横須賀に整備するリサイクルプラントのイメージ。
提供:TBM
石灰石を主原料とする代替プラスチック「LIMEX」を開発しているTBMは8月30日、神奈川県横須賀市で使用済みのLIMEX製品や廃プラスチックを回収し、自動選別・再生する国内最大級の「リサイクルプラント」のプロジェクトを始動することを発表した。
TBMは横須賀市にある既存企業から土地建物を借り受ける形でリサイクルプラントを整備し、LIMEX製品、および廃プラスチックを年間で合計約4万トン処理。LIMEXの再生ペレット、プラスチックの再生ペレットを約2万4000トン製造する計画だ。
実現すれば、この規模の廃プラスチックリサイクルプラントは、国内最大級といえる。
TBMは神奈川県と2019年5月にLIMEXのリサイクルを通じたサーキュラー・エコノミー(循環経済)を推進する「かながわアップサイクルコンソーシアム」を発足している。こういった背景からTBMが神奈川県内でリサイクルプラント候補地を探す中で、横須賀に敷地が見つかったという。
工場の稼働開始は、2022年秋を予定している。
代替プラメーカーがプラスチックリサイクルを進めるワケ
2020年7月から始まったレジ袋有料化。同年11月に実施されたアンケートでは、約7割の消費者がレジ袋の受け取りを辞退するようになったとの結果も発表された(有料化前は3割程度)。
経済産業省
日本では2020年7月から、レジ袋が有料化。
さらに2021年6月にはプラスチック資源循環促進法が成立し、2022年春からストローやスプーン、マドラーなどの使い捨てプラスチックに対する使用量削減のための枠組みが検討されている(詳細は今秋に正式決定予定)。
世界的なプラスチック規制の流れの中で、脱プラスチック(脱プラ)の流れは、今後も加速していくことが想定される。
TBMが開発するLIMEXは、こういった「脱プラ」の潮流の中で注目されてきた素材でもある。
一方で、プラスチックとは異なる成分であるLIMEXをはじめとした代替プラスチックにも課題はある。例えば、プラスチックのリサイクル工程に入り込むことで、その工程に悪影響を与えてしまうことがあるのだ。
TBMでは、もともとLIMEX製品のリサイクルを進めるためにLIMEX製品を自主回収していた。ただし、この先、普及が進めば大なり小なり回収しきれなくなる製品は増えていく。
今回、TBMは大手選別機メーカーと連携して近赤外線を使ったプラスチックや紙などとLIMEX製品を分別するプログラムを開発。横須賀市に整備するリサイクルプラントにこの機能を組み込むことで、LIMEX製品がプラスチックゴミに混ざった状態で回収されてきたとしても、自動で分別できるようにするという。
Business Insider Japanがリサイクルプラントを整備する背景について聞いたところ、TBMは、
「これまで市中に出た使用後のLIMEX製品の回収は、プラスチックや紙と混在することが多かった。高性能な自動選別ラインの導入により、プラスチックや紙など他素材が混在しても、LIMEXのみの選別・抽出が可能になります。
資源の使用量やCO2の削減など、環境負荷の抑制するLIMEXの資源循環モデルの構築を大きく推進することが出来ると捉えています」(TBM広報)
と回答した。
リサイクルプラントの回収、リサイクルシステムのイメージ。CirculeXとは、TBMが開発する再生材料を50%以上含む複合素材。
提供:TBM
また、LIMEXの循環という側面だけではなく、プラスチックのマテリアルリサイクルに力を入れることで、
「普及が進むLIMEX製品、世の中に流通しているプラスチック製品の適切な資源循環を促進し、脱炭素社会、循環型社会の実現に寄与できると捉えています」(TBM広報)
とサーキュラー・エコノミーの促進に寄与したい意向もあるとした。
日本の廃プラスチックの総排出量は、年間で約850万トン(2019年度)。そのうち全体の6割にあたる約513万トンが、火力発電の燃料として処分する「サーマルリサイクル」による消費だ。
再生プラスチックとして再利用(マテリアルリサイクル)されている割合は、約186万トン(約2割)程度にすぎない(データはプラスチックリサイクル基礎知識2021より引用)。
いくら「脱プラスチック」を目標にしたとしても、プラスチックの使用を完全にゼロにすることは難しい。だからこそ可能な限り、既に世に出ている資源を効率的に使用することが求められる。
TBMは、今回整備するリサイクルプラントについて、
「(プラントの)稼働初期は(回収するゴミの中で)廃プラの割合が大きくなる想定です。LIMEXの普及と共に本プラントでのLIMEXの回収量も高めていく見込みです」(TBM広報)
と、LIMEXの普及率がそこまで高くない現状では、まずは廃プラスチックのリサイクルプラントとしての側面が強くなると語る。
今回整備するプラントで回収する廃プラスチックは、主に東京都や神奈川県の横須賀市以外の地域からのものになる想定。また、LIMEX製品を導入している企業からの回収拠点としても稼働していくことになるという。
回収・分別されたLIMEX製品や廃プラスチックは、この工場でそれぞれの再生ペレットとして加工され、プラスチック成形メーカーへと提供される予定だ。
(文・三ツ村崇志)