世界中で人気の電気自動車(EV)テスラ「モデル3」もこれから使えるようになるという、イギリスのサブスクサービスが注目を集めている。
REUTERS/Aly Song
ネットフリックス(Netflix)に登録して月額料金で視聴するのと同じように、電気自動車(EV)のサブスクリプションサービスを展開するスタートアップが、新たな資金調達に成功した。
2017年設立、イギリス中部ウォーリックに本拠を置くオントゥ(Onto)は、シリーズBラウンドで1億7500万ドル(約190億円)を調達。
スウェーデンのベンチャーキャピタル、アルヴェーン・アンド・ディドリクソン(Alfvén & Didrikson)がリードインベスターを務めた。
オントゥのサービスを利用すると、1カ月単位の契約で月額固定料金を支払ってEVを利用できる。料金には保険、各地に設置されたステーションでの充電費用、サービス、故障時のカバー(保険)、道路税などが含まれる。
なお、サブスクリプション方式でクルマを使えるサービスを提供する企業はオントゥだけではない。
2021年下半期に特定買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場する、評価額70億ドル(約7700億円)の中古車販売プラットフォーム・カズー(Cazoo)や、スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーズ(Volvo Cars)も、それぞれ独自のサブスクサービスを展開している。
クルマのサブスクサービスはこれから大きな成長が見込まれる。EVは車載電池をまるごと交換すればすぐにまた走れるため、サブスクリプション用の車両に向いているとの見方もある。
オントゥのサービスは現時点ではイギリス国内でしか使えないものの、同社は海外市場への進出も視野に入れている。
今回のシリーズBラウンドは株式および転換社債の発行によって行われ、累計調達額は2億4500万ドル(約270億円)に達した。
オントゥの最高経営責任者(CEO)ロブ・ジョリーは、ドライバーの多くがEVへの乗り換えを希望している一方で、実際に移行するには「高価なので躊躇(ちゅうちょ)してしまう」現実があると指摘する。
「私たちが目指すのは、手軽でフレキシブルに、なおかつ手ごろな料金でクルマを使えるサービス。そこには大きな需要があると考えています。
今回の資金調達により、イギリスでのオペレーションをさらに拡大し、より多くのお客さまが長期契約や多額の初期費用にしばられることなく、EVを利用できる環境づくりを進めていきたいと思います」
オントゥは現在、月1000マイル(約1600キロ)以上走行することを条件に、サブスク用のEVを宅配するキャンペーンを行っている。
例えば、使用車種がフォルクスワーゲンのEVコンパクトハッチバック「e-up!(イーアップ)」の場合、月額料金は339ポンド(約5万1500円)でデポジット(前払い金)は一切かからない。
オントゥ(Onto)のウェブサイトより。フォルクスワーゲンのEV「e-up!」利用時の料金体系。
Screenshot of Onto
同社の説明によれば、同等のリース契約だと1600ポンド(約24万3000円)以上のデポジットを要求されることもあり、月額料金で比べても50ポンド(約7600円)程度安く済む。
また、オントゥのサービスでは多目的スポーツ車(SUV)やセダン型のEVも選べる。テスラはまだラインナップに入っていないが、同社によると「モデル3」がまもなく利用できるようになるという。
「モデル3」の月額料金は1099ポンド(約16万7000円)、航続距離の長い「ロングレンジ」は1299ポンド(約19万7000円)になる見込み。
以下に、オントゥのサブスクサービス概要を示すプレゼン資料の一部を参考まで掲載する。
サービス申し込みはスマホから手軽に。
Onto
サブスク利用できるEV車種も豊富。
Onto
オントゥの社員は現在(資料作成時点)70人超。テスラ出身者も経営幹部に。
Onto
(翻訳・編集:川村力)