完成イメージ。
ICON
- アメリカ航空宇宙局(NASA)は8月上旬、火星での生活を想定した1年間に及ぶ実験に参加してくれるボランティアを募集すると発表した。
- この実験でボランティアが生活する施設は、Iconというテキサス州のテクノロジー企業が3Dプリンターを使って建てているものだ。
- Iconは建築事務所ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)と共同で製作している。
NASAでは現在、火星に住んでいるかのように1年間を過ごしてくれるボランティアを募集している。
火星イメージ。
NASA/JPL
NASAでは火星探査ミッションのシミュレーションに参加してくれる4人のボランティアを採用する予定だ。ボランティアには報酬が支払われる。
実験施設「マーズ・デューン・アルファ(Mars Dune Alpha)」は、Iconと建築事務所ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)との共同製作だ。
製作中のマーズ・デューン・アルファ。
ICON
Iconは、それぞれのユニットを組み合わせることなく、現地でシームレスに建造物を作る企業だ。
同社の3Dプリンター「Vulcan」は、火星の環境を模倣するために何層ものセメントを大量に使用する。この施設は未来のミッションのために、クルーの健康とパフォーマンスに必要な情報を提供し、それらをサポートするものだ。
3Dプリンターで建てた家は人気が高まっている。これらの家はすぐに建てることができ、場合によっては1軒の家を数時間で"プリント"することも可能だ。
2019年には、Iconはサンフランシスコの非営利組織New Storyと提携し、広さ350平方フィート(約33平方メートル)の極小住宅をわずか48時間で完成させた。
完成したマーズ・デューン・アルファには、それぞれのクルー用にカスタマイズ可能な部屋も用意される。
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「宇宙へ進出するという人類の夢に役立つ、できる限り信頼できる類似物を開発したかったんです」とIconの共同創業者でCEOのジェイソン・バラード(Jason Ballard)氏は語った。
広さ1700平方フィート(約158平方メートル)のマーズ・デューン・アルファは、テキサス州ヒューストンのNASAのジョンソン宇宙センターに置かれる。
ジョンソン宇宙センター。
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ジョンソン宇宙センターは"人類の宇宙飛行活動のハブ"と言われている。ここで行われる地上でのシミュレーションの結果が、NASAの実際の宇宙探査に向けた準備に役立つ。
マーズ・デューン・アルファのレイアウトは、プライバシーのグラデーションに沿って考えられている。
マーズ・デューン・アルファのレイアウト。
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クルーのための4つの個室は施設の一番奥に位置していて、処置室やロボットステーションは一番手前にある。寛ぐためのスペースやキッチンは真ん中だ。
建設には、Lavacrete(ラバクリート)という素材が使われている。細かく砕かれた赤い溶岩とセメント、水などから作られた素材だ。
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専用の仕事場、医療ステーション、食料の自家栽培ステーションなども施設内にある。
マーズ・デューン・アルファの天井の高さは一定ではない。
Iconの次世代プリンター「Vulcan」
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これはそれぞれのエリアの固有の体験を際立たせ、空間的な単調さとクルーの疲労を避けるためのデザインだ。
家具は据え付けのものと動かせるものがある。
完成イメージ。
ICON
クルーは日々の自分たちのニーズに応じて、配置換えをすることができる。
照明、気温、音響も調整できる。
火星イメージ。
ICON
これらの機能は、クルーの日々の生活や概日リズム、健康の調整を助けることを意図している。
「人類がこれまでに建設した中で最も忠実に模倣された居住環境だ」とバラード氏は話している。
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火星の居住環境づくりは、この規模の3Dプリンターが月や火星へ行くのと同じく、地球上でも欠かすことのできない人類のツールキットの一部であることを示していると、バラード氏は付け加えた。
ボランティアに応募できるのは、30~55歳の健康なアメリカ人だ。
乗り物酔いをしやすい人は難しいだろう。また、ミッション中は宇宙食のようなものを食べることになると応募者は覚悟しておこう。
(翻訳、編集:山口佳美)