2021年6月24日、米ロサンゼルス中心部のアップルストアに姿を見せたティム・クック最高経営責任者(CEO)。
REUTERS/Lucy Nicholson
グーグルはアップルを警戒したほうがいい。
開発途上国で圧倒的なシェアを占めていたAndroidスマートフォンがiPhoneに侵食されつつある。アップル最高経営責任者(CEO)のティム・クックはさらなるシェア拡大に自信を見せる。
7月27日に行われた第3四半期(アップルの会計年度で4〜6月)の決算説明会で登壇したクックは、Android端末からiPhoneへの乗り換えが強い勢いで進んでいることを強調し、なかでもインド、ラテンアメリカ、ベトナムなどの開発途上国あるいは新興市場に特に勢いが感じられるとした。
「この四半期の新興市場は信じられないほど好調だった」とクックが語ったように、メキシコ、ブラジル、チリ、トルコ、タイ、マレーシア、カンボジア、インドネシアでは、販売台数の記録を更新した。
この勢いが続けば、モバイル市場の風景は大きく変わることになる。
10年以上前にスマートフォンが普及して以来、アップルはプレミアム価格帯の端末を中心にハイエンド市場にフォーカスする戦略をとってきた。
そのため、高価な携帯電話を購入する経済的余裕のない人々が多い新興市場は、Android端末の独壇場となった。
ところが、アップルは2020年に「iPhone SE(第2世代)」を399ドルからと、一般的なiPhoneの半分という価格設定で発売。この機種のおかげで、アップルは苦戦してきたインドなど新興市場で大幅なシェア拡大に成功した。
テクノロジー専門の調査会社ストラテジーアナリティクス(Strategy Analytics)のニール・モーストンは次のように説明する。
「インドはアップル躍進の好例です。iPhoneは過去1年間で市場シェアを倍増させました。第2四半期(4〜6月)の販売台数は、当社の推計によると、Androidスマートフォンが前年同期比73%減と後退したのに対し、iPhoneは136%増を記録しています」
モーストンによれば、新興市場におけるiPhoneのシェアは底辺からのスタートで、躍進したと言っても、2020年におよそ1%だったのが2021年上半期に2%まで拡大したにすぎない。
「しかし、これから出荷台数をさらに伸ばしていくうえで、価格設定を引き下げる余地があるということは、アップルにとって非常に大きな意味を持ちます」(モーストン)
7月27日の決算説明会で、スイス金融大手UBSのデイビッド・フォークトから価格戦略について問われたクックCEOは、iPhone SEが新興市場での販売拡大に寄与しており、今後も当面はそうした状況が続くとの見方を示している。
「iPhone SEについては長期的な視点で考えています。まずはこれからiPhoneを手に入れたいと考えているエントリー層向けに、そのあと最高のiPhoneを買いたいと考えているプロ向けに、といった具合に。そうした手法は、アメリカあるいは他の先進国市場のみならず、新興市場でも同じように機能すると思っています」(クック)
近年、iPhoneとiOSの組み合わせは、アメリカでもAndroidに対してかなり好調な勢いを見せている。
アップル専門ニュースサイトMacRumorsの記事によれば、調査会社コンシューマー・リサーチ・インテリジェンス・パートナーズ(Consumer Research Intelligence Partners)は2020年末に公表したレポートで、アメリカにおけるiOSとAndroidの(スマートフォン新規購入時の)アクティベーション数の割合が半々に達したとの推計を示している(2020年、21年とも)。
2017年時点では、iOSのアクティベーション数は30%超にとどまっていた。
調査会社カウンターポイント(Counterpoint)のモーリス・キューネはこう分析する。
「アップルはiPhone 12シリーズの成功によって、2020年、21年とシェア拡大に成功しました。各キャリアは最近、5Gプランの契約拡大を狙って5G対応のスマートフォンを大々的に宣伝していて、それがiPhoneのユーザー拡大にとって追い風となっています」
グーグルの広報担当にこの状況をどう見るかコメントを求めたが、返答は得られなかった。
[原文:Apple CEO Tim Cook dropped a big hint about the future of the iPhone SE]
(翻訳・編集:川村力)