決済回数・加盟店数を徐々に伸ばすスマホ決済のPayPayは、ついに中小店舗向けの決済手数料有料化に踏み切る。
出典:PayPay
スマホ決済サービスの「PayPay」は、中小規模の店舗などに現状無料で提供している決済手数料の改定と加盟店向けの新サービス、新キャンペーンを発表した。
発表された主な内容は以下の通り。
加盟店向け
- 10月1日から中小規模店舗の決済手数料が1.98%に。
- 加盟店向けツール「PayPayマイストア」に月額1980円の「ライトプラン」が登場
- ライトプラン契約店舗は決済手数料を1.6%に減額。
- ライトプラン契約店舗には、10月から最大6カ月間の売り上げの3%を上乗せして振り込み(振込上限は100万円)
消費者向け
消費者向けの還元キャンペーンも開催する。
出典:PayPay
- 9月13日〜11月28日、QRコードを設置する対象店舗でPayPay残高またはヤフーカード、PayPayあと払いを使って支払うと、最大20%還元(期間中の還元上限は1000円相当)
- 8月25日〜10月31日、PayPayに新規登録して本人確認を完了すると、500円分のPayPayボーナスを付与
- 9月13日〜10月31日、PayPayの「紹介コード」を発行し、PayPayを利用したことがないユーザーがそのコードを入力後に1000円以上決済すると、紹介者に500円(最大10人まで)、被紹介者にも最大500円のPayPayボーナスを付与。
無料期間終了後も、決済手数料は“業界最安値”をアピール
決済手数料は通常時1.98%、後述するマイストア機能のライトプラン加入で1.6%になる。
出典:PayPay
今回の大きなニュースは、いままで無料だった中小規模店舗向けの決済手数料が有料化することだ(初期費用や月1回の振込手数料は従来通り0円)。
通常時は1.98%、加盟店と消費者を結ぶ「マイストア」機能のライトプラン(月額1980円)を契約すると1.6%になる(例えば、ユーザーがPayPayで1000円の買い物をすると、加盟店には980円もしくは984円が振り込まれる)。
決済手数料2〜3%台の多い中小店舗向けのキャッシュレス決済の中で、PayPayは最安値とうたう。
出典:PayPay
この数字は「業界最安値」であるというのがPayPayの主張だ。
PayPayの調査によると、他のQRコードなどのスマホ決済では2.45〜3.25%。その他の決済手段だと3.24〜3.25%が相場という(現実にはより高い場合も存在する)。
PayPayはもともと、無料期間を9月末までとアナウンスしており、すでに加盟店の中には無料期間の終了に合わせるか先行する形で、PayPayの利用を停止したり、独自のポイントの付与を取りやめるケースも出てきている。
加盟店にキャッシュレスのメリットをどこまで訴求できるか
PayPayは単なる決済方法だけではなく、加盟店のDXに寄与する。
出典:PayPay
ここでポイントとなるのが、店舗側は決済手数料を支払ってまでPayPayを導入するメリットがあるのか、ということだ。
代表例で言えば、まずは集客だ。PayPayがさまざまなキャンペーンを実施することで、還元を得るため、または還元されたPayPayボーナスを使うために消費者は動く。加盟店であれば、その恩恵を受けられる。
次に効率化だ。決済をデジタル化することで、収支計算の手間を省ける。さらには、お釣りの準備の手間(最近では銀行での両替には一定の手数料がかかる)や、手元の現金が必要なくなる(あるいは少なくなる)ため防犯などリスク低減にも役立つ。
顧客とつながる手段となる「マイストア」。
出典:PayPay
そして、第3のメリットが、従来は紙のチラシやクーポンが担ってきたマーケティングツールとしての側面だ。
それがPayPayにとってはマイストア機能であり、手数料の有料化と同時に月額1980円の料金が発生する「ライトプラン」だ。
ライトプランに加入すると、PayPayアプリのマップ上からアクセスできる「ストアページ」を作成し、クーポン(原資は加盟店負担)を発行できる。また、よりユーザー属性を絞ったクーポン配信や、その店舗の決済と連動するスタンプカードの発行機能も予定されている。
PayPayとしては、事業継続のために必要な決済手数料の有料化に踏み切りつつも、ユーザーへの還元キャンペーンに加えて、マーケティングに役立つ集客ツールを提供することで、加盟店離れを最小限にする方針だ。
(文・小林優多郎)