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コロナ禍での経済「再起動」へ2つのシナリオ、行動経済学者に聞く

営業自粛

4度目の緊急事態宣言も再延長が決まり、出口がなかなか見えない。飲食店やイベント業界はどこまで耐えられるのか。

Buddhika Weerasinghe/特派員/Getty Images

デルタ株のまん延によって、新型コロナウイルスが過去最大に広がっている。

8月17日には、8月31日までの予定だった緊急事態宣言の範囲が拡大。9月半ばまで延長されることが決定した。

これで東京は2021年の6割以上が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象期間となる。

医療は守らなければならない。

一方で考えたいのは、飲食業やイベント事業者を始め、コロナ禍で1年半にわたり大打撃を受けてきた業界への対応だ。

「医療か経済か」ではなく、医療を守りながら経済を守る方法を考えなければ、コロナ禍のこの先はない。

前編に続き、政府新型コロナウイルス感染症対策分科会に参画する行動経済学の専門家、大阪大学の大竹文雄教授に話を聞いた。

※取材は8月4日に実施しており、その時の情報に基づいています。

イギリス方式で「全解除」か、ワクチンパスポートか

大竹教授

オンラインで取材に応じる大阪大学の大竹文雄教授。

撮影:三ツ村宗志

—— 経済の回復の目処が見通せない中で、飲食店などの間では時短に協力できない事業者も増えてきました。この先、コロナ禍で経済再生の展望をどう描かれていますか?

大竹文雄教授(以下、大竹):緊急事態宣言中かつ、デルタ株がこれほどまで広がっている今の段階ですぐに経済を動かそうとするのは難しいと思います。論点は、感染が少し落ち着いた状況になったときにどうするのかという点でしょう。

方法は2つあると思います。

1つは、ワクチンの接種率が高まり感染状況が落ち着くまで、飲食店の営業規制などを続ける方法です。緊急事態宣言やまん延防止措置で対策を続け、感染状況が大丈夫だと言えるくらいまで落ち着いた段階ではじめて規制を解除する。

イギリスはこの方式で「全面解除」したわけですね。

もう1つの方法は、フランスやイタリアのようにワクチン接種者を中心に接種済み証や検査証などを導入し、それを条件に飲食店、ライブハウス、イベント、旅行などを奨励していく方法です。

私自身は、後者の方法が望ましいと思っています。

—— いわゆるワクチンパスポートを活用して経済を動かすという方針ですね。なぜ後者が望ましいのでしょうか。

大竹:ワクチン接種率や感染者数などを目標にすると、目標をクリアできない場合にはいつまでも(宣言などを)解除できなくなる問題があります。

後者の方法も、もちろん緊急事態宣言中は無理ですし、希望者にワクチンが行き渡ってからの話にはなります。それでも、飲食店やイベント業界、旅行業界の需要を回復させることができますし、早めにアナウンスしておけばワクチン接種のインセンティブにもなります。

施策の実施時期を示せば、事業計画も立てやすくなるはずです。

そのためには、少なくともワクチン接種済み証をデジタル化して使いやすくすることが必要です。これは、政府がやるべきことだと思います。

—— 接種者・非接種者の間での不公平感をどう是正するかという課題もありそうです。

大竹:「ワクチン接種は努力義務なのだから、その有無で差別をしてはいけない」という議論はもちろん分かります。

ただ、飲食店やイベント業、旅行業の方々は、経済的にずっと苦しい状態にいるわけです。「ワクチンを接種している人と接種していない人の間での差別」という点が焦点になると、今、経済的に苦しんでいる多くの人たちを無視してしまう形になりかねないと思います。

—— 業種によるコロナ禍での経済的格差はかなり深刻ですね。

大竹:ワクチン接種済み証を利用してビジネスを拡大しようという話をすると、企業の利益のためだと批判的にとらえられることが多いんです。

ただ、コロナ対策のために非常に大きな被害を受け続けている人たちがいることを忘れてはいけません。そういう方たちの人権も重視しないといけないと思います。

いずれにせよ、民間ベースでは接種済み証を利用したサービスはどんどん進んでいくに違いないでしょう。日本の場合、紙ベースではありますが既にクーポン券はありますので。

(政府や自治体が)本格的に開始するのは、ワクチンが希望者全員に行き渡ってからになるため、まだ時間的に余裕はあります。体質的にワクチンを接種できない人、どうしてもしたくない人に対しては、検査証明で代替できるしくみを早く設計する必要があると思います。

ワクチンパスポート

ヨーロッパで導入が進むワクチンパスポートだが、海外で抗議デモが相次いでいる通り、批判の声も少なくない(写真はドイツのワクチンパスポート)。

REUTERS/Soeren Stache/Pool

—— インセンティブとしては具体的にどういったことが考えられますか?

大竹: GoToイートやGoToトラベルを再開するときに、接種した人に限定するような形にするのは1つ例としてありますね。

高い接種率をなかなか実現出来ないなら、金銭的インセンティブを強化していくことも考えなければいけないかもしれません。

ただ、「多くの人が接種するなら自分も打とう」と、社会規範で考える人も多いと思います。

そういう意味で、ワクチンを接種したことが目立つように、接種済み証を使える場所を増やしていくことが必要なのではないかと思います。

マスクやソーシャルディスタンスは目に見えますが、ワクチンを接種しているかどうかは外から見えないですから。

考えなければならない「デルタ後」の社会

—— ワクチンが行き渡り、デルタ株の感染がある程度一段落した後、経済はどう進んでいくことになるのでしょうか?

大竹: 2年近く旅行などを我慢していた中で「ワクチンを接種すればOKですよ」などとすれば、経済的に大きなあと押しがなくてもある程度活性化するとは思います。

ただその後、構造的な問題が出てくると考えています。

コロナ禍でオンラインを介したビジネスが進んだため、例えば旅行業界のビジネス需要は恒久的に下がるでしょう。

そういったものに対して、経済的に支援をして不時着させるのか、あるいはそうなることは見通せているのだから各業界で対策をしてもらうのか、という議論になると思います。

—— コロナ前後で、そもそも市場原理が変わってしまった業界もあると。

大竹:そうですね。

それはコロナが終わったとしても元には戻らないでしょう。テレワークもほとんどなかったころから一定数は普通になりましたし。

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