恒星間天体「オウムアムア」の想像図。
ESO/M. Kornmesser
- 地球上に設置された望遠鏡を使って異星人の文明や技術を探索する新しいプロジェクトが始まる。
- 研究者たちは、宇宙人の可能性がある大気中の未確認空中現象(UAP)も探すという。
- ハーバード大学のアヴィ・ローブ教授がこのプロジェクトを率いている。彼は恒星間天体「オウムアムア」をエイリアンの船だと考えている。
2017年に初めて観測された恒星間天体「オウムアムア(Oumuamua)」が地球を通過したとき、それは加速しているように見えた。ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブ(Avi Loeb)教授が「オウムアムアは、エイリアンの宇宙船だった」と言っているのはそのためだ。
ほとんどの研究者は、この物体が彗星や小惑星の破片といった宇宙の岩石だとしているが、ローブ教授は「オウムアムア」のような物体が地球のそばを無数に通過しており、その中には宇宙人によるものもあると考えている。そこで彼は、それらを見つけるためのプログラムを立ち上げた。
2021年7月26日、ローブ教授は「ガリレオ・プロジェクト(Galileo Project)」を発表した。イタリアの天文学者の名を冠したこのプロジェクトは、宇宙人の技術や文明の物理的な証拠を探すことを目的としている。ローブ教授は記者会見で、「これは魚釣りのようなものだ。見つけた魚は何でも捕まえてしまおう」と語った。
「地球に近づいてくる物体、大気圏内でホバリングしている物体、太陽系外からやってきた奇妙な物体なども対象に含まれている」
この175万ドル(約1億9300万円)のプロジェクトは、少なくとも4人の篤志家の支援を受けており、地球上に設置された望遠鏡のネットワークを使って、地球外生命体のものである可能性のある恒星間天体を探すことを目的としている。また、地球の軌道上にあるエイリアンものかもしれない物体や、大気中の未確認飛行物体も観測する予定だ。
地球を通過する前に恒星間天体を見つける
天文学者が「オウムアムア」の存在に気づいたとき、すでに「オウムアムア」は時速19万6000キロメートルで通過しようとしていた。地球上にあるいくつかの望遠鏡と宇宙にある1つの望遠鏡が限られた範囲で観測を行ったが、天文学者がこの奇妙な高層ビルサイズの物体を観測する時間には数週間しかなかった。
そのため、その物体が何なのか、どこから来たのかには多くの疑問が残った。ローブ教授は、2021年1月に出版した著書『Extraterrestrial: The First Sign of Intelligent Life Beyond Earth(地球外生命体:地球外の知的生命体の存在を示す初めての兆候)』の中で、「オウムアムア」を宇宙人の失われたテクノロジーの一部だと説明している。
ローブ教授は著書の出版に先立ち、Insiderに対して「この物体には注目すべき特異な点がある。我々が予想した通りではないものだ」と語り、「何かが揃わないときには、それを指摘すべきだ」と付け加えた。
「オウムアムア」の発見から2年後、天文学者たちは2つ目の星間物体を発見した。「ボリソフ彗星(2I/Borisov)」だ。ローブ教授をはじめとするガリレオ・プロジェクトの14人の研究者チームは、星間天体が地球に接近する前に発見したいと考えている。そのためには、ハワイにあるパンスターズ計画(Pan-STARRS /Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System)の望遠鏡と、チリのNSFヴェラ・C・ルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory)で建設中の口径8メートルの望遠鏡を使う予定だ。
ガリレオ・プロジェクトの共同創設者であるハーバード大学客員研究員のフランク・ローキーン(Frank Laukien)によれば、早期に発見すれば、これらの天体に探査機を送ることができるという。
ローキーンは記者会見で、「次回はもっと早く、よりよいデータを得て、天体に着陸したり、非常に接近したりすることができるはずだ」と語った。
地球外のテクノロジーの痕跡を求めて
チリのセロ・パチョン山にあるヴェラ・C・ルービン天文台の建屋。2019年9月撮影。
Wil O'Mullane/Wikimedia Commons
ローブ教授はこの新プロジェクトを、電波望遠鏡を使って地球外生命体を探索するSETI(SETI )を補完するものだと説明する。しかし、ガリレオ・プロジェクトでは、電波を探知するのではなく、異星文明の物理的な証拠を探すという。その証拠とは、地球を周回している可能性のあるエイリアンの人工衛星や、地球外の工作物の破片などだ。(ローブ教授の仮説の1つは、「オウムアムア」は大きな船の壊れたライトセイルやアンテナの破片、というものだ)
ローブ教授は、地球の大気圏内の未確認空中現象(UAP)についても調査する予定だ。
2021年6月、アメリカの情報機関が2004年以降にアメリカ軍がUAPに遭遇した144件についての報告書を発表した。そのうちの1件は膨らんだ風船だったが判明したが、残りは原因不明だと報告書は結論づけている。
アメリカ海軍が撮影したUAP(未確認空中現象)。
Pentagon
「空には我々が理解していない物体があるということを政府が認めるのは異例だ」とローブ教授は述べた。
ガリレオ・プロジェクトのウェブサイトによると、これらのUAPは、絶滅した異星文明の遺物あるいは地球外生命体が作成した機器の可能性があるという。そこで同グループは、世界中の口径1メートル以上の望遠鏡をネットワーク化することでUAPをより高解像度で撮影したいと考えている。
1台約50万ドル(約5526万円)のそのような望遠鏡は、1マイル(約1.6キロメートル)離れた先にいる人間ほどの大きさの物体の1ミリ程度の細部でも見分けがつく。ローブ教授は「『X国製』と書かれているラベルと、『太陽系外惑星Y製』と書かれているラベルを見分けることができるだろう」と語った。
天文物理学者のアヴィ・ローブ教授。2016年、ニューヨークで撮影。
Lucas Jackson/Reuters
また彼は、ガリレオチームは他の科学者にも探索に参加してもらうためにデータを公開する予定だと付け加えた。
「宇宙の街角で他の生命体を見つけることは、我々を成熟させる助けになる。我々が瓶の中で最もシャープなクッキーではなかったこと、そして我々をはるかに超えた知的生命体がそこに存在するかもしれないことに気付くだろう」とローブ教授は話している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)