コロナ禍で大きく変化した働き方や事業のあり方。リモートワークが浸透する一方で、生産性やマネジメント、セキュリティなどの課題も浮き彫りになった。また、リモートワークが難しい職種での導入も課題となっている。教育分野もリモートワークが難しい職種だろう。
そんななか、リモートワークやリモート授業を導入した学童保育がある。IT×学童保育を福岡で実施している「TECH PARK(テックパーク)」だ。運営する佐々木久美子氏に、対面が必要だと思われていた学童保育でリモートワークを導入した難しさとそれをどう乗り越えたのか、聞いた。
デジタルデバイスを活用して、自分の思いを形にしてアウトプット
佐々木久美子(ささき・くみこ)氏/株式会社グルーヴノーツ 代表取締役会長。プログラマー、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーを経て、2004年、県内ベンチャー企業取締役就任。2011年7月会社設立、代表取締役社長を経て、株式会社グルーヴノーツ代表取締役会長に就任。2016年4月からIT学童保育「TECH PARK」の運用開始。
九州一の繁華街、福岡市天神。その中心部に所在する「TECH PARK」は、「テクノロジーと遊ぶアフタースクール」をコンセプトに掲げるIT学童保育だ。アフタースクールに加えて、春・夏・冬の長期休みにはシーズンスクールも開催している。
運営するのは、量子コンピューターやAIを活用した事業を手掛けるスタートアップ「グルーヴノーツ」の教育事業部門だ。「グルーヴノーツ」の会長で「TECH PARK」担当役員を務める佐々木 久美子氏は、「もともとは、従業員の子どもを預かる福利厚生から始まりました」と成り立ちを語る。
「私自身、以前から子どもを育てながら働いており、常々、働く親の子育てを助ける仕組みがあれば助かるのに、と考えていました。なぜITやテクノロジーを教える学童保育を?とよく聞かれるのですが、元々、グルーヴノーツはテクノロジー企業。従業員が子どもたちにプログラミングなどを教えたり、なかには3Dプリンターを持ってきて工作をさせたり、テクノロジー寄りのアクティビティを自ずと行うようになったんです」
当初はグルーヴノーツ従業員の子どもだけを預かっていたが、徐々に従業員の知り合いの子どもたちも預かるようになる。そのうちに、「テクノロジー教育を施す学童保育がある」と話題となり、本格的な事業へと発展したという。2016年のことだ。
提供:TECH PARK
折しも、2020年からプログラミング教育が必修化された。現在、「TECH PARK」が注目されている理由のひとつとして「影響は少なからずある」と語る佐々木氏。しかし、「TECH PARK」でのIT教育の目的は、学校のそれとは少し異なるという。
「教科書で習う英語と実際に会話ができる英語は違います。『TECH PARK』は、後者。コンピューターやゲームなどテクノロジーが好きな子の“好き”という気持ちを更に伸ばして、子どもの個性を育てたい。テクノロジーによって、色々と出来ることが広がることを教えるイメージです」
「TECH PARK」での授業やプログラムは「アクティビティ」と呼ばれ、具体的には、ゲームやアプリなどをプログラムする「プログラミング」、タブレットなどで絵画作品をつくる「デジタルアート」、3Dプリンターを使って工作する「デジタルファブ」、コンピューターグラフィックスを制作する「CG」の中から自分が好きなものを選び学ぶ事ができる。共通するのは、デジタルデバイスを活用して、自分の思いを形にしてアウトプットすること。目指すのは、創造の中で見つかる自己表現としてのテクノロジー教育だ。
緊急事態宣言を受けてリモートワークを導入
学童保育という性質上、基本的には対面での預かりとアクティビティが前提だった。しかし、コロナ禍では、方向転換を迫られた。2020年3月の全国一斉休校時には感染対策を徹底して預かりを続けたが、その後の緊急事態宣言では一時閉鎖を決断。リモートワークとリモート授業に舵を切ったという。
「私自身の役割はマネジメントや経営判断なので、以前からリモートワークは活用していました。グルーヴノーツの従業員も、ほぼ全員が高いITリテラシーを持っています。しかし、TECH PARKの従業員のなかには、学童保育のプロでありテクノロジーには詳しくない人間もいます。ITの素養がない大人が、一からテクノロジーを身につけるのは難しい。そういった意味ではリモートワークに苦労した面もありました」
実際、子どもはすぐにZoomなどのオンライン会議ソフトを使いこなせるようになったが、スタッフや保護者など大人のほうが習得に時間がかかったという。
「今回の件で、子どもの頃からテクノロジーに親しみ、ツールを使いこなせる素養を身につけておく重要性を感じました。そういった意味では、TECH PARKの取り組みは間違っていないし、今後、さらに重要になると再認識しました」
リモートワークに関するネットワークやパソコン端末の管理は、グルーヴノーツの担当者が行った。しかし、もし、TECH PARKだけで管理する必要があったら……。佐々木氏は「今後は、ITリテラシーがなかったり、パソコンに詳しくない人がいたりする前提で、運用側が管理する体制も重要になると気付かされた」と振り返る。
そこで佐々木氏に、リモート運用管理が可能なインテル® Evo™ vPro® プラットフォーム対応の「Dell Latitude(ラティチュード) 9520」を使ってもらい、その感想を聞いた。
電源が切れた状態でも遠隔管理できるので、万が一の事態にも安心
インテル® Evo™ vPro® プラットフォームは、インテル® Evo™ プラットフォームとインテル® vPro® プラットフォームの二つに分けられる。
インテル® Evo™ プラットフォームは、これからのIT社会に必要な次世代スペックを指標としてまとめたもの。インテル® vPro® プラットフォームは、ハードウェア支援型セキュリティ機能や最新のリモート管理機能などを提供するプラットフォームだ。
この両要件を満たした薄型軽量ノートPCだけが名乗れるのが、インテル® Evo™ vPro® プラットフォームである。
自らのPC選びを「スペック重視」と語る佐々木氏は、インテル® Evo™ プラットフォームに対応したスペックを体感し、こう感想を述べた。
「長時間のリモート会議では、PCの動きが遅くなることがあります。そんなときは、一度シャットダウンするので効率が悪い。インテル® Evo™ プラットフォーム対応のスペックなら、そういった心配も少ないと感じます」
経営者としての目線では、インテル® vPro® プラットフォームが提供するセキュリティにも言及する。
「ソフトウェアだけでセキュリティを高めると、結局いたちごっこ。より強固さを求めるなら、ハードウエアから守ることが重要です。インテル® vPro® プラットフォームはハードウエアベースで端末を防御しているので安心。それをCPUメーカーであるインテルが取り組んでいるのは画期的です」
また管理者権限でセキュリティパッチを実行したり、システム管理ができたりする特長に関しては、教育事業に携わっているからこその気付きがあった。
「TECH PARKに通う子どもは、家でもパソコンを使います。しかし、保護者のITリテラシーが高いかと言われると、必ずしもそうではない。そういったときに、インテル® vPro® プラットフォームで遠隔管理ができると便利ではないでしょうか。もちろん、これは企業でも同じことが言えます。トラブルがあったときに管理者側で操作できるという強みは、導入しやすさや使いやすさに大きく貢献します」
佐々木氏の話は、「Dell Latitude 9520」の使いやすさにも及ぶ。
「まず、画面がすごく美しい。映り込みが少なくて見やすいし、15インチの大きさも作業がしやすいと感じました。2in1は、タブレットとPCを兼ね備えた使い方ができるので、出張時の荷物を減らせそうですね。また、TECH PARKのアクティビティではデジタルアートやプログラムを行っていますが、2in1ならその両方に対応できるので子どもにもお勧めできます」
ICTによる教育格差是正は地域創生にもつながる
コロナ禍において学童保育のリモートワークやリモート授業を経験した佐々木氏。この仕組みは、ICTを活用したリモート教育による地方創生にもつながると感じたそうだ。実際に地方自治体からの相談も増えているという。
「コロナ禍によってリモート授業は期せずして普及が進みました。テクノロジーを使えば、都市部でなくても学びの機会を得られることが証明されたわけです。コロナ禍以前から地方移住の話はされていましたが、子育て世代にとって教育環境が一つのハードルになっていました。ICTによって教育格差が縮まれば、地方移住の促進、ひいては地域創生へつながると思います。正直、まだ教育格差は埋まっていませんが、これからその過渡期がくるのではないでしょうか」
PCは教育格差を埋めるためのデバイスとして必要になるが、そういった意味でも遠隔管理ができる仕組みは重要だという。
「地方にはコンピューターの管理運用ができる人は少ない。都市部の担当者がしっかりサポートして、セキュリティを担保したり、万が一、トラブルがあったときに遠隔で管理できたりすると、安心して遠隔での教育が受けられます。インテル® Evo™ vPro® プラットフォームには、そういった面でも期待したいですね」
インテル® Evo™ vPro® プラットフォームの詳細についてはこちら
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