Brendan McDermid TPX IMAGES OF THE DAY/Reuters
- ニューヨーク・タイムズは、アマゾンが売上高でウォルマートを追い抜いたと報じている。
- アマゾンはその巨大さのために、これまで以上に反トラスト法違反を巡る厳しい視線にさらされることになるだろう。
- それでも、ほとんどの業界ウォッチャーは、これはアマゾンがようやく達成したマイルストーンに過ぎないと捉えている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)が収集したデータによると、アマゾン(Amazon)はウォルマート(Walmart)を上回る規模になった。
NYTが引用した金融調査会社ファクトセット(FactSet)の推計によると、2020年6月から2021年6月までに消費者が使った金額は、アマゾンが6100億ドル(約67兆円)、ウォルマートは5660億ドル(約62兆円)だった。
アナリストたちは以前から、アマゾンの売上高は、いずれウォルマートを上回るだろうと予測していた。アメリカ国内での売り上げは、まだウォルマートがアマゾンを上回るが、NYTはJPモルガン(JP Morgan)の推計を引用し、それも2022年には逆転すると指摘している。パンデミックがオンラインショッピングへのシフトを促したことにより、アマゾンの売上高増加傾向が加速しているようだ。
Insiderはアマゾンとウォルマートにコメントを要請したが、回答は得られていない。
アマゾンは長い間、自らを小さく見せようとしてきた。創業者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は、2020年のアメリカ議会での証言で、ウォルマートはアマゾンの2倍の規模だと述べた。アマゾンは自社が小売業のエコシステムで果たしている役割はごくわずかなもので、「アメリカの小売業売上高の4%を占めているに過ぎない」と述べたと、以前Insiderが報じている。
シアトルに本部を置くアマゾンは、売上高でウォルマートを上回ったことで、これまで以上に反トラスト法の適用を受けやすくなる可能性がある。ワシントンD.C.のカール・ラシーン(Karl Racine)検事総長は現在、アマゾンがオンラインで商品の価格をコントロールする独占企業であると主張して、同社を訴えている。連邦取引委員会の新トップであるリナ・カーン(Lina Kahn)は2017年、反トラスト法は時代遅れでアマゾンに対応できないという論文を書いている。
反トラスト法をめぐるさまざまな騒動に見舞われたものの、アマゾンの成長は減速することはなかった。電子商取引の新興企業ファブリック(Fabric)のファイサル・マスード(Faisal Masud)CEOは、2002年から2011年までの「負け犬の成長期(underdog growth years)」にアマゾンで働いていたことがある。彼は、アマゾンの急成長を支えたのは、サードパーティによる販売の優位性、サブスクリプションモデルであるアマゾンプライム、ラストワンマイルの物流能力であると述べている。
「ウォルマートが追いつく方法はないと思う」
マスードは、ウォルマートプラス(Walmart+)のような会員向けサービスでアマゾンのプライムを追うのではなく、実店舗のライバルであるターゲット(Target)から学び、「独自の勝者になる」べきだという。
「彼らにはすばらしい食料品ビジネスがあり、すばらしい薬局の取り組みがある」と彼は言う。「ウォルマート・プラスがやっていることは、気休めに過ぎない。彼らは世界一のアマゾンに対抗できるような配送ネットワークを持っていない。ターゲットはもっとよい仕事をしている。(即日配送サービスを展開する)シプト(Shipt)を買収したのはすごいことだ」
一方、金融情報会社ムーディーズ(Moody's)のチャーリー・オシェア(Charlie O'Shea)バイスプレジデントがInsiderに述べたところによると、ウォルマートは「どのような基準で見ても、トップクラスの世界的小売企業であることに変わりはない」という。
「ウォルマートの2021年のオンライン売上予測が、全世界で750億ドル(約8兆円)となっていることは、同社にはまだ勢いがあることを示している」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)