BASEは決算説明会を実施。以前は出資元であったメルカリのEC新機能についての質問が相次いた。
撮影:小林優多郎
ECプラットフォームや決済サービスを提供するBASEは8月5日、2021年度第2四半期決算を発表した。
第2四半期までの累計の売上高は46億8400万円と、前年同期比で27%増と伸びてはいるが、TVCMなどの販管費がかさんだ影響で、純損益は2億4600万円の赤字となっている。
BASEは、パンデミック下の巣ごもり需要などで、新規販売店および購入者の増加し、ECプラットフォームのBASE事業、オンライン決済サービスの「PAY.JP」事業のいずれも好調だ。
一方でそんな市場の動きに合わせるように、国内外のさまざまな企業がECプラットフォーム事業に参入している。直近では、7月28日にフリマ大手のメルカリの完全子会社・ソウゾウがメルカリ内にネットショップを持てる「メルカリShops」の提供を始めた。
メルカリは2016年1月にBASEに4.5億円の出資をした間柄である(メルカリが所有していたBASE株は2020年7月に売却済み)。今回の決算説明会での機関投資家からの質疑では、自然とBASE上級執行役員CEOの鶴岡裕太氏の「メルカリShops」への受け止めに話題が集中した。
メルカリShopsとBASEは「長所としているところが違う」
BASE上級執行役員CEOの鶴岡裕太氏。
出典:BASE
まずメルカリShops開始の受け止めを聞かれた鶴岡氏は「そもそも長所としているところが違う」と指摘する。
鶴岡氏はメルカリShopsの具体的な機能や特徴への言及は避けたが、BASEの強みは「特定のプラットフォームに左右されることなく、ネットで多様的に生きていく中で使ってもらえるプロダクト」としている。
メルカリアプリ内に自分のECサイトを開ける「メルカリShops」。
撮影:小林優多郎
メルカリShopsの最大の特徴は、月間1900万人の利用者がいるメルカリというプラットフォームの上で店を開ける点だ。値下げ交渉ができないなどの違いはあるが、ユーザーにとっては普段フリマを使うのと同じ感覚で、商品を購入できる。
一方で、BASEはより広いニーズに対応する。BASEはいわゆるコンピューターにおけるOSのような存在で、加盟店は自由に店の外観を設定したり、有償無償が混在するAppsでさまざまな機能を追加できる。
直近では、商品をInstagramの広告として配信する機能やGoogleのショッピングタブに表示させる外部サービスとの連携機能にも力を入れている。
BASEが提供している「Google商品連携 App」。
撮影:小林優多郎
メルカリ経済圏を最大限に生かすメルカリShopsに対し、鶴岡氏が「それぞれの(サービスの)付加価値が全く違う」としたBASEの代表的な長所は、この“ユーザーが自由に機能を取捨選択したり、外部とも連携しやすい点”だろう。
もちろん、メルカリShopsも今後独自の機能拡張やメルカリアプリ外にネットショップを開設できる機能の2021年内の提供も予定するなど、機能拡張を進めていく。
BASEはECプラットフォーム事業において「月間GMV(流通総額)」「月間売店数」「1ショップあたりの月間平均GMV」の3つをKPIに設定している。
出典:BASE
鶴岡氏は「しっかりと意識して動向をウォッチしていく」と動向を注視していく姿勢は見せたが「(BASEが)やることをやっていればしっかりと成長していけるのではないか」と現状のBASEの方向性に変更はない旨を強調した。
BASEは2021年5月に累計ショップ開設数が150万ショップを突破した。同社がKPIのひとつとする月間売店数も順調に伸びていることから、加盟店の大きな流出も発生していないという。
そんな足元の状況が鶴岡氏の自信ある言葉の裏付けとなっているようだ。
(文・小林優多郎)