8月20日の記者会見に臨む小池百合子都知事。
撮影:三ツ村崇志
8月20日、東京都では新たに5405人の新型コロナウイルス陽性者が報告された。
このうち、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は257人。
また、20日の段階で東京都の定義における重症者数は前日から1人減り、273人だった。
なお、8月18日付の厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料1によると、集中治療室(ICU)に入室している患者も含めた国の定義における重症者数は、8月10日の段階で947人。確保されている病床の78.5%が埋まっている。東京都はこうした状況を受け、中等症病床の一部を重症者用に転換する方針も示した。
小池氏「今以上に重要な時期はない」
都の感染状況。新規陽性者数の7日間平均は、過去最多となっている。
出典:東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年8月20日)
8月20日、小池百合子都知事は定例の記者会見のなかで、感染状況の深刻さと感染対策の必要性を訴えた。
「今以上に重要な時期はないのではないでしょうか。まさに災害級です。
これまで感染していない人も職場や学校、家庭など、身近なところで感染している人が増えてきています。デルタ株というのはもうみなさんのすぐ隣にいるという意識を持っていただく。そのことが行動変容につながっていくのではないでしょうか。
どうやって抑え込むか、人と人との接触を可能な限り減らしていけるか、他人事ではなく自分ごととしてお考えいただきたい。
止むを得ず外出する場合は、人数、頻度を半減して欲しい。お願い致します」
専門家「災害時と同様。自分の身は自分で」
変異ウイルスの割合を示している。L452R変異株がいわゆる「デルタ株」。東京都では8月8日までの段階で、すでに約9割がデルタ株に置き換わっている。
出典:東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年8月20日)
8月20日の都知事の定例会見の直前には、東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議が開かれた。
国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は深刻な現場の様子を語る。
「(新規陽性者数の7日間平均の)増加比は約118%で依然として高い水準で増加し続けています。医療提供体制は深刻な機能不全に陥っており、現状の新規陽性者数が継続するだけでも救える命が救えない状態となります。
もはや災害時と同様に、感染予防のための行動を取ることで、自分の身はまず自分で守ることが必要です」
また、東京都医師会の猪口正孝副会長は警戒感を隠さない。
「検査を受けていない潜在的な陽性者が増加している可能性があるため、症状がある場合はかかりつけ医や発熱相談センターに相談して早期に検査を受ける必要があります」
東京都の検査陽性率が約24%と、依然として高い値を推移していることを受けたものだ。
西田氏は、年代別に夜間の繁華街滞留人口を調査している。現状の重症化率の高い中高年層が占める割合が高い。
出典:東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年8月20日)
また、都知事の記者会見に同席した、繁華街の夜間の滞留人口を分析している、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は次のように述べる。
「緊急事態宣言の発出後、夜間滞留人口については35%減少してきています。50%の減少を目指すということで取り組みをしていただいていますが、あともう一歩、人流の抑制が必要な状況です。
私たちのデータは『レジャー目的』でそこに滞留している人をカウントしているわけです。その多くを重症化のリスクが高い中高年の人が占めているということが判明しています。
ご自身と周囲の大事な人たちの命と健康を守るために、中高年の方々には一層協力を頂きたい」
とりわけ重症化リスクの高い中高年層の対策意識を引き上げるよう訴えている。
小池都知事、ワクチンパスポートも示唆
日本全体のワクチン接種数と接種率。
出典:首相官邸
頼みの綱となっているワクチン接種は、8月19日の段階で少なくとも1度接種をした人の割合が約40パーセントを越えた(2回接種済は33%)。
ただし、このままのペースで進んだとしても、7〜8割の人にワクチンが接種されるのは11月頃になる。
海外を見ると、高いワクチン接種率を達成しているイギリスやアメリカなどでは、感染者数や死者数が増加している傾向も見えている。
いくらワクチンの接種率を高めても、経済を再開させる上で、一定数の感染拡大が起こりうることは考えておかなければならない。
仮に今のデルタ株の感染状況が抑えられたとして、東京都では一体この先のどのような出口戦略を見据えているのか。
記者会見の中で、出口戦略について質問が出ると、小池都知事は次のように述べる。
「各国が試行錯誤でやっていることを参考にしなければならない。
どこで解禁するのが経済にとって良いのか。結局またぶり返すことで、医療が厳しくなる状況を繰り返すのかと、なかなか判断が難しいところではあります。
ただ、どこかで出口は見つけていかなければならないし、そういう意味では世界各国が今ワクチンパスポートをいろんな批判がありながらやっています。みんなでそれをやっていかなければプラスにならないね、ということを共有することは重要だと思っています。
いずれにしても武器であるワクチンの接種は極めて重要で、4割で駄目だったら5割〜 6割と今やっているところです。みずからが受けることが社会全体へのプラスであるという認識をお持ちいただければと思います」
具体的な出口戦略は回答しなかった形だ。
なお、東京都では、8月27日〜10月8日の期間、渋谷区立勤労福祉会館に若者を対象としたワクチン接種会場を開設。16歳以上、39歳以下の都内在住、在勤、在学で接種券・身分証を持っている人であれば、予約なしでファイザー製のワクチンを接種することができる。
(文・三ツ村崇志)