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- 新型コロナウイルスの新規感染者数が増えるにつれ、パンデミック関連のストレスも再び高まっている。
- 心理学者たちは、こうした「コロナ不安」を管理するための7つのヒントをシェアしてくれた。
- 他者のために何かをしたり、ニュースに触れる機会を減らすのも有効な戦略だという。
精神科医のエバ・リトモ(Eva Ritmo)氏は先日、自身が主催する読書会のメンバーの1人からEメールを受け取った。ロサンゼルスで新型コロナウイルスの感染者が増えているため、屋内で20人ほどいるメンバーで集まるのを止めるべきかどうか、迷っているとのことだった。
こうした"迷い"は、アメリカではワクチンがまだ遠い希望でしかなく、屋内の集まりを避けるよう強く言われていたパンデミックの1年目によく聞かれたものだ。しかし、米疾病予防管理センター(CDC)は最近、感染が広がっている地域ではワクチン接種を完了させた人々にもマスクの着用を推奨していて、多くのアメリカ人は自らの行動に疑念を抱くようになった。
アメリカでは7月、1日あたりの新型コロナウイルスの新規感染者数が7倍以上に、1日あたりの入院患者数が2倍以上に増えた。ワクチンは重症化や死亡を防いではいるものの、CDCによると、ワクチン接種済みのアメリカ人も1%未満とはいえ「ブレークスルー感染」し、何らかの症状が出ているという。
最悪の時期は終わったと考えていた多くのアメリカ人 —— 小売業に従事している人やパフォーマーといった、対面で働く必要がある人々を含む —— は今、パンデミック関連のストレスまたは「コロナ不安」が再び高まっていると訴えている。アクシオスとイプソスの最新調査では、アメリカ人の半数がコロナ前の生活に戻るのは危険だと考えていて、ここ数カ月に比べて、外食をしたり、友人や家族の家を訪ねる人が減っていることも分かった。
こうした不安は間違っていないと、リトモ氏はInsiderに語った。
「何もできなくなるくらいの不安を抱えたくはありませんが、不安がなさ過ぎるのもいいことではありません」とリトモ氏は言う。
「不安はわたしたちの友達だということを覚えておかなければなりません。不安が危険を知らせてくれるのです」
ただ、不安を管理する方法はある。不安を管理することで、わたしたちは先行きが不透明な中でも情報に基づく決定を下し、充実した生活を送ることができるはずだ。例えば、リトモ氏の読書会はマスクを着用して、屋外で集まることに決めた。
Insiderでは、リトモ氏と心理学者のエマ・セッパラ(Emma Seppala)氏にそれぞれ、デルタ株の感染が広がる中でもストレスを減らすためのヒントを尋ねた。
ニュースに触れる機会を少し減らす
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セッパラ氏はニュースとの接触に境界線を引くようアドバイスしている。同氏はスタンフォード大学Center for Compassion and Altruism Research and Education(思いやり利他行動研究教育センター)のサイエンス・ディレクターを務めている。
「ストレスや不安を感じる場所にいると、全てを恐怖のレンズを通して見るようになります」とセッパラ氏は言う。
「そして、同じようなレンズを通したメッセージにさらに目が行きがちになるのです」
リトモ氏は、ニュースはテレビで見るよりも、文字で読むようにしているという。
「1日に何度も新型コロナウイルスの感染者数を知る必要はありません。週に何度も知る必要すらないかもしれません」とリトモ氏は話した。
「それが必要になるのは、物事がどういう方向へ向かっているのか、何が自分にとって安全かを知りたい時だけです」
朝と夜にメディテーション(瞑想)をしてみる
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セッパラ氏はアプリを使って毎朝、メディテーションをしていると語った(携帯電話は機内モードにして、通知に邪魔されないようにしている)。同氏は夜、ベッドに入る前にもう一度メディテーションをしているという。
複数の研究が、メディテーションは不安の軽減に少なくとも中程度の影響をもたらすと示している。
「普通でない状況が続いている時は、自分自身を継続的に支える何かが必要なのです」とセッパラ氏は言う。
ヨガやエクササイズ、自然の中で時間を過ごすことも、同様に助けになると付け加えた。
安全じゃないと感じる状況に自分を無理に置かない
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周囲からのプレッシャーに押されて、つい屋内で食事をしたり、パーティに参加したり、バーに行きたくなることもあるかもしれない。ただ、自分が安全じゃないと感じているなら、大して楽しめないだろうとリトモ氏は言う。同氏によると、多くの場合、自分の本能的直感は過剰反応ではないという。
「自分がどうしたいか、どこで線を引きたいかは、1人1人に決めるチャンスがあります」とリトモ氏は言う。
「誰かがあなたにそれを越えるよう無理強いするなら、それはあなたを尊重していないということで、この関係は本当に自分のとってプラスなのか、この人は自分のことしか考えていないのではないか、よく考える必要があります」
パニックになりそうな時は呼吸を忘れずに
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ストレスはわたしたちの交感神経を活性化するため、心拍数の上昇や呼吸が早まるのを感じるかもしれない。呼吸のエクササイズは、副交感神経を活性化することでこうしたストレスを相殺してくれる。
「自分の呼吸に注目し、ゆっくりと息を吸っい切ったら少し止めて、さらにゆっくりと息を吐きましょう」とリトモ氏はアドバイスしている。
もう少し時間に余裕があるなら、「スカイ呼吸瞑想法(SKY Breath Meditation)」と呼ばれる方法を試してみることをセッパラ氏は勧めている。同氏の研究によると、この呼吸エクササイズは不安やストレスの軽減につながるという。
心を落ち着けるために食事をしたり、間食を楽しむ
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誰かと一緒に食事をしたり、間食を楽しむことでわたしたちはリラックスできる —— ただし、注意深くやる必要があるとリトモ氏は言う。
「食事は本来、わたしたちがリラックスするためにやることです」とリトモ氏は語った。
「だからこそ、わたしたちは食事を友人や家族とともにするのです。大音量のテレビとともにするものではありません」
感染拡大予防ガイドラインは守ろう。
他者のために何か思いやりのあることをする
ワクチン接種会場でボランティア活動をする女性(2021年7月31日、イギリス)。
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近所のお年寄りの家に花を届けたり、精神的に落ち込んでいる友人にちょっとしたプレゼントを送るなど、他者のために何かすることは「あなたの心の健康にとって、大きなプラスになります」とセッパラ氏は言う。
他者の役に立つことで充足感が得られ、より幸せで健康な生活につながると複数の研究が示している。
自分がありがたいと思っていることを考える
ネガティブな考えから気をそらすために、セッパラ氏はコロナ禍でも明るい面に目を向けるようアドバイスしている。
「子どもと一緒に自宅にいて、仕事をするのが大変かもしれません。ですが、少なくともあなたは子どもと一緒にいるのです」とセッパラ氏は言う。
これまでの研究は、感謝の気持ちがメンタルヘルスの向上につながることを示している。パンデミックと違って、感謝の気持ちを示すことは自分がコントロールできることだと、セッパラ氏は話している。
「人生は予想がつきません。いま起きていることも予想がつかないのです。わたしたちにどうにかできるのは、自分の心の状態だけです」
(翻訳、編集:山口佳美)