世界経済フォーラムによると、使い捨てプラスチックの1割を再利用できる包装容器に変えることで、海洋に流れ込むプラスチックごみの半分近くを減らせるという。
プラスチックを使わない買い物をすることで、2040年までに海洋に放出されると予想されている年間2900万トンのプラスチックを減らすことができるかもしれない、という希望を感じられる内容になっている。
これがマイバッグ使用の次のステップになりそうだ。こうすることで自分たちの生涯で2万2000枚のビニール袋を削減できると専門家は想定する。
M&S、モリソンズ(Morrisons)、ウェイトローズ(Waitrose)などのイギリスの小売店はすでに、このアプローチにトライしている。また、リターレス(Litterless)などのアメリカのウェブサイトでは、ゴミの出ない食料品店の一覧を確認することができるが、アメリカでは消費者の55%が、包装容器が環境に対して与える影響について非常に懸念しているという。
しかし、マイバッグの先にある、詰め替え容器を使って買い物をするという大きな行動変容に、買い物客は対応できるのか? 環境にいいことをしているという気持ちが不便さに勝るつのかを確かめるため、イングランド・エセックスのリー・オン・シーにある「ザ・リフィル・ルーム(The Refill Room)」というプラスチックを使わない店に行ってみた。
店頭には、再利用できるコップやバッグ、またローチョコレートでコーティングされたアーモンドや素焼き空豆、茶葉やコーヒー豆などのスナックが陳列されていた。
容器を持っていなければここで買うこともできる。
MaryLou Costa
シリアル、パスタ、ナッツ、豆類、ドライフルーツなどが大きなタンク容器に入っており、付いているレバーを下に引くと中身が出てくるようになっている。ハーブ、スパイス、調味料などは大きなガラスのボウルに入っており、自分ですくって容器に入れる。オリーブオイル、バルサミコ酢、メープルシロップなども、自分で注いで入れられるというスタイルだ。
自分の詰め替え用容器を持参し忘れてしまった場合や、そうした容器を持っていない場合は、乾いたものであれば茶色の紙袋を使うことができる。ガラスの瓶やジャーも販売している。
1ポンド(約150円)で200mlサイズのジャーを2つ買い、(大きな銀のタンクから)タヒニと、(ピーナツバターのように機械で挽いてできたての)アーモンドバターを購入した。
また、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ハンドソープを入れるためのディスペンサーも購入できる。これらもザ・リフィル・ルームの銀のタンクから入れられるようになっており、他にも洗濯用の液体洗剤や床掃除用の洗剤も売っていた。
紙で包んだスティック状のデオドラントや、ガラスのジャーに入った歯磨き、布ナプキンなどの生活用品もあった。
プラスチックを使わない買い物に慣れていない私は、自力で買い物ができるようになる前に、重さの量り方やラベルの貼り方を一通り案内してほしいと感じた。
ザ・リフィル・ルームには、重さを量ってラベルを貼るエリアが2カ所あった。まず持参した空の容器の重さを量り、容器の重さが書かれたシールを印刷して付ける。
次に、買いたいものを取っていく。
そこから再度、重さを量ってラベルを貼る。最初のシールをスキャンし、その後中身を入れた容器を計量する。
タッチスクリーンを使って商品を検索し、値段の付いた2つ目のラベルを印刷する。そしてようやくレジに向かう。
今回37.78ポンド(約5670円)で買ったものは以下の通り。
- 松の実160g…6.32ポンド(約950円)
- アーモンドバター158g…3.07ポンド(約460円)
- タヒニ152グラム…1.79ポンド(約270円)
- ローチョコレートアーモンド130グラム…5.14ポンド(約770円)
- 炒った空豆156グラム…1.50ポンド(約225円)
- 赤レンズ豆429グラム…1.50ポンド(約225円)
- オーガニック・パスタ3種類1.4キロ…6.46ポンド(約970円)
- スティック型デオドラント1本…10ポンド(約1500円)
毎週の買い物をここでできるか?と聞かれれば、ヴィーガンのチリ、レンズ豆スープ、ひよこ豆のカレーなど、この店で買えるもので作れる料理はたくさんあると言える。
週末にはサワーブレッドも販売されているが、生の果物や肉類は販売されていないので、近くにある青果店、精肉店、ベーカリーに行かなければならない。
酢や醤油の入ったディスペンサー。
MaryLou Costa
買い物はこの店だけでする、という人は、それなりの決意が必要になるだろう。
そうでない顧客は、1週間分の買い物というよりも、欲しいものをいくつか買っていく、という感じだった。ヘーゼルナッツを1袋分買う人や、シャワージェルの詰め替え容器を持っている人を見かけた。
私が買った商品の中には、普通のスーパーと比べると高いものもあった。ファルファッレのパスタは500グラムで1.45ポンド(約220円)だったが、リー・オン・シーに3店舗を展開するスーパーのテスコなら、オーガニックのスパゲッティは同じ量で1ポンド(約150円)だ。
洗濯用液体洗剤は500mlで5.25ポンド(約790円)だったが、高級志向の店であるウェイトローズではパーシル(Persil)の洗濯洗剤が1リットルで5ポンド(約750円)だ。
ただ、ザ・リフィル・ルームによれば、オーガニック、ビーガン、動物実験をしない、またアレルギーに優しい商品を販売しており、ここで扱う商品のいい面は環境にとどまらないという。
また、逆に安い商品もある。例えばオーガニックのカシューナッツは100グラムで2.25ポンド(約340円)となっており、ウェイトローズは同じ100グラムで2.75ポンド(約410円)だ。
あわただしい生活の中で、プラスチックをゼロにする買い物へ完全に移行することが現実的になるのは、私や私の家族がよく行く大型スーパーが恒久的にこうした販売方法をし始めてからになるだろう。
しかし、たまにはこういう買い物もできるように、シャンプーやハンドソープのボトルを今取っておいている。これからもっとプラスチックを使わない買い物を増やしていけたら、と思いながら。
(翻訳:田原真梨子、編集:常盤 亜由子)