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卓球・水谷も食べている。創業5年の宅食サービス「マッスルデリ」とは何者か

マッスルデリ社長・西川真梨子さん。

マッスルデリ社長、西川真梨子さん。創業前の原点は「サバゲー」にあるという。

撮影:今村拓馬

パラリンピックが声援を集める中、東京五輪も終盤を迎えつつある。勝負に挑むアスリートを支える影の功労者に、創業5年の「宅食」スタートアップがいるのを知っているだろうか。

コロナ禍で売り上げが2倍に成長し、勢いに乗る「マッスルデリ」の秘密を、創業者に直撃した。

金メダリストの身体作った「宅食」

マッスルデリ

マッスルデリの特徴は味へのこだわりだ。全部で50種類あるメニューを見てみるとダイエット食とは思えない献立が並んでいる。値段は1食あたり約1000円ほど(送料込み)。(写真はデミグラスハンバーグセット)

撮影:今村拓馬

「試合はみんなで見ていました。特にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)は、めちゃくちゃうるさくて仕事にならないほど(笑)。でも本当に金メダルを獲られるから、すごいなって……」

マッスルデリ社長の西川真梨子さん(34)は、対面した渋谷のオフィスで、控えめにそう語った。

マッスルデリは、ボディメイクやダイエットに特化した、サブスクリプション(定期購入)型の食品宅配サービスだ。低糖質、増量など目的にあったプランを選ぶと、そのプランに合ったメニューが月に15食(5食や10食も選べる)、届けられる。

2019年からはアスリートとも提携し、食事をサポートするプログラムも実施している。現在22人と契約しており、東京五輪の卓球混合ダブルスで金メダル、男子団体で銅メダルを獲得した水谷隼さんもその一人だ。

水谷さんはマッスルデリがサポートするアスリートで初めての「五輪金メダリスト」となった。

起業の原点に、サバゲーあり

サバゲー

マッスルデリ創業前の西川さん。週末には山奥まで朝から車を走らせ、サバゲーに興じていた。当時のサバゲー仲間の中には、今マッスルデリに参画しているメンバーも。

画像:取材者提供

創業者で社長の西川さんは当初、起業するつもりはまったくなかった。関西学院大学の学生時代は「20代後半で結婚して、普通の奥さんになるのかな」とまで思っていたという。

起業の原点にあるのは、社会人になってハマった、エアソフトガンとBB弾を使った戦闘あそび「サバイバルゲーム(サバゲー)」だ。

サバゲー仲間たちと帰りに飲みながら「都心で手軽にサバゲーができる場所がほしいね」と語るうち、本当にやってみようか、という話に。

仲間の6人と数十万円ずつ出し合い、クラウドファンディングも実施。2013年に最初は土日だけ、室内サバゲーができる店「ASOBIBA」を東京駅の近くにオープンした。

「自分が好きなことから世の中が変わっていくって、すごく面白い」

しかし西川さんは創業後のタイミングでサバゲー運営からは手を引き、コンサル企業への入社を決断する。きちんと事業の立ち上げについて勉強し直そう、との思いだった。その後、サバゲー事業は成長し、ゲーム会社のアカツキへ売却された。

1兆円に膨らむ「宅食市場」

コンサルとして働き始めた西川さんが再度ハマったのが身体作りだった。30歳に差しかかろうとしていた頃パーソナルジムに通い始めたものの、苦労したのが食事だった。

「カロリー、脂質、糖質制限と、だんだん食べられるものがなくなっていって。もともとおいしいものを食べるのが好きだったのに、なんのために身体作り始めたんだっけ?って」

自分で食事制限を進める中で、これはビジネスにできるのではないか?と考え始める。

「海外にはおいしくて栄養バランスの整った食事を配達するサービスが多くあるのに、日本はまだなくて。だったらいっそ作りたいなと」

海外では宅配食の需要は右肩上がりだ。

市場調査会社グランドビューリサーチの統計によると、世界の宅配サービスの市場規模は2020年に102億6000万ドル(約1兆1000万円)に到達。2021年から2028年にかけ、13%の年平均成長率(CAGR)で拡大すると予想されている。

アメリカの食品宅配市場

アメリカの宅配サービスの市場規模。2019年には35億ドル(約3800億円)に達している。

出典: Grand View Research

このビジネスには可能性があるのでは ── 。管理栄養士とも協力し「鶏の塩麴焼きセット」「サーモン三色丼セット」「ハンバーグセット」などを初期メニューとして開発。そこからの製造工場探しにも奔走した。

メニューあたりのロット(生産数)が少なく、かつ栄養バランスに配慮しなければならないため、レシピは複雑。多くの工場が難色を示す中、当たれる工場はすべて当たり、なんとか思い描く製造ラインを作り出した。

世界王者・那須川天心も公言

マッスルデリ社長・西川真梨子さん。

「多くのアスリートが、食事管理まで気を配れないという悩みを抱えているんです」

撮影:今村拓馬

西川さんの読みは当たった。開始当初から口コミで広まり、30代から40代の都市圏に住む男性を中心に、想像以上の申し込みがあったという。

初期はSNSを中心に知名度を広げ、2019年にはウェブマーケティングを強化。コロナ禍になると、予想をはるかに超えた大きな波が来た。2020年5月には月間販売食数が5万食を突破し、2021年1月には前年同月比で売上が2倍になった。

「2020年は、自宅で健康な食事を食べたいという人がすごく増えた。そこからさらに2021年は一般層に、より良質なタンパク質を取りたいというニーズの高まりをすごく感じています」

2019年からはアスリートと提携し、食事を提供するプログラムも進めている。現在22人と契約しており、冒頭の水谷隼さんもその一人。

「海外だとアスリートに栄養士がついているのは普通。でも日本では、トレーニングには気を遣えても食事はどうすれば良いのかわからない、という声を多く聞いていて。日本の競技力のためにも、それってもったいないなって」

なお、キックボクシングの世界王者、那須川天心さんもSNSなどで愛用者を公言している一人だ。

マッスル層以外にも届けたい

マッスルデリ社長・西川真梨子さん

「今後は、マッスルイメージを少しずつ消していきたい」

五輪でスポーツに注目が集まった7月30日、マッスルデリは三菱UFJキャピタルなどから2億5000万円の資金調達を発表。8月には、パーソナライズフードへの進出を表明した。

現在は、LOW CARB(低糖質)、LEAN(減量)、MAINTAIN(維持用)、GAIN(増量)の4つのプランからユーザーが自身の目的を選び、それに合わせた食事が届く仕組み。

新しく打ち出したパーソナライズフード事業「YOUR MEAL」では、生活習慣、よく食べるものや食べないもの、身体作りの目的などの質問から、必要な栄養素を分析。150種類以上のメニューによる11億パターンの中から、診断結果に基づいた食事が配送されるサービスだ。

なお、2021年8月、マッスルデリは食品大手ネスレとも業務提携を発表した。提携の詳細は明かせないものの、2020年10月にネスレはアメリカの宅配ミール「Freshly(フレッシュリー)」を15億ドル(約1570億円)で買収している。

Freshlyは2015年の創業だが、すでに1週間あたり100万食超を売り上げ、同業大手として躍進する。

資金調達を契機に、他のサービスも少しずつ力を入れている。例えば、定期購入者を対象にした、Zoomで栄養士によるオンラインセミナーを開いたり、LINEで週2回栄養の知識などの情報も発信。

しかし、その中心はあくまで「ボディメイクに特化した宅配食」だ。

初期のユーザーは、ボディビル大会に出ているようないわゆる『マッスル層』が中心でした。今後は、健康的な生活を送りたい、全ての人にとって当たり前になるサービスになれたら、と思っています

すでに金メダリストの身体の一部を作った日本発の「ボディメイク宅配食」市場の可能性は、大きく広がっている。

(文・西山里緒、写真・今村拓馬)

編集部より:以前の顧客層、および月間販売5万食突破の時期について、正確な表記に改めました。また初出時、西川真梨子社長の年齢表記に誤りがありました。関係各位にお詫びして訂正いたします。2021年8月31日 13:00
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