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「性別欄なしの履歴書」が意味するものとは?アクセンチュアらと考える、企業がとるべきアクション

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MASHING UP

2020年に文具大手のコクヨが、トランスジェンダーなど性的マイノリティの人らに配慮した、性別欄のない履歴書を発売したことも記憶に新しいように、企業と社員、組織と個人との関わり方に変化が生まれている。確実に増えつつある、企業の個人に対する「選択肢」を増やすアクションにはどのような背景があるのだろうか。

2021年3月19日に開催したオンラインカンファレンス「MASHING UP SUMMIT 2021」では、トークセッション「社会において選択肢を増やすことの意味」に、LGBTの子ども・若者支援に関わる「にじーず」代表の遠藤まめた氏、2021、アクセンチュアのシニア・マネジャーであり、社内のLGBTQ PRIDE領域の推進を担う佐藤 守氏らが登壇。MASHING UP編集長の遠藤 祐子氏がモデレーターを務め、企業と個人の関わり方の変化、そしてそれが生むこれからの社会の姿について議論した。

誰もが平等に、楽しく働ける企業を目指して

アクセンチュアでは、誰もが楽しく働ける真のEquality(平等)を目指し、積極的に社内における「インクルージョン&ダイバーシティ」を推進。佐藤氏はLGBTQ PRIDE領域において、ディスカッションや情報共有を通して社内での理解を促進している。

「LGBTQの当事者は、困っていることをなかなか声に出しにくく、苦しんでいる場合も。そのため、アクセンチュアでは独自の取り組みとして、支援制度について匿名で問い合わせができるAIチャットボットを用意しています。LGBTとキーワードを入力すれば、それに関わる制度や情報が表示されます」(佐藤氏)

“最も使い勝手のよい”身分証明書は運転免許証

LGBTの子ども・若者支援に関わる「にじーず」代表の遠藤まめた氏

自分の組織でどのように多様性に関する施策を取り入れていけば良いのかという質問に対して、遠藤まめた氏は「まず既存のルールで困っている人がいないか振り返ることが大事。そして、多様性について学ぶ機会に参加し、先行事例を自分の組織でも取り入れ、少しずつ改善していくのはどうか」と実践的なアドバイスを送った。

これにうなずく遠藤 まめ太氏は、日本の履歴書の仕様を変えるべく活動してきた、トランスジェンダーの当事者だ。採用面接では、履歴書に法的な性別を記入すれば、外見との不一致により強制的なカミングアウトとなり、生活上の性別を記載すれば身分証との不一致を指摘される。トランスジェンダーでそうした困難を経験した人は少なくないという。

「履歴書の性別欄があるのは日本では当たり前ですが、例えば、アメリカでは性別や年齢の記載は求められない。この日本の慣習は、トランスジェンダーにとって大きな不利益。経済産業省に提言し、ようやく2020年に、性別欄のあるJIS規格の履歴書が撤回されました。当事者にとっては長年の悲願がかなった瞬間です」(遠藤氏)

一方、運転免許証は昔から性別の記載がないため、トランスジェンダー当事者の間では利用しやすい身分証明書として重宝されてきたという。健康保険証はというと「病院の受付で呼ばれる名前と、見た目の性別が違う」という齟齬をなくすため、通称での記載も許されるようになっている。当事者でなければ、こうした現状に気づくことさえ少ないのではないだろうか。

採用シーンで性別以上に大事なのは、個人の経験やビジョン

HRテックを手がける佐野氏は、さまざまな企業幹部と話をする中で「性別や年齢の情報を整理したいという企業のニーズはどんどん下がっています」と指摘する。

終身雇用が企業の経営戦略とマッチしなくなってきている今、採用のシーンでは年齢や性別より、これまでどんな経験をしてきたか、どのように一緒に働けるかということの方が重視されています。履歴書で年齢の記載をなくすという選択肢は、採用される側からの要望と、企業側の要望がマッチした結果といえます」(佐野氏)

これには、アクセンチュアで採用にも関わる佐藤氏も「採用する側にとっても、履歴書に年齢や性別が書かれていると、アンコンシャスバイアスになりやすいですよね」と同意。

気がついた人が意見し、自由に議論ができる社会へ

さらに、「若手には課題感を認識している人が多いですね」と、佐藤氏。

「アクセンチュアの多様性に関する活動に惹かれ、入社する人も増えてきました。重要なのは多様な人がいるだけでなく、誰もが自由に意見できること。議論が活発になり、下からも上からも意見が出るようになると、会社として大きく動くことを実感しています」(佐藤氏)

自由な発言が組織や社会を変えていく。遠藤氏も同様に、「学校制服にも選択肢が増えてきました。同じ悩みを持つトランスジェンダーの友人の話を聞き、おかしいと感じた人が先生に提言し、変わることが多い。このように気づいた人が意見できる環境は、これからの日本社会に必要なことですよね」と、共感を示す。

コミュニティの選択肢は多いほうがいい

佐野氏は、「ひとつに依存することで、心が摩耗してしまう。複業などもそうですし、自分が自分らしくいられるために、コミュニティにいくつかの選択肢があることは重要ではないでしょうか」と語った。

この意見に、「私も社内で芸術部に所属しています。仕事以外の趣味を共有できる仲間がいることで、心が安定するという人も多いですよ。そうやって働きやすくなることが、企業にとってプラスになることは間違いないでしょう」と、佐藤氏。「アートのように、誰もが自分の個性を惜しみなく出せるようになれば企業も社会も豊かになりますよね」と言及した。

多様性を求める人々のニーズと、多様性がもたらす可能性を見出し始めた企業という双方からの動きにより、具体的な議論が生まれ、さまざまなところで選択肢が増えつつある社会。日本のダイバーシティ&インクルージョンは、明らかに数年前よりアップデートされている。この先の社会に、期待せずにはいられない内容だった。

MASHING UP SUMMIT 2021

社会において選択肢を増やすことの意味
遠藤 まめた(にじーず 代表)、佐野 一機(株式会社Looper , 株式会社タレンティオ 代表取締役)、佐藤 守(アクセンチュア株式会社 シニア・マネジャー)、遠藤 祐子(MASHING UP編集長)

MASHING UPより転載(2021年7月7日


(文・中島理恵)

中島理恵:ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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