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意識調査:若者と女性で高い自殺リスク。いま、必要な支援とは何か

感染対策

マスクなどの感染対策に対する意識差からくるストレスも少なからず心を疲弊させている。

REUTERS/Androniki Christodoulou

8月31日、日本財団が「第4回自殺意識調査」の結果を発表した。

日本財団では2016年〜2018年にかけて、18歳以上を対象に過去3度にわたって自殺意識に関する大規模調査を実施してきた。

日本では、2009年以降、年間の自殺者数は減り続けていたものの、コロナ感染が拡大した2020年、11年ぶりに自殺者数が前年比で増加に転じた。

日本財団、国内事業開発チーム・シニアオフィサーの榎村麻子氏は、

「(2020年も)男性の自殺者は連続で減っている一方で、女性や若年層での増加が顕著というデータが出てきていました。現状を踏まえて、4回目の自殺意識調査を実施することになりました」

と調査を実施することになった経緯を話す。

日本財団の調査データから、今、必要な支援とは何なのか、ポイントを見ていこう。

日本財団第4回自殺意識調査
調査期間:2021年4月9日〜4月13日
調査対象:15歳〜79歳の男女。 1都3県の13歳〜14歳の男女。
有効回答数:2万件

コロナの影響にじむ調査結果

10の要因

日本財団がまとめた調査結果の「10のファクト」。赤枠で囲った要素は、財団が特に注視している点。

出典:日本財団

日本財団は、調査結果を元に自殺に関する10のファクトを報告。

その中でも特に注目している点として、

  • 「15歳から20代にかけての自殺念慮、自殺未遂のリスクの高さ」
  • 「過去1年の間に自殺を考えたことのある人のストレス要因」
  • 「メディアの自殺報道が若い年代へ与える影響」

の3点を挙げた。

アンケートでは、過去に自殺を考えたことがあるかどうかもヒアリングされている。

「あなたはこれまでの人生の中で自殺したいと考えたことがありますか?」

という質問に対して「ある」「ない」「答えたくない」という3つの回答を用意したところ、全年代では4人に1人が自殺を考えたことが「ある」と回答した。

全年代自殺念慮

全年代で1年以内に自殺を考えたことのある人の間では、その要因として健康問題や家庭問題、経済生活問題を挙げた人の割合が高かった。

出典:日本財団

また、直近の1年で自殺を考えたことのある人の間では、それ以前までに自殺を考えたことのある人と比較して、自殺を考える要因として次の3点の問題の割合が高くなっていた。

  • 健康問題:自分の病気の悩み、体の悩み悩み、心の悩み、依存症
  • 家庭問題:家族関係の不和、子育て、家族介護・看病
  • 経済生活問題:倒産、事業不振、負債、失業など

コロナ禍の生活で、こういった事情にトラブルを抱えるケースが増えたことが推察される。

若年層の自殺念慮

若い人の間では3人に1人が自殺を考えたことがあるという結果もでている。

出典:日本財団

また、15歳〜19歳までを対象とした場合、自殺を考える要因として最も多いのは「学校における問題」だ。

ただし、この1年以内に絞ると、健康問題や家庭問題などを原因とする割合が増大していた。全年代の調査結果同様に、コロナ禍での家庭環境の変化が影響していることが推察される結果となった。

この傾向は、15歳〜19歳で自殺未遂に及んだ人がその要因として挙げる内容でもほぼ同様だった。

年代・性別

年代、性別ごとに、1年以内に自殺を考えたことのある人の割合を調査した結果。若年層の女性、特に17歳、18歳で非常に高くなっている。

出典:日本財団

また、さらに細かく年代・性別ごとに1年以内に自殺を考えたことのある人を調査したところ、特に17歳・18歳の女性で自殺を考えたことのある人の割合が多かった。

日本財団によると、今回の調査ではその年代・性別で自殺を考える人の割合が高くなっている原因までは特定できていないとしている。

何がストレスになっているのか

全年代のストレス

左から順番に、自殺を考えたことのある人が、自殺を考えたことがない人に比べて強くストレスを感じた要因。(全年代)

出典:日本財団

この1年の間に自殺を考えたことのある人にとって、いったい何がストレスとなっていたのか。

アンケートでは、さまざまなストレスの要因を得点化し、過去1年以内に自殺を考えたことのある人と考えたことのない人で比較もなされた。

その結果、全年代で見ると、

  • 「精神的健康問題(うつ病など)の症状悪化」
  • 「同居する家族から感情的な暴言を吐かれること」
  • 「経済的に苦しく、家賃や光熱水費、食費などの生活費が工面できないこと」
  • 「就職/転職活動が困難であること」
  • 「睡眠が十分とれていないこと」

などの要因が、1年以内に自殺を考えたことのある人達にとって強いストレスになっていることが分かった。

若者のストレス

赤線で囲った部分は、若年層が感じるストレス因子として特徴的なもの。感染対策やコロナ禍での生活スタイルの変化が大きなストレスとなっている。

出典:日本財団

また、15歳から19歳の若年層に絞ってみると、精神的健康問題や家族からの感情的な暴言など、他の年代と同様のストレス要因もあったが、

  • 「同居家族と過ごす時間の増加(1人時間の減少)」
  • 「感染対策について世の中の意見が割れていること」
  • 「連日コロナのニュースを目にすること」

など、コロナ社会特有の生活の変化に起因するストレスが大きく心に負荷をかけている実態が見えた。

日本財団の担当者は、

「この1年の間に自殺を考えたり、実際に未遂に及んだりした人の背景には、こういったストレス因子の高まりがあることが推測されます。ただし、因果関係については今回の調査では明確に結論付けることは出来ていません」

と状況を分析している。

とりわけ15歳〜19歳の年代では、もともと家族と不和を抱えていたような若者が、ステイホームせざるを得なくなったことによって逃げ場を失い、ストレス要因になっていることなどが推測される。

記者会見

調査結果を報告する、日本財団、国内事業開発チームの齊藤裕美氏。

記者会見の画像をキャプチャ

また、30代以下の年代では、自殺に関するメディア報道によって自殺を意識するケースも多いことが分かった。実際、2020年には、著名人の自殺が報道された直後に自殺者数が急増したとの報告もある。

警察庁が発表している自殺者数の年次データを見ると、中高年の自殺者数はここ10年減少しているものの、19歳までの若年層の自殺者数は年々増加している。2020年は、20代の死亡者における自殺率も急増している。

今回の調査結果でも、その事実を裏付ける結果だといえそうだ。

調査では、自殺を考えたり、未遂に及んだ経験のある人の約7割が、誰にも相談していないという実態も明らかになった。

「自殺の問題は個人の問題ではなく社会問題だと考えています。(アンケート調査を公表するなど)人々の関心を高めることで、身近な人の異変に気づけるようになり、自然に手を差し伸べられるような社会を目指していきたいと考えています」(日本財団)

日本財団は、引き続き調査を進め、より具体的な実態を把握したうえで必要な支援を検討していくとしている。

厚生労働省のホームページには、複数の相談窓口などの支援情報が掲載されています。以下、一部を紹介します。

  • 厚生労働省・こころの健康相談統一ダイヤル

0570-064-556(相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なる:一覧

  • #いのちSOS

0120-061-338(月曜:24時間 火曜〜日曜:10時〜24時)

  • 文部科学省・子供のSOSの相談窓口

0120-0-78310

  • チャイルドライン

0120-99-7777(毎日 午後4時~午後9時、チャットは毎週木、金、第3土曜日の午後4時~9時)

  • いのちの電話

0570-783-556(ナビダイヤル・午前10時から午後10時まで)、0120-783-556(フリーダイヤル・無料・毎日16時から21時まで、毎月10日午前8時から翌日午前8時まで)

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(文・三ツ村崇志

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