出典:国立天文台
夏の風物詩「ペルセウス座流星群」が、8月12日深夜から8月13日の明け方に見頃(極大)を迎えようとしている。
8年ぶりの好条件。1時間に50個の流れ星も
ペルセウス座流星群は、1月のしぶんぎ座流星群、12月のふたご座流星群と並ぶ3大流星群のうちの1つ。
国立天文台によると、最も多くの流れ星が発生する「極大」のタイミングは8月13日の午前4時過ぎ。
極大になる前後1日、8月11日の夜から8月13日の夜にかけてが観測に適したタイミングだ。
流星は21時頃から出現し始めるが、その後ペルセウス座の高度が高くなっていくにつれて徐々に観測できる数は増えていく。最も多くの流れ星を観測できるタイミングは、ペルセウス座の高度が一番高くなる午前3時頃だ。
13日の明け方には観測に適した時間帯に極大を迎えるため、十分暗い場所で観測すれば1時間に50個程度、あるいはそれ以上の流れ星を見ることができるかもしれないという。
観測できる流れ星の予想数は、国立天文台が毎年さまざまな条件の中で観測を積み重ねてきた結果をもとに今回の条件に照らし合わせて推測したものだ。
また、2021年8月8日は新月であり、見頃を迎える12日〜13日には流星群観測の大敵とも言える月明かりの影響も少ない。今年は流星観測にとって好条件の年といえる。
国立天文台によると、極大の時刻や月齢などの条件は8年ごとに近い値になるため、次に同じような好条件で観測できるのは8年後の2029年となる。
流れ星は、北の空に見えるペルセウス座付近を中心に、放射状に空全体に広がっていく。この中心点を「放射点」という。
ペルセウス座は、「W」の形で知られている「カシオペア座」の近く。放射点は、カシオペア座の「W」の左付近だ(下の図の「放射点」を参照)。
ただし、流れ星は空全体に現れるため、放射点の周辺だけではなく夜空をまんべんなく見渡すのが多くの流れ星を見つけるコツだ。
出典:国立天文台
流星群は彗星からの贈り物
「流星群」とは、その名の通り流れ星が大量に生じる現象だ。
「ペルセウス座流星群」と、星座の名前を冠してはいるものの、星座と流れ星の間には何の関係もない。あくまでもその星座の方向から流れ星が多く観測されるというだけだ。
流れ星の「原料」は、かつて地球の近くにやってきた「彗星」が残していったダスト(ちり)。
彗星は、ダストと氷でできた“汚れた雪玉”のような天体だ。太陽の近くにやって来ると、氷が蒸発してダストをはじめとしたさまざまな物質が、宇宙空間に解き放たれる。
こうして宇宙空間に残されたダストは、ある程度密集した状態で漂っている。この「ダストの帯」に地球が突入することで、直径1ミリメートルから数センチメートル程度のダストが地球へと降り注ぐ。
2020年に発見されたネオワイズ彗星。太陽に近づくとその熱で氷が溶け、ダストが尾を引くように伸びていく。こうして放出されたダストが地球に降り注ぐと、流星として観測される。
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このとき、大気との摩擦によってダストが発熱・発光するだけではなく、ダストと衝突してエネルギーを得た空気の分子が発光することで、流星特有の強い輝きが生まれているのだ。
ペルセウス座流星群の原料となるダストを供給している彗星(母天体)は、約130年に一度地球の近くにやってくる「スイフト・タットル彗星」。
宇宙空間に残されたダストは、太陽をはじめとしたさまざまな天体の重力の影響を受けて、徐々に散らばっている。かつて地球の軌道上に大量のダストを残してくれた彗星が再びやってこなければ、観測できる流星の数が少なくなってしまう恐れもあるという。
夏の夜に現れる宇宙の神秘も、長い地球の歴史からするともしかしたら当たり前ではないのかもしれない。
極大となる8月13日にかけて関東では一部天候に不安は残るが、雲の隙間からぜひ夜空を見上げてみてはいかがだろう。
(文・三ツ村崇志)