企業経営陣のなかでも、最高マーケティング責任者に期待される役割は大きく、一方でその評価は非常に厳しい。
Getty Images
ボストンに本拠を置く広告代理店ボートハウス(Boathouse)と金融・情報サービスのGLGが実施した最新の調査によると、企業の最高マーケティング責任者(CMO)の在職期間は短くなり続けていて、その理由のひとつは、最高経営責任者(CEO)の信頼を得られていないことだという。
同調査は、ヘルスケア、テクノロジー、銀行、小売り、消費財など13業界について、売上高25万ドルから10億ドル以上の米企業のCEO150人を対象に行われた。
ボートハウスのジョン・コナーズCEOはこう説明する。
「CMOの離職率をテーマにした調査はほかにもありますが、今回の調査は、CEOの視点から離職の理由を突き止めることを目的としました」
調査結果では、CEOの意見として「CMOがビジネスニーズを理解していない」「マーケティング業界の専門用語を並べ立てる」「自分のキャリアにこだわりすぎ」などが紹介されている。
CMOの役割について、CEOは以下のように認識しているようだ。
- CEOの86%は、CMOが経営上の重要な意思決定をリードできると考えている
- CEOの63%は、CMOがパフォーマンス重視のスタンスで仕事をしていると考えている
- CEOの47%は、CMOが負う最も重要な責務はビジネスを成長させることであって、ブランド開発や企業戦略の策定ではないと考えている
上の調査結果からわかるように、CEOはCMOが重要な役割を担っていると考えている。しかし、それはCMOを信用していることとイコールではない。
CEOのうち、意思決定にあたる経営チームのなかで最も信頼できるメンバーとしてCMOを選んだのはわずか4%だった。一方、およそ60%のCEOは最高財務責任者(CFO)を最も信頼していると回答している。
さらに、CMOに対して非常に信頼を寄せていると答えたCEOはわずか34%、CMOがビジネスの成長を実現してくれると答えたのはさらに少なく32%にとどまった。
こうしたCEOの不信感は、CMOは予算を使うばかりで具体的な成果を出してこない、そんなCEOの認識がCMOへの不信感につながっていると、あるマーケティング関係者(元メディア企業のCMOで現在はテック企業のマーケティング部門にいる人物)は語る。
しかも、調査に応じたCEOたちの回答を見ると、CMOは自身の見せ方にも失敗しているようだ。
CEOの58%は、マーケティング環境の複雑さを認めながらも、CMOがマーケティング業界の専門用語を使いすぎるので、その仕事がどんなふうに結果につながるのかが見えてこないと語っている。
また、CMOは何より自身の利害を優先するもの、とCEOたちは考えているようだ。
CEOの56%は、CMOがCEOや取締役会より自身のために仕事をしていると回答。44%のCEOは、CMOが企業の長期的なビジョンの実現を考えて仕事をしていないと答えている。
市場調査会社フォレスター(※本調査には関与していない)のジェイ・パティシャルは、調査結果に見られるようなCEOとCMOの分断について、CMOに課された役割がそもそも矛盾に満ちていることが大きな原因だと指摘する。
「他の経営陣がそれぞれにビジネスの成長とコスト削減を同時に進めようとする一方で、CMOはマーケティングの労力もコストも抑えながら、より多くの顧客を獲得するという無理筋のタスクをまかされています。
より少ないリソースでより多くのバリューを生み出さなくてないけない、これはCMOにとってパラドックスそのものです」
[原文:A new report shows just one-third of CEOs trust their marketing chiefs to grow the business]
(翻訳・編集:川村力)