テトラ・アビエーションが日本で開発した新機種Mk-5(読み:マークファイブ)。
提供:テトラ・アビエーション
「空飛ぶクルマ」(eVOLT)を開発する東大発ベンチャー「テトラ・アビエーション」は7月26日(現地時間)、新機種「Mk-5」をアメリカで一般公開し、予約販売を開始したと発表した。Mk-5は同社初となる販売モデル。8月にはカリフォルニア州で認証取得に向け、飛行試験を始める。
テトラ・アビエーションは、2020年2月にアメリカで開かれた国際航空機開発コンペ「GoFly」で唯一の賞金獲得チームとしてディスラプター賞を獲得。その後、今回発表したMk-5の開発を進めてきた。
Mk-5の機体幅は8.62メートル、奥行き6.15メートル、高さ2.51メートル。空飛ぶ「車」とはいえ、普通の車とくらべるとさすがに大きい。
機体の重さは488キログラム。離陸可能な最大重量(最大離陸重量)は567キログラム。単純に計算すると、合計約80キロまでの人・物を搭載できることになる。
動力は完全「電動」で、翼に固定された32個のローターで垂直浮上し、尾翼にある1個のローターで水平方向へ飛行する。
最高時速は現行機(SN2)で時速108キロメートル。次機となるSN3では時速144キロメートルまで加速できる。バッテリー容量は現行機(SN2)で13.5 kWh。飛行可能距離は76キロメートルだという。
提供:テトラ・アビエーション
テトラ・アビエーション広報によると、飛行高度は「短期的には200m程度」としており、今回の機体の主な用途はレクリエーション用としている。
ただし、自宅から近場の空港までの移動なども、十二分に対応可能だとしている。
今後、個人顧客向けに40機ほどの予約を獲得し、1年後の納品を実現する計画だ。
テトラ・アビエーションでは、アメリカではまずプライベートパイロットライセンスを持つ富裕層向けに販売することで顧客コミュニティを形成。「ユーザーとともに次世代のeVTOLを開発し、量産へつなげていきます」としている。
なお、価格は日本円に換算すると約4000万円。カスタマイズによって、金額は加算される可能性があるという。
国内で進むルールづくり。日本で空飛ぶ車に乗れるのは2023年?
空の移動革命に向けた官民協議会、ユースケース検討会 2020年度取りまとめ資料より引用。
出典:経済産業省
国内外で研究開発が進められている空飛ぶ車には、都市部での交通渋滞の緩和や離島・山間部での移動利便性の向上、災害時の救急搬送や物資輸送の迅速化など期待が大きい。
一方で、既存の道路交通法などのルールでは十分に対応できないとして、制度設計に関する議論が続いている。
日本では、経産省や国交省を中心に「空の移動革命に向けた官民協議会」を開き、機体の安全性の確保や運転技能のライセンス(免許)の取り扱いに関するルール策定が進められている。
なお、経産省の資料によれば、2023年頃には2人乗り程度の空飛ぶ車の利用が部分的に始まる可能性があるとしている。
(文・三ツ村崇志)