イベルメクチンの錠剤。
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- アメリカ疾病予防管理センターによると、イベルメクチンの処方数はパンデミック前に比べると2021年8月には24倍に急増したという。
- イベルメクチンは根拠がないにも関わらず、新型コロナウイルス感染症の治療薬として喧伝されている。
- イベルメクチンは治療薬としては承認されていないばかりか、適切に服用しないと危険な場合がある。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として根拠なく推奨されている経口駆虫薬イベルメクチンの処方数が、2021年8月にはパンデミック前の水準と比較して24倍以上になったという。
イベルメクチンは寄生虫の駆虫薬として使用が認められているが、新型コロナウイルス感染症の治療薬としては認められていない。
CDCが2021年8月26日に発表した報告書によると、8月13日までの1週間での処方数は8万8000件を超えたという。
CDCによると、これはCOVID-19によってアメリカで国家緊急事態宣言が出された2020年3月13日以前の1年間の、イベルメクチンの週平均処方数の約24倍にあたるという。
イベルメクチンが新型コロナウイルスによる患者や死者を減少させることを決定的に裏付けるデータはないにも関わらず、ロン・ジョンソン(Ron Johnson)上院議員やランド・ポール(Rand Paul)上院議員といった著名人が新型コロナウイルスの解決策としてイベルメクチンを推奨している。
アメリカ食品医薬品局(FDA)とCDCは、イベルメクチンを新型コロナウイルスに対する治療薬として使用した際の危険性に対して、注意勧告を出している。
CDCは、イベルメクチンの不適切な服用は過剰摂取につながり、幻覚、痙攣、昏睡を引き起こして死に至る可能性があると述べている。
Insiderが報じたように、この薬の使用者の中には、視界がぼやけたり、下痢をしたり、「ミミズ」と思われるものを吐き出したりしたことなど、ネット上でその危険な影響について訴える人もいる。CDCによると2021年7月にはイベルメクチンに関連する毒物対策センターへの電話相談がパンデミック前に比べて5倍に増加したという。
FDAは2021年に入り、動物向けの用量でイベルメクチンを服用ししている人の報告を受けたことを明らかにした。CDCによると、これは人間に対しては高濃度で、過剰摂取になる可能性があるという。
2021年1月の議会議事堂襲撃事件に関連して創設者が起訴された右翼団体「アメリカズ・フロントライン・ドクターズ(America's Frontline Doctors)」は、この薬を処方するために90ドル(約9900円)で遠隔医療相談を行っているという。また、ミシシッピ州の毒物対策センターに寄せられた最近の電話相談の70%は、動物用イベルメクチンの摂取に関連するものだった。
CDCは新型コロナウイルスの感染、重症化、入院、死亡を防ぐにはワクチン接種が最も効果的な手段であると報告書の中で強調している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)