どの企業からどの企業に転職しているのか?そうした転職情報はあまり表には出てこない。
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Amazon Japanに転職する人は、どんな企業出身の人がいるのか?Amazon Japanにいた人は、次にどこへ転職しているのか——。
これまでに表に出ることがなかった「転職先」についての情報。転職経験者がそれらの情報を投稿する転職情報サイト「ワンキャリアプラス」が、2021年6月からスタートしている。
実際にサイトを見ると「#転職つぎはどこ」というコーナーでは、有名企業の社員の転職先企業を紹介。「ベンチャー企業への転職が多い」「専門性を磨く企業が多い」「大手事業会社が多い」など、転職先の傾向をタイプ別にまとめている。
転職エージェントしか知り得なかった「転職の真実」の公開に踏み切った背景は何か?まずは業種の異なる4社の有名企業(アクセンチュア、楽天、サイバーエージェント、Amazon Japan)の転職先をみてみよう。
1. アクセンチュアからどこへ転職?
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
タイプ1:同じコンサルファーム … デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、野村総合研究所(NRI)
タイプ2:分析力を生かした企業 … グーグル(Google Japan)、LINE、セールスフォース・ドットコム、ブレインパッド
タイプ3:裁量のあるベンチャー気質の企業 … リクルート、freee、atama plus、アイキューブ
2. 楽天から、どこへ転職?
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
タイプ1:メガプラットフォーマー …ヤフー、 グーグル(Google Japan)
タイプ2:EC系ベンチャー … メルカリ、hey、BASE
タイプ3:IT系メガベンチャー … リクルート、ディー・エヌ・エー(DeNA)、プレイド
3. サイバーエージェントから、どこへ転職?
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
タイプ1:外資系企業 … セールスフォース・ドットコム、Twitter Japan、Facebook Japan
タイプ2:メディア・広告系スタートアップ … マクアケ、ユーザベース、ノイン
タイプ3:広告主・メディア媒体…バイトダンス(ByteDance)、LINE、メルカリ
4. Amazon Japanから、どこへ転職?
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
タイプ1:外資系ToCサービス … Spotify Japan、Netflix、Uber Japan
タイプ2:EC×物流 … メルカリ、モノタロウ、ミスミ
タイプ3:メーカー … アンカー・ジャパン(Anker Japan)、アイリスオーヤマ、P&Gジャパン
他にどんな転職先を検討していた?
アクセンチュアからグーグルへの転職が他に検討していた企業も分かる。会員登録をするとぼかしが消えた状態で全文を読める。
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
ワンキャリアプラスでは、元々の所属企業と転職先の企業名に加えて、
・社会人何年目の転職か?
・転職を考えて理由
・他に転職を検討した企業はどこか?
などについても、投稿者のコメントとともに紹介している。ここでも、いくつかの転職先候補の事例を紹介しよう。
1. アクセンチュア ▶ Google Japan(社会人7~9年目)
・他の検討企業:Facebook Japan、楽天、デロイト トーマツ コンサルティング
・コメント:「事業会社でもいろいろ知識がもらえそうか、転職した職種以外の異動ができそうかなどを考慮した」
2. デロイトトーマツ コンサルティング ▶ Amazon Japanに転職(社会人4~6年目)
ワンキャリアプラスより編集キャプチャ
・他の検討企業:楽天、アビームコンサルティングなど
・コメント:「当時の年齢と今後のキャリアを踏まえて、専門を特定分野に限定せず、 10数年先でも戦える見込みのある業界知識やスキルを身に付けられる点を重視した」
3. サイバーエージェント▶Google Japanに転職(社会人4~6年目)
・他の検討企業:Netflix
・コメント:「年収とカルチャーと労働時間を重視。年収については、外資系であれば一番上がりやすいと考えた」
転職の悩みは「選択肢が見えない」こと
ワンキャリアEvangelistの寺口浩大氏。「転職の悩みの多くが選択肢が見えないために生じてしまう」と話す。
撮影:横山耕太郎
2021年6月にスタートしたワンキャリアプラスでは、現在1000件以上の転職体験談が集まっている 。
これまで新卒の就活生向けのサービスを展開してきたワンキャリアだが、なぜ転職情報サービスを始めたのか。
「転職で悩む理由は、転職先やキャリアの選択肢が見えないところにある。転職が当たり前になったこの時代にこそ、キャリアの選択肢を知ることが求められている」
ワンキャリアEvangelistの寺口浩大氏は、こう話す。
転職活動での情報収集は、求人サイトから情報を探したり、転職エージェントに相談したりするのが一般的だ。
企業と転職エージェントに情報が集中しているため、転職希望者にとっては、志望企業が過去にどんな企業からどんな人材を採用しているかを知ることは難しい。
「どの企業からどの企業に転職したという情報は、社員の人材流出につながるリスクがあるため多くの企業は積極的に開示しません。また人材エージェントにとっては、どの企業がどの企業から人材を獲得しているかについては、人材紹介に役立つ情報であり外には出てきません。転職の情報はこうしてブラックボックスになってしまっている」(寺口氏)
ミレニアル世代だからこそ成立
言うまでもなく、このサービスが充実するかどうかは、どれだけ転職者からの投稿を増やせるかにかかっている。
「最初は投稿が集まるか未知数だったが、すでに1000件の投稿が集まった。
投稿者の多くはミレニアル世代。彼らにとっては、情報は共有して財産にするという価値観になじみがある。シェアすることに抵抗のない時代になったからこそ、成立するサービスだと感じている。情報を投稿してくれた人からは『徳を積めるサービスですね』『体験を共有することで誰かの参考になるなら』と言ってもらえたのが印象的だった」(寺口氏)
現在は転職情報を増やすため、体験談などを投稿すれば数千円、回数によっては1万円以上の謝礼がもらえるなどの仕組みもある。
「キャリアの情報には価値があり、その対価を払うのはサービスの成長のためには必要。
まだまだ過去の転職をオープンに語れる人は少ないのが現実だ。一人ひとりが自分のキャリア情報を投稿することで、どこに進めばいいのかに役立つ『キャリアの地図』を作っていきたい」
これまで閉じられたままだった転職情報が放たれることで、転職市場にどんな“波風”を立てられるのか、注目だ。
(文・横山耕太郎)