クマール・サダラム(Kumar Sundaram)がインドのハイデラバードからアメリカンドリームを求めて渡米したのは、2001年のことだった。9時5時の仕事をしなくて済むようになることが彼の夢だったのだ。
まずクレムソン大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得し、その後10年ほどコンサルタントとして働いたサダラムだったが、このままコンサルの仕事を続けても、雇われの身から抜け出すのに時間がかかりすぎると考えた。
「社会人になって、自分はフルタイムで仕事するタイプの人間じゃないと確信したのです。だから目指すものは明確でした」
そして2010年、サダラムは会社勤めを続けながら不動産ビジネスに参入することを決意した。しかし、それは思いのほか長く、紆余曲折した道のりだった。
最初にサダラムが手をつけたのは「読書」だった。図書館やバーンズ&ノーブルの書店でさまざまな不動産投資についての本を数カ月かけて読み込んだのだ。
そうして2012年、仕事をしながら貯めてきた2万9000ドル(約319万円)を元手に、ニュージャージー州トレントンにファミリー向けの物件を購入。だが、サダラムはここで最初の失敗を経験する。入居者が家賃を払わないという想定外の問題に直面したのだ。
結果として、その物件はたったの数カ月で売却することになってしまった。苛立ちはあったものの、サダラムはくじけなかった。
次は事業者向けの物件、さらに再びファミリー向け物件の投資にチャレンジした。一度実績ができてからは、友人や家族が力になってくれ、サダラムにお金を貸してくれた。
そうして数年間投資を続けた結果、ついに、より大きな利益を出せる「秘密のワザ」を発見する。「あれが分岐点となりました」とサダラムは振り返る。
その方法とは、差し押さえられた家を購入することだった。
最初にサダラムが抵当流れの物件を購入したのは、フィラデルフィア州のマネイアンク地区の競売だった。
「すでに不動産投資をしていたので、ある程度知識はありました。当時、その物件は18万5000ドル(約2035万円)の評価がついていたので、競売に参加して落札して……でも実際に支払ったのは13万5000ドル(約1485万円)でした。
つまり、購入日だけで5万ドル(約550万円)の利益を出したってことですよね。あの日それに思い至ったことで、お手頃価格になっている物件を見つけることがコツなのだと理解しました」
しかし、すぐ売って利益を出して……と物件を転がすことが目的ではない。サダラムは「BRRRR(buy, rehab, rent, refinance, repeat)戦略」をとることにした。
つまり、物件を買ったら、リフォームし、賃貸に出し、ローンを借り換えて、出たキャッシュでまた他の抵当流れの物件を買う。これを繰り返すうちにさまざまな物件のポートフォリオができあがり、毎月収入が入ってくるという仕組みだ。
Insiderが確認した所有・賃貸物件の書類によると、サダラムは現在50を超えるファミリー向けの物件を所有し、またシンジケート経由で600室以上を共同所有している。これでコンサル時代と同じだけの年間収入を得ているという。
こうして、サダラムは2018年8月15日、フルタイムの仕事を辞め、彼のアメリカンドリームを実現した。
元手がなくても不動産投資を始める3つの方法
「元手になるキャッシュがある訳でもないのに、不動産投資をするなんて無理じゃないのか……」とひるんでしまうかもしれないが、元手がそんなになくてもやり方はある、とサダラムは言う。
まず1つ目に、将来不動産投資をしたいと思っているなら、サダラム同様、使えるお金がある家族や友人と協力するのがオススメだという。銀行のような第三者よりも、そういった人たちの方が自分を信頼してくれる可能性が高いからだ。
「固定利率(利率を一定にし、景気などで変動させないこと)を提案してお金を借りるのがポイントです。それが一番安くつき、一番いい条件になるでしょう」
友人や家族に示せる実績がない場合、その案件についてのリサーチ内容や条件について見せることで説得するのがいいだろう。
2つ目のやり方は、ハードマネーローン(銀行以外の投資家や貸金業者から資金を調達すること)だが、自力で調達するよりも高くつく可能性が高い。
いい内容の取引であれば、資金はおのずとついてくる、とサダラムは言う。逆に、将来性が見えないケースでは、プロはリスクを冒してまで資金を出したがらないという。
「ハードマネーローンで資金を調達できない場合は、説得力のある内容になっていないということです。相手がお金を貸すのに慎重になってくれることは逆にいいことなのです。プロを説得できないなら、やらない方がいいのですから」
3つ目に、投資家同士でジョイントベンチャーを作る方法がある。ある物件についてすでに取引を考えている人がいて、既に審査またはデューデリジェンス(価値やリスクを調査すること)を終えており、リフォームや物件の管理をしようとしている場合、他の誰かが購入資金を提供できれば、協力して利益を分け合うというスキームが可能になる。
「いい案件なら必ず資金を出してくれる人がいます」とサダラムは言う。
もっと基本的なこととして、不動産を前にして怖気づくことのないように、徹底的にリサーチをするべきだとサダラムは言う。また、経験がある人のところへ行って話を聞いたり協力を仰いだりするのもお勧めだという。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)