コロナ禍で急速に成長しているネットショップ事業に「メルカリ」が参入する。
画像:ソウゾウ提供(左、右上)Business Insider Japanで作成(右下)
コロナ禍で急速に成長しているネットショップ事業に「メルカリ」が参入する。
メルカリの100%子会社ソウゾウは7月28日、ネットショップ作成サービス「メルカリShops」を開始すると発表した。
メルカリのアプリ内に新たに設けられた「ショップ」タブから、ハンドメイド作品や農家直送の野菜などを直接出品できる。
2021年中には、アプリ外の独立したウェブサイトとしてネットショップを開設できる機能も提供予定だという。
BASE、STORES、Shopifyとの差別化は
ネットショップ作成サービスは、すでにBASE、STORES(ストアーズ)のほか、日本に上陸した海外勢Shopify(ショッピファイ)など多くの競合がひしめく激戦市場だ。
BASEは2月10日に発表した2020年通期決算で、2020年の1年間で売り上げが2倍に拡大したと発表。6月にはショップ開設数が150万を突破、そのうち50万ショップが直近1年のものだとも明かしている。
もう一つの競合大手STORESも、2020年に米投資ファンドのベインキャピタルからの70億円を含む大型の資金を調達をしている。
STORESを運営するheyの佐藤裕介社長はBASEとの違いについて、以前にBusiness Insider Japanの取材に対し「どちらかというとBASEはデジタルオリジンな個人向け、STORESはすでに固定店舗を持っている人(中小事業者)向け」と語っていた。
さらにカナダ発のEC大手Shopifyも、2020年通期の売上高が前年比86%増だったと発表するなど、躍進を続ける。
こうした既存事業者が市場で争う中にソウゾウが新たに参入した形だ。
なおBASEは2016年、メルカリから4.5億円の資金を調達している。ソウゾウ社長の石川佑樹氏は発表会の質疑のなかで、メルカリが保有するBASE株は2020年7月にすでに売却していると説明している。
メルカリ勝ち筋は「かんたんに売れる」体験
1900万人のユーザー基盤と、独自のAI技術がメルカリの強みだ。
画像:ソウゾウ提供
では、実際にどう差別化するのか。
石川氏は、メルカリがすでに抱える1900万人のユーザーに提供してきた「かんたんにモノが売れる」という体験が最大の強みだと語る。
「現在でもメルカリアプリ内の『おすすめ』タブなどでAIのパーソナライゼーション技術を使って、買い手のお客さまに適した商品を表示している。メルカリShopsでも求められることは同じ」
なお、手数料を見てみると、メルカリShopsは販売額の10%だとしている。
BASEの手数料は販売額の6.6%+40円、STORESは決済手数料が販売額の5%(フリープラン)もしくは月額2178円+決済手数料3.6%(スタンダードプラン)となっており、メルカリShopsはやや割高に見える。
「旧ソウゾウとは違う」意気込み
次々とサービスをリリースしたが、2019年に解散した「旧ソウゾウ」。
画像:「ソウゾウ 新規事業発表会」動画をキャプチャ
ソウゾウは2021年1月、メルカリの新規事業を担う完全子会社として設立された。
2015年から2019年にまで存在した「旧ソウゾウ」は、地域コミュニティアプリ、即時買取サービス、シェアサイクルなどのサービスを次々にリリースしたが、いずれも収益化には至らず、撤退した。
旧ソウゾウは、ほぼ全てのサービスを短期でクローズしていた印象だが、今回の「メルカリShops」はどうなのか。Business Insider Japanの質問に対して、石川氏はこう答えた。
「旧ソウゾウには私も在籍しており、過去の取り組みにも携わってきた。今回の『メルカリShops』の立ち上げは、メルカリ第4の柱を作っていくという意気込み。長期的に投資をしていくつもりで考えている」(石川氏)
(文・西山里緒)