アマゾンのクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で最も著名な経営幹部が突然の退社を発表。社内が揺れている。
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アマゾン在籍23年のベテラン、チャーリー・ベルは、ジェフ・ベゾスから最高経営責任者(CEO)の座を引き継いだアンディ・ジャシーと並ぶ、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の最重要人物のひとり。
8月上旬、ベルの突然の退社が判明し、関係者の間に衝撃が走った。
ベルはジャシーの後任CEOの最有力候補と目され、AWSの核とも言えるユーティリティコンピューティングサービス担当のシニアバイスプレジデントという重責を担っていた。
AWSの関係者2人からの情報によれば、アマゾン経営幹部の間では、ベルの退社は他社の経営幹部に就任するためと考えられている模様だ。
一方の関係者は、ベルが他社のCEOに就任すると言い、もう一方の関係者は、ベルがとある大手テック企業の経営幹部(必ずしもCEOとは限らない)入りすると話す。
本記事の公開時点では、ベル本人もしくはAWSからのコメントは得られていない。
Insiderがベルの元同僚数人に取材したところ、ベルが他社でのトップあるいは幹部就任の道を選んだ理由のひとつは、1カ月あまり前に正式移行が実施されたAWSの経営幹部人事で、ジャシーの後任CEOにアダム・セリプスキーが選ばれたことだろうと口を揃えた。
ベルがアマゾンにジョインしたのは1998年の上場直後。ベゾス前CEOを含む同社の最高幹部チーム「Sチーム」に名を連ねた。
ジャシーからセリプスキーへの権限委譲が行われてわずか数週間の8月9日、セリプスキーはアマゾンのバイスプレジデント向けメールで、ベルが退社する予定であることを伝えた。退社後の身の振り方については特段の言及がなかった。
セリプスキーは上記メールでこう書いている。
「チャーリーはアマゾンにとって最も重要ないくつもの取り組みに大きな役割を果たしてきました。会社全体に、文字通り数十年の長きにわたってその貢献が浸透してきたことは、皆さんご存知のところと思います」
多くのアマゾン関係者が驚きをもってベルの退社を受けとめた。ベルが退社を公式に社内報告したのは、最終出社日だったという。取材に応じた関係者は「完全にショックでした」と率直な感想を口にした。
複数の関係者によれば、セリプスキーが2016年にアマゾンを離れてデータ可視化ツールのタブロー(Tableau、現在はセールスフォース傘下)CEOに就任する以前、ベルとはAWSの同僚どうしだった。
セリプスキーがAWSに復帰してCEOに就任したいま、仮にベルがそのまま会社に残っていれば、元同僚が直属の上司になっていたことになる。
目下、過去最大規模の経営陣刷新を進めるアマゾンだが、ここまでに退社を決めたなかでベルが最も著名な経営幹部であることは間違いない。
ただし、著名な経営幹部が抜けることそのものは初めてではない。過去1年半の間にアマゾンの頭脳とも言うべきバイスプレジデント級の経営幹部が大量に流出している。
アマゾンの複数の関係者は、ベルの退社はAWSの経営に劇的な影響をもたらす可能性があると指摘する。
AWSの元経営幹部はInsiderの取材にこう語っている。
「チャーリーの退社は他の誰が抜けるより大きな問題なのです。アンディ(・ジャシー)が本体のCEOに転じたことよりも。なぜなら、チャーリーはエンジニアリング部門のハートであり、魂であるからです」
(翻訳・編集:川村力)