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衆院選の20代投票率、前回は60代の半分以下。「投票率75%」達成に必要なことは?

10代〜40代の「投票率75%」が目標。

10代〜40代の「投票率75%」が目標。

撮影:吉川慧

この国の舵取りを誰に委ねるのか、有権者が判断する日が近づいてきました。10月に衆議院が任期満了を迎えるため、秋までには総選挙が実施されます。

こうした中、若年層の投票率アップを目標とする目指せ!投票率75%!プロジェクトがスタート。8月26日、実行委員らが記者会見を開きました。

若者や現役世代の低投票率は長らく懸念されてきましたが、そもそもなぜ若者の投票率は低いのでしょうか。

「102%」——若年層の声が、高齢層と同じ大きさになるために必要な若者の投票率

撮影:吉川慧

現在の日本のように、少子高齢化が進むと有権者のうち高齢者が占める割合が増えます。すると、政治においても高齢者向けの政策が重視される「シルバーポリティクス(シルバー民主主義)」の傾向が強まるとされています。

高齢者と比べると人口が少なく、投票率も低いことから、若い世代に向けた政策は二の次にされがちです。

総務省選挙部によると、前回(2017年)衆院選の20代の投票率は33.85%で年代別では最低。最も高かった60代(72.04%)の半分以下でした。

このうち18歳〜39歳(若年層)の投票率は40%(51157/127991)。一方、60歳以上(高齢層)の投票率は65%(130941/200068)にのぼります。

これは「18歳〜39歳の投票者数」が「60歳以上の投票者数」と同数になるためには「102%」の投票率が必要なことを意味するとNPO法人ドットジェイピーは指摘します。

OECDの報告書(Society at a glance 2011)によると、若年層と高齢層の年代別格差はイギリスについで世界2位です。

そこでプロジェクトでは、若者や現役世代の社会課題の解決のため、10〜40代の意思を実際の政治に反映させるためにも、若い世代の投票率の向上を目指すとしています。

具体的には「10代・20代・30代・40代の投票率75%以上(4人中3人が投票)」が目標。前回(2017年)衆院選での年代別最大投票率(60代:72%)を超えることを目指します。

アンケートで「10の争点」全政党・候補者に見解を求める

渡辺由美子さん

渡辺由美子さん

撮影:吉川慧

プロジェクトの実行委員会には、子どもや子育て世代の貧困問題、若者の労働環境の改善、選択的夫婦別姓やLGBTQや性的マイノリティの権利など、若年層の関心が高いテーマに携わるメンバーが参加してます。

実行委員の一人でNPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長は「現役世代の投票率をシニア世代の水準まで上げないと、声が届かない」「若者や現役世代の声を届けるには、投票率をあげて“私たちの声を聞いてほしい”と政治家にラブコールを送ることが重要」と指摘します。

模擬選挙推進ネットワークの林大介代表も「若い人たちが投票に行くことで、選挙結果が大きく変わる。キャスティングボードを握っているのは自分たちだと知ってほしい」と語ります。

2021衆議院議員選挙「あなたの争点」アンケート

さらに、若者や現役世代がどんな政策を求めているかアンケートを募り「10の争点」として可視化。全政党・候補者にも見解を求め、若い世代の投票への意識向上や政治参加への関心を高めることにも取り組みます。

衆院総選挙の年代別投票率、過去の推移は? 1967年以降、18回分のデータを見ると…

年代別の投票率は全国の投票区から、回ごとに144〜188投票区を抽出。1967年の60代投票率は60〜70歳、70代以上は71歳以上の値。10代の投票率は全数調査。

20代投票率の過去最高は6年代別の投票率は全国の投票区から、回ごとに144〜188投票区を抽出。1967年の60代投票率は60〜70歳、70代以上は71歳以上の値。10代の投票率は全数調査。6.69%(1967年)、過去最低は32.58%(2014年)。一方、60代投票率の過去最高は87.21%(1990年)、過去最低は68.28%(2014年)だった。年代別の投票率は全国の投票区から、回ごとに144〜188投票区を抽出。1967年の60代投票率は60〜70歳、70代以上は71歳以上の値。10代の投票率は全数調査。

実際、過去の投票率は年代別でどう推移してきたのか。総務省が公式サイトで公開している1967年以降の衆院選年代別投票率(抽出)を見ると、以下のことが読み取れました。

・20代の投票率は1969年以降、全ての総選挙で年代別投票率の最下位。75%を超えたことは一度もない。

・20代の投票率で過去最高は66.69%(1967年/昭和42年)、過去最低は32.58%(2014年/平成26年)。

・30代、40代とも投票率75%を超えたのは1990(平成2)年が最後。

・60代の投票率は1983年以降、全ての総選挙で年代別投票率のトップ。

・60代の投票率で過去最高は87.21%(1990年/平成2年)、過去最低は68.28%(2014年/平成26年)。

・40代までの年代で「投票率75%」を超えた回数は以下の通り。

20代:0回
30代:5回=1967年、1972年、1976年、1980年、1990年
40代:9回=1967年、1969年、1972年、1976年、1979年、1980年、1983年、1986年、1990年

前回(2017年)衆院総選挙の年代別投票率は…?

2017

Business Insider Japan(総務省公表資料より編集部が作成)

・「18歳選挙権」導入後初の総選挙となった前回(2017年)の衆院選。10代投票率は40.49%で、20代(33.85%)を上回った。

・20代の投票率は33.5%で、年代別で最低。最も高かった60代(72.04%)の半分以下だった。

若者の低投票率、荻上チキさん「環境面の検証が必要」

荻上チキさん

荻上チキさん

撮影:吉川慧

若者の投票率の低さについて「自己責任」や「政治的無関心」が原因と捉えられがちですが、評論家の荻上チキさん(社会調査支援機構チキラボ代表)は「投票に行きたくても行けない人の“環境的側面”の検証が必要」と指摘します。

選挙に行く、行かないを決める背景には、個人的な心理的側面、政治制度的側面、環境的側面があると考えています。

政治制度の話でみると、小選挙区制になって死票が増えたことで政治的学習性無気力(政治に対する学習性無力感)が向上し、「自分の一票があまり貢献しない」という感覚が高まると、投票所に行きにくいという感覚が育ってしまうのではないか。

また、「何が争点かわからない」というのは、「投票所に行く価値がない」という感覚を生み出してしまう。政治と接点が結びつきにくい若年層には、こうした感覚が生まれがちです。

かつては特定の企業団体に所属することで自動的にどこかの政党への支持にコミットをする、それが結果として投票行動となっていましたが、いまは特定政党への支持に若年層が結びつきにくくなっています。

環境面での課題では、今回の調査で明らかになっているものがあります。

ここ20年間で日本全国で5000〜6000の投票所がなくなり、多くの投票所では期日前投票を行っているものの、投票時間を短縮するところが増えている。投票所の数が減っていることで、投票率が下がっています。

例えば、投票時間が2時間短くなると投票率は全体で0.9ポイント低下し、1万人あたりの投票所が1つ減ると0.17ポイント下ってしまいます。

また、サービス業など第三次産業が発展したことも投票率低下の背景にあると思います。例えば、朝9時から夕方5時まで仕事をして、その後に投票行ける……という生活習慣を持たない方も増えている。

期日前投票が増えることで若年層が投票所に行きやすくなる一方、投票所を早めに閉めるところが増えると、時間に間に合わない人は切られてしまう。

そうした線引きなどで、投票所に行きたいけど行けない人、行こうか迷っているけど投票に繋がらない人を、投票につなげるためには環境面の改善が必要だと思います。

個人的には、たとえば24時間投票や郵便投票、いずれはネット投票も検討する必要があると思う。環境面を全て改善して、それでも投票率向上を達成できなかったら、そこで心理的側面について議論していいでしょう。

投票環境の問題を議論することは、投票の権利をしっかり満たすことが重要で、それが大人の責任だと思います。

<若者・現役の投票率が低くなる理由として考えられるもの>

1:選挙の争点が若年層にとって身近ではない。
・主な日本の政策が、男性を働き手の中心とする旧来の家族モデルや大企業を対象としたものになっており、非婚者・無職・非正規労働者等の人々が関心を持ちにくい争点になってしまっている。
・立候補者の平均年齢が比較的高年齢のため、若年層が共感や応援するきっかけを持ちにくい。

2:多様な人が投票しにくい選挙制度となっている。
・オンライン投票ができない、公示期間が短いため争点について考えを深めにくい、投票場所や限定的なため働いている人が投票しにくい、デジタルを活用した選挙の情報発信が低調……など。

3:シティズンシップ教育(主権者教育)の取り組みが少ない。

プロジェクトでは、こうした仮説をもとに投票率向上に向けて継続的に調査・研究を実施する予定としています。

(文・吉川慧

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