コロナ禍で迎える2度目の夏休み。「1日1食」「おかずをつけられず醤油かけごはんでしのいでいる」など、子育て中の困窮家庭の約9割が食事に関して不安を抱えていることが、NPO法人キッズドアの調査で分かった。
1年目よりさらに減収
コロナ禍の夏休み。NPOが行った調査では、子育て困窮家庭がさらに逼迫している現状が明らかになった(写真はイメージです)。
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調査を行った困窮家庭の教育・居場所支援を行っているNPO法人キッズドアは7月28日、厚生労働省で記者会見を行った。調査は同団体が支援する1469世帯を対象に、2021年6月から7月にかけて実施したという。
調査によると、2020年の年収が200万円未満の世帯は65%だったが、2021年はさらに減収する見込みと回答した世帯は70%にのぼる。また2021年6月時点での貯蓄額が0〜10万円未満の世帯が51%を占める。
緊急事態宣言の対象や期間が拡大するなど、長引くコロナの影響の中、昨年より困窮する子育て世帯の実態が浮き彫りになった。
学校や光熱費の支払いできず
会見で調査結果を説明する、キッズドア代表の渡辺由美子さん。
さらに、コロナ禍(2020年1月以降)で「学校関係の支払いが遅れたことがある」家庭は38%、「家賃・電気・ガス代金等が払えなかったことがある」家庭は32%。
「図書館などの公共施設で勉強が出来ないため、子どもが自宅で1日クーラーなしでは過ごせません。冷房代もかかります」(自由回答より)
という保護者の声も。猛暑の夏休み、コロナで行き場をなくした子どもたちの熱中症が懸念される。
キッズドア代表の渡辺由美子さんが特に心配なのは、夏休み中の子どもたちの食事だという。調査では「夏休み中の食事に関して不安がある」と約9割(87%)の家庭が回答しており、そのうち約8割(76%)が「子どもに栄養バランスの良い食事を与えられない」と感じていた。
夏休み中の食事に9割が不安
コロナ以前に比べて、食事は質量ともに悪化している。
出典:NPO法人キッズドア
実際、コロナ以前と比較して
「食事の質(栄養バランス)が悪くなった」56%
「食事の量(ボリューム)が減った」47%
「主食におかずをつけることが難しくなった」31%
「食事の回数が減った」23%
という回答結果が出ており、食事の質量ともに悪化していることが見てとれる。
「夏休みは給食がないため、困窮家庭の子どもは体重を減らすことが多く、コロナ以前から問題になっていました。そこにコロナによる経済状況の悪化が重なり、『ふりかけごはんや醤油かけごはんしか食べさせられない』という声も届いています。
子どもの健康に悪影響なのはもちろん、食費を削っているくらいなので教育も当然後回しになり、学力も落ちていく。貧困、格差の影響が長引く悪循環になります」(渡辺さん)
必要なのは政府の現金給付
約9割の家庭がさらなる現金給付を求めている(写真はイメージです)。
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影響は子どもだけではない。
「子どもの食事をよくするため、親が十分な食事をとれない」ことを不安に思う保護者も約4割(38%)おり、「子どもに食べさせるために親は1日1食を続けていたので、それに慣れてしまった」という人もいるそうだ。
中には「役場に相談しても、親と子ども3人で月の食費が1万5000円だと伝えたところ、『削れませんか?』と言われた」というケースも。
こうした現状をふまえ渡辺さんらキッズドアは、政府に困窮家庭に対する一刻も早い現金給付を求めている。今回の調査でも「いま最も求める支援」として約9割(88%)が「特別定額給付金などの現金給付」と回答している。
これまで政府はコロナ禍の経済支援として、前出の特別定額給付金のほか、ひとり親で児童扶養手当を受給している世帯などに対して子ども1人なら5万円、第2子以降は1人あたり3万円の「ひとり親世帯臨時特別給付金」、住民税非課税など低所得のふたり親世帯に対して子ども1人あたり5万円を配る「子育て世帯生活支援特別給付金」などの支援策をとってきた。
しかしそれでは、全く不足していることは今回の調査結果からも明らかだろう。
食料支援に向けたクラファンも
キッズドアが開始した、食料支援に向けたクラウドファンディング。
出典:NPO法人キッズドア
渡辺さんは、これまでに上記のような支援策の対象になった家庭に追加で少なくとも5万円、できれば10万円の現金給付が必要だと訴える。
「昨年は1人10万円の特別定額給付金があったので、なんとか夏休みを過ごせたという人が多かった。今年はそれがないので危険な状況です」(渡辺さん)
キッズドアでは2021年のゴールデンウィークに2000家庭を対象に食料支援を行った。夏も同様の緊急食料支援を実施するため、クラウドファンディングを実施中だ。
「困窮家庭ではNPOなどの食料支援で日々をつなぐことが普通になっています。これを放置しておくのは本当によくない。たとえ給付が夏休み中に間に合わなくても、決定してくれるだけでも保護者は心持ちがずいぶん違います。政府には迅速な決断をお願いしたいです」(渡辺さん)
Business Insider Japanではセクハラや性暴力、長期化するコロナの影響による働き方や子育ての変化について継続取材しています。困っていること、悩みや不安があればどうか教えて下さい。ご連絡はikuko.takeshita@mediagene.co.jp まで。
(文・竹下郁子)