この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「証券取引プラットフォームの進化(Evolution of Digital Stock Trading)」のプレビュー版。
証券業界では、株式売買手数料の無料化や、少ない資金で高価な人気銘柄に手が届く仕組みなど、これまでの常識を覆すサービスを取り入れたスタートアップ企業による個人投資家向けの取引プラットフォームが台頭。業界全体の変化を促している。
※この記事は2020年10月8日に公開した記事を一部編集して再掲載しています
投資アプリの登場で加速する業界再編
売買手数料ゼロの投資アプリ人気を受け、ここ数年で証券取引のオンライン化が加速。決済サービスやネット銀行など異業種からの参入も進み、既存のネット証券や大手金融機関はサービスの見直しを迫られた。
Business Insider Intelligence
数年前に登場したロビンフッド(Robinhood)、イートロ(eToro)、フリートレード(Freetrade)などの、スタートアップによる証券取引プラットフォームは、「売買手数料ゼロ」「単元未満株が売買可能」「ゲームのようなインターフェース」などの特徴を持つ。これらのサービスは株式市場を「民主化」し、これまで証券取引とは縁がなかった顧客層を取り込むことで収益を上げている。
これを受けて、TDアメリトレード(TD Ameritrade)やイー・トレード(E*Trade)のような古参のネット証券や、フィデリティ、JPモルガン・チェースのような大手金融機関も手数料をカットし、デジタル化を押し進めることで対抗している。
その結果、いまや新旧両勢力の全プレイヤーが値下げを強いられる「底辺への競争」ともいえる状況が生まれている。競争が激化するなか業界再編が進んでおり、各社は価格面以外で顧客を惹きつけられる、独自の価値の提供を求められている。
投資ブームで生まれるプラットフォームの市場機会
主な証券取引プラットフォームのユーザー数。
Business Insider Intelligence
インサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「証券取引プラットフォームの進化(Evolution of Digital Stock Trading)」では、スタートアップ企業によってもたらされた証券業界の変化について解説する。証券市場の主要プレイヤーを概観しながら、ロビンフッドなどのスタートアップがどのような位置づけにあるのかを見る。
専門家のアドバイスに頼ることなく、自らの判断で投資を行う個人投資家が増加している昨今の状況に、証券取引プラットフォーム運営各社は市場機会を見出している。
イギリスの消費者の投資行動を年代別に見たグラフ。投資に関心はあるが未経験という若者が多く、今後はこの層が市場に参入してくるとみられる
Business Insider Intelligence
本レポートでは業界の現況を分析しながら、新興プラットフォームが既存のネット証券とどのように差別化を図っているのかを論じる。また、市場拡大を見越して異業種から新たにこの分野に参入している企業についても触れる。
さらに、既存の証券取引プラットフォームが、新興サービスに対抗するために取り組んでいる改革についても論じる。新旧両勢力の各社が繰り広げる覇権争いについて解説し、証券業界の今後に影響を与えそうなトレンドを紹介する。
本レポートで言及される企業:
Amazon, Apple, Atom, Ayondo Markets, Bux, Charles Schwab, Citadel Securities, Coinbase, Commonstock, ErisX, eToro, E*Trade, Fidelity, Freetrade, Goldman Sachs, Interactive Brokers, Invesdor, JPMorgan Chase, JPMorgan Chase Securities, Lunar, MarketSnacks, Merrill Edge, Merrill Lynch, Morgan Stanley, Pepper, Public, Revolut, Robinhood, Scalable Capital, SoFi, Square, Stake, Stockpile, TD Ameritrade, Trading 212, Trio, TrueLayer, UBS, YouInvest, Vanguard, Virtu Financial, Wealthfront, and Xinja
本レポートのキーポイント:
- 2013年から2017年までに、証券取引プラットフォームの運用資産残高は全世界で2500億ポンド(約33.6兆円)から5000億ポンドに増加。この期間の新規口座開設数は220万口座となっている(ビジネスメディアRanconteurが引用するイギリスの金融行動監視機構(FCA )のデータによる)。
- 金融業界動向の調査会社Aite Groupによると、インターネット接続環境のあるアメリカの成人の25%が、投資アドバイザーに頼ることなく自身の判断で株式などの売買を行っている。金融サービステクノロジーを専門とする調査会社Celentによると、こうした「自立派」の個人投資家の数は専門家の助言のもと取引を行う投資家の数よりも早いペースで増えている。増加率は前者が4.9%、後者が1.4%となっている。
- 若年層の個人投資家が増加している。Finderによる年代別の調査では、「株式投資に関心がある」としたのはZ世代が最も多く57%となっている。しかし、現在投資をしていると回答したのはこのうちの10%に過ぎない。今後この世代による取引の増加が見込まれており、証券取引プラットフォームの市場機会が生まれている。
- コロナ下において、貯蓄商品の金利が低下し、株式市場は大きく変動している。価格面以外で魅力的なサービスを提供できる証券取引プラットフォームにとっては、新たなユーザーを獲得する好機といえる。
本レポートの完全版では:
- 新興の証券取引プラットフォームが、低価格とゲーム感覚のインターフェイスを武器に、どのように証券業界に変革をもたらしたのかを解説する。
- 証券業界の主要プレイヤーを概観しながら、売買手数料無料化が可能となる仕組みを明らかにする。
- アドバイザーを必要としない個人投資家が増えている背景について説明。証券取引プラットフォーム提供各社がこの状況をどのように活かせるのかを示す。
- 異業種からこの分野に新たに参入している企業を列記する。
- 先端技術に長けたスタートアップにとって、古参のプラットフォームがなぜ今も手強い競合となっているのか、その理由を分析する。
- 業界の常識を覆したスタートアップ企業に対抗するため、既存の証券取引プラットフォームが取る施策例を記す。
- 今後の証券業界を形作ると思われる主要トレンドについて解説する。
本レポートの完全版を入手するには:
リサーチストアからレポート完全版をご購入・ダウンロードする。→購入・ダウンロードはこちらから
※購入ページに進みオンライン決済完了後、領収証が発行されます
(翻訳・野澤朋代)