- この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「アナリスト分析:広告における多様性とレプリゼンテーションの課題に対する、ラテンアメリカのブランドの取り組み(Analyst Take: How Brands in Latin America Are Addressing Diversity and Representation in Advertising)」のプレビュー版。
ラテンアメリカは多くのパラドックスを抱えている。さまざまな民族や文化的背景を持つ人々が暮らし、世界で最も多様性に富んだ地域のひとつであるにもかかわらず、広告表現にそれが十分に反映されていない。多くの人々は広告にあまり登場しないか、登場したとしてもステレオタイプな描かれ方をしている。
ラテンアメリカの人口を構成するのは、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東からの移民に加え、アメリカ先住民や、奴隷としてアフリカから連れてこられた人々の子孫だ。経済協力を促す組織、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC:Economic Commission for Latin America and the Caribbean)によると、富と所得の面で世界で最も不平等な地域のひとつだという。
ラテンアメリカは約200年前にスペインとポルトガルによる植民地支配から脱却した。だが、この地域の広告業界はいまだに著しく多様性を欠いている。
インサイダー・インテリジェンスでラテンアメリカ市場の調査を担当する、eMarketerディレクターのマッテオ・セルベルス(Matteo Ceurvels)は調査レポート「アナリスト分析:広告における多様性とレプリゼンテーションの課題に対する、ラテンアメリカのブランドの取り組み」を執筆した。セルベルスは次のように述べている。
「多くのブランドは広告を制作する際に、さまざまな人種や民族集団から出演者を起用し、伝統的な性別の役割の描写から脱却する努力を重ねてきました。しかし依然として、大部分の消費者が広告の中に自分の姿が反映されていないと感じています」
ラテンアメリカにおける広告の現況
「動画広告の中で、自分の姿が反映されていると思うか」。ラテンアメリカのインターネットユーザーを対象とした調査結果。
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調査会社EMIリサーチ・ソリューションズ(EMI Research Solutions)が、動画配信ソリューションを提供するSaaS企業ペンセラ(Penthera)のために2021年3月にインターネット上で実施した調査では、ラテンアメリカの成人の10人に約7人(70.2%)が、「デジタル動画広告の大半で、自分の姿が反映されていないと感じる」と回答している。
ラテンアメリカの消費者がブランドの目的やメッセージに敏感になるにつれ、企業がターゲットとする地域コミュニティを正確に描写することの重要性が増す。そしてマーケティングキャンペーンにおいて多様性に十分に配慮することが求められるようになる。調査会社ユーガブ(YouGov)がゲッティイメージズ(Getty Images)のために2019年の7月に行った調査によると、ラテンアメリカの18歳から74歳までのインターネットユーザーの4分の3以上(78%)がこの考えを支持しているという。
ダイバーシティを推進するラテンアメリカ企業
多様性に配慮したマーケティングを行っているラテンアメリカ企業の一例として、Eコマース大手のメルカドリブレ(Mercado Libre)がある。同社は、2020年7月に「Libre de ser quien soy(私が私自身でいられる自由)」と題した動画広告を発表。多様な背景を持つ社員がそれぞれの個性を活せるようにして、会社のイノベーションを推進することを表現した。
メルカドリブレは公式声明で次のように述べている。
「私たちは機会の均等を掲げ続けています。なぜなら、多様性はイノベーションの基盤であり、違いがあることでより豊かに成長していけると信じているからです」
「社会課題に人々の目を向けるため、広告はどの程度影響力を持っているか?」ブラジルのインターネットユーザーを対象とした調査結果。「ダイバーシティ推進」に関しては、回答者の46%が「とても大きな影響力がある」とした。
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ブラジルのビーチサンダルメーカー、ハワイアナス(Havaianas)も、広告コンテンツにおけるダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいる。2020年夏のキャンペーンでは、「#DiasMaisColoridos(#MoreColorfulDays)」と題して、ブラジルの活気に満ちた多様な文化を紹介しながら、色を使ってプロダクトのポジティブなエネルギーを表現した。1分間のビデオ広告の中では、サンバを踊ったり、ビーチで友達と遊んだり、海で静かな午後を過ごしたりと、人々の幸せな時間とともにサンダルがある様子が描かれている。
クリエイティブ・ディレクターのエンリケ・デル・ラマ(Henrique Del Lama)氏は、ブラジルのニュースサイト、プロップマーク(Propmark)のインタビューのなかで次のように語っている。
「このキャンペーン動画では、色が喚起するポジティブな感情と前向きなエネルギーを追求しました。例えばオレンジは喜び、赤は情熱、黒は力強さ、黄色は楽観主義、ライラックは知恵、白は平和を表しています」
また、このキャンペーンは「黒人女性によって撮影された、黒人女性の写真」を提供するイメージバンク、ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック(YGB :Young, Gifted, and Black)と提携している。YGBが提供した6人の女性の写真は、キャンペーンのOOH(屋外広告)やソーシャルメディアの広告で使用されている。
前述したプロップマークのインタビューで、YGBの創設者であるジョアナ・メンデス(Joana Mendes)は語っている。
「私たちにとってハワイアナスの仕事は非常に重要でした。カメラの前と後ろの両方で、ステレオタイプではない黒人女性の存在をアピールすることができましたから」
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[原文:Advertising for Latin American brands are pursuing more diversity in campaigns]
(翻訳・野澤朋代)