テスラ最高経営責任者(CEO)イーロン・マスクの元右腕で、同社の最高技術責任者(CTO)を務めたJ・B・ストローベル。
Redwood Materials
米電気自動車大手テスラ(Tesla)共同創業者のひとりで、同社の最高技術責任者(CTO)を務めたJ・B・ストローベル率いるスタートアップのレッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)が、新たな資金調達を発表した。
車載電池のリサイクル技術開発を手がける同社は、米資産運用大手ティー・ロウ・プライスがリードインベスターを務めるシリーズCラウンドで7億ドル(約770億円)を集めた。
今回の資金調達ラウンドに参加したのは、資産管理大手ゴールドマン・サックス・アセットマネジメント、資産運用大手ベイリー・ギフォード、アマゾン創設のベンチャーキャピタル「クライメイト・プレッジ・ファンド」、フィデリティ証券など。
米ネバダ州に本拠を置くレッドウッド・マテリアルズは、電気自動車向け車載電池のサプライチェーンを根底からひっくり返そうとしている。
ストローベルCEOが「リマニュファクチャリング(再製造)」と呼ぶプロセスがコア技術で、廃棄後の電気自動車(EV)用車載電池からリチウムやコバルト、ニッケルなどの貴重な原料を回収し、処理後に再び原料として電池製造に投入する。
「リマニュファクチャリング経済を完成させるには、あらゆる電池と原料を回収して再び使えるようにし、サプライチェーンに戻してやる必要がある。それはこれから非常に巨大な産業に成長していくと考えています」(ストローベルCEO)
実際、調査会社インダストリー・リサーチの最新レポートでは、リチウムイオン電池のリサイクル市場は2027年までに世界全体で176億4000万ドル(約1兆9400億円)規模にふくれ上がると予測されている。
イーロン・マスクの右腕として活躍したストローベルは、在職中の2017年にレッドウッド・マテリアルズを設立。2019年には同社の事業展開に専念するためテスラを離れた。
EVが普及すればするほど、より多くの耐用期間を過ぎた車載電池が廃棄場送りになり、新品の電池を生産するためにまた(リチウムなど)原料の採掘が必要になる、そういう未来がストローベルには見えていた。
そして、その問題を解決するためにこそ、彼はレッドウッド・マテリアルズを立ち上げた。
「廃棄後の電池から回収・処理された原料が9割を占めるようになると確信しています」(ストローベル)
自動車産業のガソリン離れ(とEVの普及拡大)を背景に、より多くの人々がストローベルの提案を受け入れるようになるだろう。
リマニュファクチャリングは、高価で環境に悪影響をおよぼし、しかも埋蔵量に限りのある天然資源を採掘する必要性を減らし、しかも、EV普及拡大の大きな障壁となっている車載電池コストの引き下げにもつながる可能性がある。
レッドウッド・マテリアルズの設立から4年、その動きは常に関係者の注目を集めてきた。
ネバダ州で電池工場をテスラと共同運営するパナソニック、テネシー州に工場を持ち日産自動車も出資するエンビジョン(Envision) AESC、さらにはECの巨人アマゾンともすでに提携関係にある。
今回の資金調達で得た7億ドルは設備投資に回し、ネバダ州カーソンシティの研究開発施設を3倍に拡張するとともに、新たな回収原料処理設備を建設するという。
(翻訳・編集:川村力)