コロナ禍でリベンジポルノなどデジタル性暴力の被害相談が増えている。中には被害者からの削除要請に応じないサイトもあり、支援団体はサイトの運営企業らに対応の見直しを求めている。
コロナで顕在化するデジタル性暴力
ぱっぷすが新設したHP。デジタル性暴力の相談や削除方法が分かるようになっている。
出典:デジタル性暴力被害者支援センターHP
児童ポルノやAV出演強要に加え、同意なく性的な動画・画像を撮影されたり、元交際相手や知人などから性的な画像を無許可でインターネット上に掲載される「リベンジポルノ」などの「デジタル性暴力」が、コロナ禍で大きな社会問題になっている。
政府の性暴力被害などに関する相談窓口「Cure Time」や「DV相談+」を請け負っている一般社団法人包摂サポートセンターによると、
「コロナの影響でアルバイトがなくなった恋人(彼氏)がアパートに転がり込んできて、生活費も入れない。別れたいが性的な画像を撮られているため、それもできない。今は『風俗で働け』と言われている」
という相談があったという。他にも、コロナ禍で家にいる時間が長くなったことも影響しているのか、「実の父や兄からの盗撮被害が顕在化している」そうだ。
背景にポルノコンテンツ事業者の新規参入
リベンジポルノなどデジタル性暴力の相談件数
出典:警察庁
こうした「デジタル性暴力」の被害者から相談を受け、当該サイトに削除要請を行うなどの被害者救済活動を無料で行っているのが、NPO法人・ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)だ。
同団体に寄せられた2020年度(2020年4月〜2021年3月末)の削除要請は2万2735件。19年度の1万7839件から、コロナ禍を経て急増している。
警察庁の発表でもリベンジポルノの相談件数は年々増加しており、2020年は1570件と、19年に比べて6.2%増えている。相談内容で最も多かったのは「画像を公表すると脅された」(567件)、次いで「画像を撮影された、所持されている」(559件)だった。
ぱっぷす理事長の金尻カズナさんは、「デジタル性暴力の問題はコロナ以前からある」と前置きした上で言う。
「コロナ禍で削除要請のニーズは急増しています。背景には貧困と、コロナ禍でポルノコンテンツに新規参入した事業者が増えているという事業者側の問題もあるのではないでしょうか」(金尻さん)
大企業も性的搾取に加担している
デジタル性暴力の削除要請が多いサイト
出典:意に反して拡散した性的画像記録の削除要請事業報告書
ぱっぷすは2019年に削除要請事業を開始して以降、1万48のアダルトサイトに削除要請をしてきた。
「毎日のように新しいサイトにたどり着く」という同団体の内田絵梨さんは、アダルトサイトが増えた要因として、
「本人確認がなくSNS並みに簡単に登録できることに加え、お金のやりとりが仮想通貨などで出来るため匿名性が担保されていると思い、投稿や購入の心理的ハードルが低くなっていると考えられます」(内田)
と推測している。
上記の表は、ぱっぷすに寄せられた削除要請が多いポルノサイト(ドメイン名)1〜5位までのランキングだ。
6位以降は「 javfree.me」「yahoo.co.jp」「porn-images-xxx.com」「blogspot.com」「pornhub.com」が続く。
「fc2.com」「dmm.co.jp/dmm.com」「porn77.info」「yahoo.co.jp」「blogspot.com」などは削除に応じない場合もあるという。
「share-videos.se」は最終的には削除するものの、「要請から数週間から1カ月以上経たないと削除要請に応じない」そうだ。他にも「Twitter」は「児童ポルノの削除には応じるが、その他の性的画像の削除には消極的」だという。
削除に応じない理由として、「社会情勢を鑑みて判断する」と回答した企業もあったそうだ。
「誰もが知る大企業も性的搾取に加担しているのが現状です。
サイトを運営する企業やプロバイダーの事業者にはその社会的な影響について考え、対応や企業理念を見直すよう、引き続き強く要請していきたいと思っています」(金尻さん)
海外まで広がる被害には国際連携で救済を
shutterstock/west_photo
今後の最大の課題は「削除要請に応じないサイト」への対応だという。
特に問題なのが、法律が未整備の地域に拠点を置き、匿名性が高いことを売りにしている「オフショアホスティングプロバイダー」だ。削除要請に対応する義務がないため、サイトの管理者が削除要請に応じない場合は「為す術もなく」(ぱっぷす担当者)、犯罪の温床になっている。
これらは削除を求める書類を送っても宛先不明で返送されるなど、サイトの運営会社として記載または登録されている住所が実在しない、もしくは虚偽であることも多く、コンタクトを取ることすら難しいケースもある。
そもそもネットで被害が拡散するデジタル性暴力に国境はなく、削除したい画像や動画が海外まで拡散されてしまうことは多い。そうした場合、オフショアホスティングプロバイダーでなくともサイトのサーバーも海外にあることが多いため、現地の通報窓口に削除を要請するなど、国際的な活動や法的知識が必要だ。
ぱっぷすでは現在、中国や台湾で同様の活動をしている団体と連携し削除方法についての情報交換をしている。今後は海外のサーバーに投稿・流布されたデジタル性暴力被害に対しては、現地の団体や弁護士事務所の協力を得ながら、刑事事件化することに繋げていきたいという。
Business Insider Japanではセクハラや性暴力、長期化するコロナの影響による働き方や子育ての変化について継続取材しています。困っていること、悩みや不安があればどうか教えて下さい。ご連絡はikuko.takeshita@mediagene.co.jp まで。
(文・竹下郁子)