大型イベントDreamforceで聴衆の前に立つセールスフォース共同CEOのキース・ブロック氏。
Business Insider
顧客獲得のためにライブイベントが活用できない中、ジャーナリストを雇ったり、動画やポッドキャストなどのブランデッドコンテンツを制作する部門を立ち上げたりする企業が増えている。
例えばセールスフォースでは、スクリプトライターや放送プロデューサーを50名も雇い入れ、制作スタジオを立ち上げた。Salesforce+という新規のストリーミングサービスを9月にも開始する予定だ。
6月、ボストン コンサルティング グループ(BCG)は「MITスローン・マネジメント・レビュー(MIT Sloan Management Review)」で編集長を務めていたポール・ミケルマン (Paul Michelman)を、ヘッドオブコンテンツ(コンテンツ担当の責任者)として迎え入れた。
また、ゴールドマン・サックスがコロナ禍のさなかに始めた動画シリーズは、資本市場の動向や経済といった課題について、幹部がインタビューを受けるというもの。ゴールドマン・サックスではこのたびグローバルのヘッドオブコンテンツを採用しており、インタビュー番組やポッドキャストに加え、コロナ感染が広がる前から作っていた週刊のニュースレターも発行している。
ブランデッドコンテンツは、コロナ禍でライブイベントが行えない中、マーケティングに空白期間を作らないためのものだった。しかし、顧客の獲得や維持に向けた戦略強化の取り組みとして、デジタルイベントと組み合わせて継続するB2B企業もあると業界の専門家は言う。
例えばセールスフォースがコロナ禍の最中に始めた「Leading through Change」シリーズでは、約7億回もの再生回数を記録した。そのためSalesforce+に投資する意思決定がなされ、今年のDreamforceでは単にカンファレンスをストリーミングするだけでなく、100時間を超える動画が制作されたのだ。
PR会社ホットワイヤ(Hotwire)のグローバルCEOであるヘザー・カナハン (Heather Kernahan) は、企業は、コンテンツとライブイベントやバーチャルイベントを組み合わせてマーケティング活動を継続し、その中でARやVRといった機能を使っていくことになるのではないかと見る。
「企業がオーディエンスにリーチする方法として、ソーシャルメディア向けのコンテンツを制作するようになり、Snapchat、TikTok、Facebook、Clubhouseなどの活用も進むと思われます」
ホットワイヤのクライアントにアドビ(Adobe)がある。アドビでは毎年開催していたアドビサミット(Adobe Summit)を、140本以上の動画配信からなるバーチャルイベントに切り替えた。
理論上、自前でコンテンツを制作してコントロールすれば、オーディエンスに関するデータを活用しながらコンテンツを改変し、最大限に活用できる。
「企業は自分たちの資産に対し、これまでとは違う考え方を持つようになるでしょう。Netflixのようなダイナミックな動画ライブラリを持つことに対し、ホームページを持つことの意義は何かといったようなことです」と、デロイトデジタルのチーフデザインオフィサーであるネルソン・クンケル(Nelson Kunkel)は言う。
しかし、コンテンツ部門を立ち上げるには何百万ドルもの費用がかかる。オーディエンスを獲得できる保証もない。
それでもセールスフォースやBCGのような会社は賭けに出る。フライシュマン・ヒラードのシニアパートナー、エフライム・コーエン (Ephraim Cohen) が言うには、こうした会社の顧客企業は専門性の高い分野にいるため、自分たちが買おうとする製品やサービスに関するコンテンツを積極的に探しているからだ。
(翻訳:カイザー真紀子 、編集:大門小百合)