2021年1月6日、テルアビブ。
Sebastian Scheiner/AP
- イスラエルは、今週末からファイザー製の新型コロナウイルスワクチンのブースター接種(追加接種)を開始する。
- 当局によると、ワクチンの重症化を防ぐ効果は97%から81%に下がっているという。
- デルタ株の広がりを受け、イスラエル以外にもブースター接種を検討している国もある。
イスラエルは、8月1日から高齢者向けにファイザー製の新型コロナウイルスワクチンのブースター接種を開始する。保健当局は、ワクチンの重症化を防ぐ効果が時間とともに下がってきたことを最新データが示していると説明している。
新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、その効果がどのくらい続くのか、まだよく分かっていない。一部でワクチンの防御をすり抜ける能力を示しているデルタ株の広がりで、その不透明性はさらに高まっている。
最新データを受け、イスラエルは2回目の接種から5カ月以上が経っている60歳以上の市民に対し、3回目の接種を行う。イスラエル以外の国でも、ブースター接種を行うべきか、行うとすればいつやるべきか、検討している国もある。イスラエルではすでに、がん患者など免疫力の弱い一部の人々にブースター接種を始めている。
接種から数カ月が経ち、ファイザー製のワクチンによる防御が衰え始めたと示唆する研究がいくつか、ここ数週間で出てきている。イスラエルの決断は、有効性低下の兆候がきっかけになったと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。
中でも、あるイスラエルの科学者は、60歳以上の年齢層におけるワクチンの重症化を防ぐ効果が4月の97%から7月は81%に下がっていることを示すデータを国が持っていると話した。これらの結果はまだ、論文審査のある医学雑誌に掲載されたり、査読前の論文を投稿し一般に公開するプレプリント・サーバーには投稿されていない。
スクリップス・リサーチ・トランスレーショナル・インスティテュートの創設者で所長のエリック・トポル(Eric Topol)氏は、この結果が事実なら「ワクチンの入院、死亡を抑止する有効性が大幅に低下したことを示す初めての証」になるとツイッターで述べている。
「その意味合いは大きく、全てのデータが可能な限り速やかに共有されることを願う」ともトポル氏は付け加えた。
イスラエルの調査結果は、ファイザー製のワクチンがデルタ株による入院のリスクを96%下げたとするイギリスの6月の報告と食い違っているように見える。2つの調査結果の違いは、イスラエルの調査は高齢者に限定されているということだ。
ファイザーは7月28日、初めのワクチン接種から6~12カ月後にはブースター接種が必要になるとする同社のスタンスを裏付ける結果を追加提示した。ファイザーによる臨床検査は、2回目のワクチン接種から8カ月が経つと、全ての年齢層で抗体が無力化したことを示している。
また、同社は4万人以上のボランティアが参加した臨床試験の新たな詳しい結果も投稿している。長期追跡調査の結果は、2回目の接種から4カ月が経つと、その重症度に関係なく、有症状の新型コロナウイルス感染症を防ぐ効果は84%に下がることを示している。接種後2カ月は96%だった。
この調査では、ワクチンの重症化を防ぐ効果は97%で、重症化した人のうち30例がプラセボ(偽薬)群、1例がワクチン接種群だった。
ファイザーの調査結果もまだ論文審査のある医学雑誌には掲載されていない。同社はブースター接種の提供を開始するため、8月にアメリカの規制当局に申請するとしている。
(翻訳、編集:山口佳美)