- アマゾンの創業者でビリオネアのジェフ・ベゾス氏は7月、ブルーオリジン(Blue Origin)のロケットで宇宙の縁を訪れた。
- ロケットは大量の熱、二酸化炭素、その他の大気汚染物質を大気中に排出する。
- 宇宙船は一般的な旅客機に比べて、乗客数も非常に限られている。
自身の宇宙旅行を発表した時、ジェフ・ベゾス氏は「宇宙から地球を眺めたら自分が変わる。自分とこの惑星、自分と人類との関係が変わる」と語った。
長い間、それを経験できるのは宇宙飛行士だけだった。しかしベゾス氏は子どもの頃からそれを夢見てきたのだ。7月20日、ベゾス氏は奇妙な形の乗り物で、短時間のサブオービタル(準軌道)飛行を実現した。ヴァージン・グループの創業者でビリオネアのリチャード・ブランソン氏もヴァージン・ギャラクティックのフライトで7月11日に宇宙の縁を訪れている。2022年にはビリオネアのイーロン・マスク氏も、ヴァージン・ギャラクティックのフライトに搭乗予定だ。
宇宙旅行にかかる費用は数百万ドル、二酸化炭素の排出量は明らかにされていない。アメリカ航空宇宙局(NASA)は宇宙飛行士に多くの素質や経験を求めるが、ブルーオリジンの乗客は2日で14時間のトレーニングをするだけだ。ヴァージン・ギャラクティックは乗客に3日間のトレーニングと準備を提供する。
こうしたビリオネアたちにとって"成功"は、地球の珍しい眺めを楽しむために、さらに多くの民間人が同じような高価な旅をすることなのかもしれない。しかし、乗客定員が非常に限られていること、宇宙船の打ち上げでかかる環境への負担(これは気候変動に関連した異常気象を悪化させかねない)を考えれば、急成長しているこの「宇宙観光」という産業は持続可能ではない。
二酸化炭素が増えれば、頭痛、めまい、呼吸困難、倦怠感、窒息、けいれんなど、さまざまな健康上の問題が起こり得る。二酸化窒素が増えれば、呼吸障害が起きたり、呼吸器感染症や喘息にかかりやすくなる恐れがある。オーストラリア政府によると、窒素酸化物に長期間さらされると、慢性肺疾患を引き起こしたり、嗅覚障害に陥ることもあるという。
二酸化炭素をどのくらい排出するのか
こうした新たな宇宙飛行がトータルでどのくらいの量の二酸化炭素を排出するのかは、ほとんど明らかにされていない。それが、ロケットの打ち上げが全体としてどのような影響を大気にもたらすのか見極めることを難しくしている。ヴァージン・ギャラクティックのような企業が年間400回の宇宙飛行を実施する予定となれば、なおさらだ。ただ、専門家らは、ヴァージン・ギャラクティックの宇宙旅行で乗客1人あたりが排出する二酸化炭素の量は、一般的な自動車が地球を1周した時に排出するのと同じくらいの量だと指摘している。
潜在的に大問題
ブルーオリジンの「ニューシェパード」、ヴァージン・ギャラクティックの「VSSユニティ」、スペースXの「ファルコン」の打ち上げに使われている推進剤はさまざまだが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのエロイース・マレ(Eloise Marais)准教授によると、点火や燃焼のプロセスではしばしば、温室効果ガスや水蒸気、熱が生じるという。宇宙飛行の数は長距離の商業航空より少ないものの、排出する二酸化炭素の量は桁違いに多い。商業航空では乗客1人あたりが排出する二酸化炭素量は1~3トンだが、4人乗り以上のロケットが排出する量は200~300トンだ。「つまり、他の排出源と張り合うために、それほど(宇宙飛行は)成長する必要がないのです」とマレ准教授はガーディアンに語っている。
超富裕層からのさらなる環境廃棄物
こうした宇宙飛行は、ヘリコプターやプライベートジェット、スーパーヨットに並んで、大量の二酸化炭素を排出する交通手段となるだろう。ただ、スペースXの「ファルコンヘビー」といったロケットはすでに、商業打ち上げによって排出される二酸化炭素量がかなり多いことを示している。こうして排出された大量の二酸化炭素をカーボン・オフセットや"ビーガンになる"といった個人の選択で相殺することは困難だ。
[原文:Expensive trips to the edge of space could have big effects on the atmosphere]
(翻訳、編集:山口佳美)