VISAも提携に乗り出す仮想通貨。その「信用」はどう成り立っているのか?【音声付・入山章栄】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

盛り上がりを見せる仮想通貨。先日は「VISAが50社以上の暗号資産関連企業と提携」というニュースが話題になりました。これによって私たちの生活はどう変わるのでしょうか? 暗号資産を支えるブロックチェーン技術の本質的な意味合いとは? 入山先生が経営理論を使って解説します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:10分13秒)※クリックすると音声が流れます


暗号資産の便利さを説明する経営理論とは?

こんにちは、入山章栄です。

Business Insider Japan編集部の常盤亜由子さんは最近、こんなニュースが気になっているようです。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

先日、クレジットカードのVISAが、なんと50社以上の暗号資産関連企業と提携したという報道がありました。ということは、VISAが使えるお店ではこれから普通のお金と同じように暗号資産で決済ができるようになるわけで、これはすごいことですよね。入山先生は暗号資産をお持ちですか?


僕は暗号資産を持っていませんが、経営学者としてはもちろん興味があります。同じくBusiness Insider Japan編集部の小倉宏弥さんはどうですか?


BIJ編集部・小倉

BIJ編集部・小倉

実は、出始めのころにビットコインを買ったんです。ところがどんどん値下がりして、100万円くらい損をする羽目に……。そこから少し盛り返したものの、結局マイナス20~30万円のあたりで手放してしまいました。


いまビットコインはめちゃくちゃ値上がりしているようですから、残念でしたね。

先ほども言ったように、僕自身は暗号資産とか暗号通貨と呼ばれるものを所有していませんが、暗号通貨やそれを支えるしくみであるブロックチェーン技術にはすごく期待しています。

ご存じのように暗号資産は、ブロックチェーンという技術によって記録・管理されています。つまり取引記録を暗号技術によって一本のチェーン(鎖)のようにつないでいるので、誰かがデータを改ざんしたり破壊したりすると、その記録が絶対に残ってしまう。だから不正が起きにくく、信用できるわけです。

最新のコンピューター技術がこのようなことを可能にしたわけですが、とはいえ「すべての取引をもれなく記録することで、誰かが不正に変更を加えるのを抑制する」というアイデア自体は、実はかなり昔から存在します。そしてなぜそれが可能になるのかは、経営学では「ソーシャルキャピタル理論」という昔からある理論で説明できるのです。

人間関係から得られる資本とは

「ソーシャルキャピタル理論」のソーシャルキャピタル(社会資本)とは、人と人とがつながって関係性を持つことで得られる便益のこと。ファイナンシャルキャピタル(金融資本)、ヒューマンキャピタル(人的資本)に次ぐ「第三の資本」と言われています。

詳しくは拙著『世界標準の経営理論』をお読みいただきたいのですが、現代の経営学ではソーシャルキャピタルを、「ブリッジング型」と「ボンディング型」の2つに分けて理解します。

「ブリッジング型」とは、離れた人と人とがどんどんつながっていくことで、自分の認知の範囲を超えた外部のさまざまな人たちが発信する情報が得られたり、離れた人同士で新しいシナジーが生まれたりすることです。まさにブリッジング(橋渡し)ですね。

それに対してブロックチェーンを考えるときに重要になるのが、「ボンディング型」です。これはシカゴ大学のジェームス・コールマンという社会学者が提唱した考え方で、今でも経営学や社会学における非常に重要な視点です。

そのエッセンスを簡単に説明しましょう。

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