Instagram/Shein
- 市場調査会社ユーロモニターによると、「SHEIN」は今や世界最大のオンライン限定のファッション企業だ。
- SHEINはその価格で競合を圧倒している。その公式サイトには毎週、何千という新たなアイテムが追加される。
- 若い消費者を取り込むため、SHEINはソーシャルメディア上で積極的なマーケティングを展開している。
中国発のファストファッション「SHEIN」は2021年、アマゾンを追い抜いて、アメリカで最もダウンロードされたショッピングアプリとなった。
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市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)によると、SHEINは今や世界最大のオンライン限定のファッション企業だ。生産時間を1週間に縮め、公式サイトに毎週平均して3000もの新たなアイテムを追加し、価格を競合他社に比べて大幅に低くすることで、SHEINはファストファッションを再定義している。
Coresight Researchによると、SHEINは2020年に100億ドル(約1兆1000億円)の収益を上げたと見られている。
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これは前年比250%増にあたる。ちなみに、競合するオンラインファッションの「ASOS」や「boohoo」の収益は2020年、それぞれ44億ドル、24億ドルだった。
ソーシャルメディア上でSHEINに遭遇しないでいることは不可能に近い。それは広告の場合もあれば、顧客が最近購入した数えきれないほどたくさんのアイテムについて話題にしているTikTokの動画の場合もある。
Instagram/Shein
ただ、オンライン上のあちこちで存在を示す一方、SHEINはとても閉鎖的だとの評判もある。
SHEINは2008年にマーケティングと検索エンジンの最適化に詳しい許仰天(Chris Xu)氏が立ち上げた。オンラインでウェディングドレスを売ることから始め、2012年にはウィメンズウエアに多角化し、その後、ブランド名をSHEINに変えた。
現在、SHEINは子ども服やメンズウエアも取り扱っていて、世界220カ国に商品を届けている。
なぜSHEINはこれほどうまくいっているのか?
SHEINの「Walk Your Wonderful」でランウェイを歩くモデルのイスクラ・ローレンス(2020年9月19日)。
Getty Images for SHEIN
「(SHEINは)ファッションの作られ方を変えました」とCoresight Researchのシニアアナリスト、エリン・シュミット(Erin Schmidt)氏はInsiderに語った。
SHEINのビジネスモデルは"オンデマンド"だ。
David M. Benett
つまり新商品を少量生産し(100点ほど)、その人気次第で生産量を増やすということだ。
消費者が欲しがらないアイテムを大量に作らずに済むため、無駄になる服が少ない。
新しいトレンドをつかむために、SHEINではアルゴリズムとデータサイエンスを使っている。Coresightによると、SHEINは毎週、平均して2800の新しいアイテムをウェブサイトに追加しているという。
Shein.com
ちなみに、競合するイギリスのファストファッション「boohoo」の場合、その数は週に500ほどだ。
このスピーディーなアプローチを可能にしているのが、SHEINのユニークなサプライチェーンだ。
SHEINの期間限定のポップアップストア(2019年5月23日、ロンドン)。
Dave Benett/Getty Images for SHEIN
シュミット氏によると、許仰天氏は当初からサプライヤーと緊密な関係を築いていたという。業界では"過激"と見られることもある期日通り支払うことによって、だ。
その代わり、工場はSHEINのサプライチェーン・マネジメント・ソフトウエアを使わなければならない。そうすることで、SHEINは生産プロセスを厳密に監督し、顧客のリアルタイムの検索データをサプライヤーと共有することができる。
ブルームバーグによると、メーカーは広州にあるSHEINの調達ハブから自動車で5時間以内の場所になければならない。
スペイン北部にあるZARAの流通センター。
Business Insider/Mary Hanbury
Source: Bloomberg
また、これらのメーカーは最短10日でデザインと生産を完了できなければならない。
これは競合他社に比べて相当速い。ZARAといった実店舗を展開する競合他社 —— 通常、5週間はかかる —— に比べれば、なおさらだ。
価格帯も大きな魅力だ。「とんでもなく低価格だ」とシュミット氏は言う。
Shein.com
アクセサリーは1ドル以下~、セーターやワンピースも10ドル以下で見つかる。
これがサブカルチャーを生み出すことにつながった。10代の若者を中心としたネット購入者がSHEINに人々を「呼び込む」動画をTikTokやインスタグラムに投稿している。
Insider
こうした動画はソーシャルメディアで広く共有されている(例えば、100ドルでどれだけたくさんのアイテムを買えるかの動画など)。SHEINにとってこれは、無料のマーケティングであり、ソーシャルメディア上でこれほどうまくいっている大きな理由の1つだ。
インスタグラムには2140万人、TikTokには240万人のフォロワーがいる。
ブランドを宣伝するために、有名人やインフルエンサーとも提携している。
2020年には、ケイティ・ペリーもSHEINのバーチャル・ファッションショーでパフォーマンスを披露した。
Getty Images for SHEIN
そのビジネスモデルは過剰消費を中心に構築されている。顧客が買えば買うほど、特別割引が得られる。
この"絶えず続く購入サイクル"は、サステナビリティの観点から問題を提起している。その驚くほど安い価格をめぐる倫理もだ。
イギリスでは法律によって公開が求められているものの、SHEINは工場労働者の賃金や労働時間を公にはしていない。ただ、公式サイトで、同社は未成年の労働者を雇っておらず、労働者が生活水準を維持するのに必要な最低賃金と安全な労働環境を保証していると述べている。
SHEINの広報担当者は8月初め、イギリスの法律によって義務付けられている児童労働に関するポリシーを2週間以内に同社のサイトに追加するとロイターに語った。
8月10日、SHEINは同社のサイトに現代奴隷(modern slavery)に関する声明文を追加し、同社がサプライヤーやメーカーに児童労働法を含む全ての関係法令に従うよう求めているとした。同社はサプライチェーンの行動規範も導入したという。
そのアルゴリズムを重視したデザインプロセスは、過去に大きな問題に発展したこともある。
問題となったネックレス。
Shein.co.uk
2020年、SHEINはかぎ十字のネックレスを販売したことで物議を醸した。その後、同社は、これはナチスのかぎ十字ではなく、仏教のシンボルを表現したつもりだったと述べた。
同社はイスラム教の礼拝用の敷物を「飾りになるラグ」とうたって販売したことでも非難された。SHEINはインスタグラムに声明文を投稿することで謝罪し、礼拝用の敷物をサイトから削除した。
そして、SHEINは模造品を作っているとして、デザイナーやブランドから度々非難されている。これは多くのファストファッション・ブランドが非難されていることだが、全く違法ではない。
Source: Vox
それでも、SHEINは10代の若者にとって最も魅力的なブランドだ。
(翻訳、編集:山口佳美)