東京2020大会で、チームUSAのマスクを着用している女子体操選手のジョーダン・チャイルズ(Jordan Chiles:左)とシモーン・バイルス(Simone Biles )。
Tim Clayton/Corbis via Getty Images
- 東京オリンピックのアメリカチームは近未来的なマスクを着けている。
- このマスクは『バットマン』『スターウォーズ』『羊たちの沈黙』などの映画に出てくるキャラクターに例えられている。
- ナイキは、医療用のマスクではないことを強調している。専門家によると、N95マスクが最も効果的だという。
アメリカのオリンピックチームは、まばゆいばかりの白いトラックスーツで東京大会に登場したが、注目を集めたのはおそろいの白いマスクだった。
選手の顔から1インチ(約2.5センチ)はそそり立つこのマスクは、折り紙を思わせる独特の形状をしている。
ソーシャルメディアでは、このチームUSAのマスクを、『バットマン』の悪役ベイン(Bane)や、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターがしていたマスクに例えている。
バットマンと戦う準備をするチームUSA。
なぜチームUSAのマスクを着けていると、ベインが、ディディ(Diddy)のホワイトパーティー(「全身白」がドレスコードのパーティ)に招待されたように見えるのだろうか。
ハンニバル・レクターをイメージしたマスク?
このマスクは特殊な見た目をしているが、保護機能が付加されているわけではない。
通気性がよく、快適で、洗えると宣伝されるメッシュマスクでは、コロナウイルスを含むエアロゾルをN95マスクのように遮断することはできないと、テキスタイルの専門家であるカリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のヨーロ・シエ(You-Lo Hsieh)教授はInsiderに語った。
このマスクはナイキ製で価格は60ドル
チームUSAのようにマスクを着けたい人は、待たなければいけない。
このマスクはナイキ(Nike)製で「ナイキ・ベンチュラ(Nike Venturer)」と呼ばれている。現在ナイキのサイトで購入することはできないが、黒のみが1枚60ドル(約6584円)で販売される予定だ。
(ちなみに、60ドルあれば、マスクの金字塔「N95」は20枚、同様のKN95マスクであれば50枚入手することができる)
「抜群の通気性を追求した、ナイキ史上初のストラップ付き高性能マスクが登場 」とオンラインでは説明されている。
「スポーツ用にデザインされたノーズクッションとあご当てが、激しく動いてもずれを防止する」
医療用マスクのような保護機能はない
布製のマスクと同様に、このナイキのマスクも「通気性」を重視して設計されているが、その保護機能は損なわれている。
生物・農業工学の分野で著名なシエ教授は「(これらのマスクは)通気性を確保するために、非常に大きな気孔があり、エアロゾルではなく最大の液滴しかブロックできない可能性がある」と述べた。
ナイキによると、このマスクは個人用防護具(PPE) としての使用を目的としたものではないという。テキスタイル・エンジニアのエミール・デンハートッグ(Emiel DenHartog)によると、PPEとして使用しないというのは、医療グレードの基準を満たしていない布製マスクの標準的な注意事項だという。
「テストデータがなければ、マスクの効果を判断するのは難しい」とデンハートッグはInsiderに語った。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)