の会社のサービスをHISでも使ってもらえるように頑張りたい」

(文・横山耕太郎

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