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NY州知事セクハラ辞任へ。「側近や支援者が被害者の苦情を無視、もみ消していた」捜査報告書を受け

(編集部より:米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事による辞意表明を受け、内容をアップデートしました[8/11 07:30])

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米ニューヨーク州司法当局のセクハラ捜査報告書に対して、録画ビデオを通じて反論したアンドリュー・クオモ州知事。その後、8月10日(現地時間)に辞意を表明した。

Screenshot of NBC News YouTube Official Channel

米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事が8月10日(現地時間)に辞意を表明した。14日以内に退任するという。

同州のレティシア・ジェームズ司法長官が1週間前に発表した、11人の女性に対するセクハラを立証する165ページの捜査報告書を受けたもの。

同報告書は、クオモ氏が部下の女性らにセクハラをくり返し、「恐怖心をあおる」職場環境を州政府内に生み出していたと指摘。

その後、バイデン米大統領が「クオモ氏は州知事を辞任するべきだ」と指摘するなど、辞任を求める圧力が強まっていた。

クオモ氏は10日に開いた記者会見で、被害者の女性に対し「深くお詫びする」としたものの、「自分としては一線は超えていない。しかし、その線が(世代や文化の変化を受け)どのように引き直されたのかを理解していなかった」と説明し、セクハラ行為をあらためて否定した

クオモ氏は2020年、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に際し、対策面で手腕を発揮。一時は大統領選挙への出馬まで期待された。今年5月から経済をほぼ全面再開したニューヨーク州の順調な回復にも貢献し、一定の評価を受けていた。

なお、クオモ氏の退任後は、現副州知事のキャシー・ホークル氏が昇格する。ニューヨーク州では初となる女性州知事が誕生することになる。

側近や支援者たちが被害者の苦情をもみ消してきた

クオモ氏によるセクハラは、今年2月以降、メディアに対して被害者らの告発が相次いだことで明るみに出た。

ジェームズ司法長官が指名した外部の弁護士2人は、その後5カ月にわたり179人にインタビューし、今回の報告書をまとめた。クオモ氏も宣誓のもと、11時間の尋問を受けている。

報告書とそれに伴う記者会見によると、クオモ氏は部下など、特に若い女性11人に対し、同意なく身体に触れ、キスをしたり、ハグしたり、不適切なコメントをした。

調査にあたった弁護士の1人、アン・クラーク氏は「州知事は女性らを探し回ったり、じっと見つめたり、上から下まで見たり、胸やお尻を眺めたりしたことも多かった」と話した。

同時に、過去から現在に至る側近や支援者たちが、クオモ氏の機嫌を損ねないようにと、被害者らの苦情を無視、あるいはもみ消していた。

そのため、被害者らにとって恐怖心と緊張感に満ちた「ストレスが激しくたまる職場環境」が常態化していた。

クオモ氏は州知事3期目(在職10年)、そうした雰囲気が固定化し、ますますセクハラが起きやすい状況を生んでいた。

キスやハグは「温かさを示す表現」

クオモ州知事が公開した、捜査報告書に対する反論ビデオ。

NBC News YouTube Official Channel

クオモ氏は捜査報告書に対し、(辞任表明まで)記者会見を行わず、録画したメッセージビデオと85ページの反論書を公表。「報告書は、私について事実と異なる描写をしている」とし、辞任する考えはないとした。

「私は、不適切に誰かに触ったり、性的に言い寄ったりはしていない。[中略](報告書の中の)私は真の私ではないし、過去にもそうであったことはない」(クオモ氏)

ビデオでは、クオモ氏が男女に関係なくキスしたりハグしたりする写真が立て続けに流れ、クオモ氏はそれらについて「温かさを示す表現だ。人々をリラックスさせて、笑顔を見たいからだ」と意味づけた。

それでも、クオモ氏に対する辞任圧力は高まり続けた。

ニューヨーク州議会の多数派である民主党は緊急の議員会合を開き、司法当局がセクハラを立証したのを受け、州議会での弾劾訴追決議に向けて動き出した。

また、ニューヨーク州の州都があるアルバニー郡の検察当局は、クオモ氏のセクハラが刑事事件につながる可能性があるとして、調査に着手したことを発表していた。

「セクハラが起こりやすく、継続する」カルチャーの存在

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州議会はクオモ州知事を弾劾するのか。慌ただしく動き出した米ニューヨーク州アルバニーの州議会。

REUTERS/Patrick Dodson

実は、クオモ氏の2代前に州知事を務めたエリオット・スピッツァー氏(民主党)は、高級娼婦クラブに数万ドルをつぎ込んでいたことが発覚し、就任から1年ほどで辞任している。

仮にクオモ氏が辞任すれば、この15年間で3人しかいない州知事のうち2人が女性がらみのスキャンダルで辞任することになり、「男性の州知事を選出するのを50年間禁じることを検討か」(米ニューヨーカー、アンディ・ボロウィッツ氏のコラム)と題した風刺記事まで出ている。

今回の調査に当たった弁護士の1人で元連邦検察官のジューン・キム氏によると、クオモ氏のオフィスでは「セクハラが起こりやすく、継続する」カルチャーとパターンがあると指摘した。

州知事にノーと言ったり、彼や彼の側近幹部の気分を損ねると、相手にされなくなるか、さらに悪いことも起きるというカルチャーがはびこっている」(キム氏)

このようなカルチャーは、女性へのセクハラや性的暴行の根絶を目指す「#MeToo」運動のきっかけになった、ハリウッドの元映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン服役囚のセクハラ事件にも共通する。

ワインスタイン服役囚の長年におよぶセクハラ、性的暴行を2017年にスクープしたニューヨーク・タイムズの女性記者らによる著書『その名を暴け』によると、彼の会社や側近が被害者の女優や部下に示談金を払うなどして口封じをし、次の犠牲者が生まれやすい環境をつくり出していた。

クオモ氏はこれまで政界で起きたセクハラを自ら糾弾してきた。ニューヨーク州内だけでなく、国政レベルで起きたセクハラや性的暴力の問題について、必ずと言っていいほど声明を出したりSNSに投稿したりしている。

彼の姿勢は常に「ゼロ・トレランス(不寛容=法律違反を厳しく罰する)」だったはずだが、今回は司法当局がセクハラを立証したにもかかわらず、周囲の圧力を受けて辞意を表明したものの、セクハラの事実関係については相変わらず認めていない。

そのように、自分に対しては寛容なところにも批判が集まっている。

(文:津山恵子


津山恵子(つやま・けいこ):ジャーナリスト、元共同通信社記者。ニューヨーク在住。2007年から独立し、主にアエラに、米社会、政治、ビジネスについて執筆。近著は『教育超格差大国アメリカ』『現代アメリカ政治とメディア』(共著)。メディアだけでなく、ご近所や友人との話を行間に、アメリカの空気を伝えるスタイルを好む。

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