ギリシャでは2021年8月、1987年以来最悪の熱波に見舞われ、摂氏44度に達した。イタリア、シチリア島で摂氏51度を記録し、これはヨーロッパ史上最高気温と考えられている。写真は2021年8月12日にローマで撮影。
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- アテネでは致命的な熱波に立ち向かうために、ヨーロッパ初の「最高熱波責任者:CHO」を任命した。
- アテネ市長は、この暑さが「経済に多大な影響力を持つ観光客」を脅かしていると述べた。
- アメリカのマイアミでは、2021年5月に世界初のCHOを任命し、街を涼しくする方法を模索している。
この夏、アメリカのフロリダ州マイアミ、ギリシャのアテネ、シエラレオネのフリータウンの各当局は、地域のビジネスや観光を脅かす致命的な熱波に対抗するために「最高熱波責任者(Chief Heat Officer):CHO」を採用すると述べた。
3都市の市長は、大西洋協議会(Atlantic Council)による「熱波レジリエンス同盟(Extreme Heat Resilience Alliance)」の一環として、この新たな役職を導入する。
これらの3都市の熱波は「都市のヒートアイランド」に分類されており、都市の設計や構造によって熱が吸収して再放出するため、最近の記録破りの気温上昇に見舞われている。
ロイターによると、アテネでは2021年の夏の初めに北部で発生した山火事により住宅が焼失し、気温は摂氏44度を記録した。8月11日にはイタリアのシチリア島にある小さな町で摂氏51度を記録した。これはヨーロッパでの観測史上で最高の気温だという。
アテネのコスタス・バコヤニス(Kostas Bakoyannis)市長は7月、「アテネをより涼しく、より環境に優しくするビジョンがある」と述べている。
「アテネにおける気候変動とは、住民にとっても、経済的に重要な観光客にとっても、より頻繁に発生する危険で極端な高温を意味する」
大西洋協議会の1部門であるエイドリアン・アルシュト・ロックフェラー財団レジリエンス・センターのシニア・バイス・プレジデント兼ディレクターであるキャシー・バウマン・マクロード(Kathy Baughman McLeod)は、猛暑の影響は健康問題に留まらないとInsiderに語っている。
「空港や地下鉄は閉鎖され、飲食店は厨房で働く人が暑さにさらされるため営業ができない。学校も暑すぎて閉鎖され、親は子どもの面倒を見るために仕事を休まなくてはならない」と彼女は言う。
「つまり、多大な影響があり、見えないコストもあるということだ」
ロイターによると、ギリシャ政府は観光客や市民に対し、不要な仕事や旅行を避けるよう警告している。ギリシャで観光客に最も人気のある遺跡であるアクロポリスでさえ、暑さのために閉鎖を余儀なくされた。
ギリシャ全土が過去数十年で最悪の熱波に見舞われる中、アテネ北部の郊外では山火事が発生し、近くの住民には避難指示が出された。
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古代都市アテネでは現在と未来の暑さに対処しようと、エレニ・ミリビリ(Eleni Myrivili)を最高熱波責任者に任命した。ヨーロッパで初の「CHO」だ。
ミリビリは「都市の気温を下げ、住民やそのコミュニティを守るためのアクションを起こす政策立案者を支援する」ことを楽しみにしているとプレスリリースで述べている。
「地球温暖化については何十年も前から議論しているが、暑さについてはそれほど議論してこなかった」と彼女は付け加えた。
CHOという役職が最初に登場したのは2021年5月、アメリカのフロリダ州マイアミ・デイド郡でジェーン・ギルバート(Jane Gilbert)が熱波に関連した死亡を防ぐ任務に就いたときのことだった。
ギルバートは、その方法としては冷却センターへの投資、屋外で働く人々の保護の強化、住宅環境の改善などが考えられるとガーディアンに述べていた。
大西洋協議会によると、都市部の極端な暑さは気候危機に起因する致命的な脅威の1つだという。しかし、熱波は目に見えるハリケーンや津波に比べて注目度が低く、対策が難しいとされている。
CNNによると、ワシントン大学が2021年8月19日に発表した研究論文で、極端な暑さに起因する死亡者数が1980年から2016年にかけて74%増加したことが明らかになったという。暑さに起因する疾患は予防可能であるというアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスにもかかわらず、アメリカの太平洋岸北西部で発生したヒートドームにより、この夏だけで数百人が死亡した。
「残念ながら、アテネが特別なわけではない」とバコヤニス市長は言う。
「ヨーロッパや世界各地の都市にとって、暑さは緊急事態だ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)