米シスコシステムズ(Cisco Systems)のチャック・ロビンス最高経営責任者(CEO)。
Mike Blake/Reuters
米ネットワーク機器大手シスコシステムズ(Cisco Systems)のチャック・ロビンス最高経営責任者(CEO)は、クラウドビジネス拡大の最初の大波に乗り遅れたことを認めたうえで、次の大波を逃さないよう万全を期す考えを明らかにした。
ロビンスCEOはアナリスト向けの決算説明会で次のように発言した。
「(クラウドビジネスの)最初の移行期(という好機を)逃した私たちは、次にやって来るアーキテクチャの移行期に備えたい。チームの素晴らしい仕事のおかげで、私たちはいま良いポジションにいると考えています」
シスコは8月18日、2021年第4四半期(同社の会計年度では5〜7月)の業績を発表。売上高は前年同期比8%増の131億3000万ドル(約1兆4400億円)、通期(2020年8月〜2021年7月)では1%増の498億ドル(約5兆4800億円)。市場予想をわずかに上回った。
第4四半期については、ソフトウェア事業の売上高が前年同期比7%増の40億ドル(約4400億円)、主力のインフラ事業の売上高が同13%増の75億5000万ドル(約8300億円)だった。
企業が独自にインフラを購入してオンプレミスでネットワークを運用する代わりに、クラウドプロバイダーに料金を支払ってネットワークをホストするケースが増えている。
そうした世界の変化に対応するため、ロビンスCEOは、従来のルーター製品やスイッチの提供にとどまらない成長を目指し、ビジネスの変革に取り組む方針を示した。
変革を実現できるかどうか、その一部はソフトウェア事業への投資にかかっている。実際、シスコの経営幹部は18日の決算説明会で、ソフトウェア事業の売上高の伸びを強調している。
ただ、シスコはそれだけでなく、フェイスブックやグーグルのように巨大なデータセンターを運営し、企業向けにより大規模なインフラ(「WebスケールIT」と呼ばれる)を提供したいと考えている。
ロビンスCEOは決算説明会で、クラウド普及の最初の波に乗り遅れたことを認めただけでなく、すでに次の展開を見据え、WebスケールITを運用する企業向けに伝送速度400ギガビット/秒の大容量ネットワーク機器の販売をアグレッシブに進めていると語った。
「WebスケールIT」は、アマゾンやマイクロソフト、グーグルのような大手クラウドサービスプロバイダーをはじめとして、コンピューティングパワーなどの膨大なシステム資源を必要とする企業(あるいはそのインフラ)を指す専門用語。
クラウドコンピューティングやモバイルアプリの市場拡大につれ、すべての基盤となるデータセンターへのニーズは急激な増加を続けており、当然のことながらそれを支える堅牢な(データセンター向け)ハードウェアへのニーズも高まっている。
決算説明会でアナリストの質問に答えたロビンスCEOは、過去1年間で400社以上のWebスケール企業と契約を締結したと実績をあげたが、具体的な顧客企業の名は明かさなかった。
また、2019年に発表したデータセンター向けの大容量光ケーブルの販売額が、2021年第4四半期(5〜7月)に前年同期比で160%増という大幅な伸びを示したことも明らかにした。
「今回の決算説明会に向けて、私はこの5、6年間(に開催した説明会)で自分が話したことをふり返ってみました。私は常に、WebスケールITについて話すべきときが来たら、ぜひその話をしたいと言い続けてきました。いまがまさにそのときだと思っています」
(翻訳・編集:川村力)