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コカ・コーラ自販機が、アップルの謎のミニアプリ「App Clip」対応した理由

App ClipにiPhoneをかざす

カメラで撮影もしくはiPhoneをかざすとミニアプリのインストールが促される。

撮影:小林優多郎

日本コカ・コーラは8月11日、公式アプリ「Coke ON」で提供されるキャッシュレス決済サービス「Coke ON Pay」にApple Payが対応したことを発表した。

加えて、アップルが2020年6月に発表した先進的ミニアプリサービス「App Clip」に、Coke ON対応自動販売機が対応し、8月25日から順次全国のCoke ON対応自動販売機に展開する。

このApp Clipへの対応は、実は国内はもとより全世界的にも非常に珍しいものだ。それが日本の企業が先行事例となって積極対応したというのは興味をひかれる。

今回は、日本コカ・コーラでCoke ON事業に携わる永井宏明氏に、アップル関連サービスへの対応が一気に進んだ背景を直撃した。

はじまりは“ポイントカードだけ”だった「Coke ON」

Coke ONアプリ

対応自動販売機で現金を含めて購入時にスタンプが貯まる「Coke ON」。

撮影:小林優多郎

「Coke ON」は、スマートフォンアプリ連動の自動販売機向けサービスだ。

2015年から開発がスタートし、翌2016年にポイントカードとしてのサービスの提供を開始した。

同アプリをインストールしたスマートフォンをCoke ON対応自動販売機に近付けて接続。その状態でドリンクを購入すると、スタンプを1つ入手でき、スタンプを15個貯めると好きなドリンクと交換できる仕組みだ。

行動圏内に対応自動販売機が設置されている人であれば、非常にお得なロイヤリティプログラムだと言える。

永井氏によると、2021年7月末時点でアプリは2900万ダウンロードを達成し、対応自動販売機は全国で38万台設置されている。

これはコカ・コーラが設置する自動販売機の2台に1台に相当する数字で、自動販売機の更新周期の課題はあるものの、長期的にはすべてをCoke ON対応にしていく意向だという。

クレカ・電子マネーから「Apple Pay」に対応した理由

Coke ON Pay

現在はさまざまな決済サービスを“支払い元”として連携できるようになった「Coke ON Pay」。

画像:編集部によるスクリーンショット。

ロイヤリティプログラムからスタートしたCoke ONだが、2018年11月にはスマートフォン内での決済が可能な「Coke ON Pay」の提供を開始している。

現金の手持ちや電子マネー対応の自動販売機でなくても、Coke ON対応の自動販売機であればスマートフォンのCoke ONアプリ上からドリンク代の支払えるというもので、自動販売機におけるキャッシュレス決済の幅が大きく広がることになった。

ただ、登場当初の“支払い元”はクレジットカードのみだった。

当時、日常の飲料購入のような小額決済をクレジットカードで済ませる文化が日本ではまだなかった。またカード情報を預けるという心理的ハードルからなかなか利用が進まないという課題を抱えていたようだ。

「Coke ONの3年前にFeliCa Lite型のポイントカードをオフィス内自動販売機で展開し、そこで大きな成功を収めていたのがサービス投入のきっかけです。

これを(オフィスのような)クローズドではないオープンな場所に展開するにあたって、FeliCa Liteのカードを作って届けるコストが課題となり、モバイル(アプリ)化での解決を図りました。

このロイヤリティプログラムの提供が最初のステップで、決済までCoke ON内で完結すればユーザー体験がより良くなると開発を進めたのがCoke ON Payです」(永井氏)

永井氏は続ける。

「ただ、日本に小額決済の文化がないせいかクレジットカードでの利用は伸びませんでした。

そこで、次のステップとして段階的な成長として広まってきていたコード決済に着目し、まずLINE Payに対応。(当時)まだ会社がなかった頃からPayPayとの交渉を進めていました。

ここで感じたのがコード決済との相性の良さで、クレジットカードでは広がるのが難しかったCoke ON Payが、当時の還元事業やキャンペーン効果もありますが、(コード決済サービスによって)ユーザーベースが徐々に増えてきました」(永井氏)

最近ではクレジットカード対応自動販売機も増えてきたが、やはり自動販売機でのキャッシュレスの主役といえば電子マネーだ。

都市部やオフィスなどの自動販売機を中心にキャッシュレスに対応している。

永井宏明氏

日本コカ・コーラ株式会社 ベンディング事業部ベンディングデジタルリテール イクイップメント&デジタルプラットフォームマネジャーの永井宏明氏。

出典:日本コカ・コーラ

永井氏によると、FeliCa対応の自動販売機は現状で19万台で、Coke ONを含めて何らかの形で電子決済機能を持っている自動販売機は重複分を含めて約40万台となる。

ただし、自動販売機全体では「現金利用がまだ多い」(永井氏)。

一方で、Coke ON利用に限定すれば2021年初めごろにはキャッシュレス決済比率が50%を超えるなど、逆転現象が見られるという。

Coke ONのユーザー属性とキャッシュレス利用層が合致した結果といえるだろう。

「Coke ON Payを広げるにあたっていろいろ検討してきましたが、今回のApple Pay対応も当然想定にありました。

ただし、課題として(クレジットカードの)ブランドが一部対応していなかったり(※2021年5月にApple Pay対応を開始したVisa)、手順が煩雑にならずに全体の購入体験がスムーズにという部分、そして厳しいレギュレーションへの対応の難しさがあり、当初は断念しました」(永井氏)

と、当初の対応は一筋縄ではいかなかったようだ。転機は、この4月のことだ。

「契機となったのは“毎日飲める自動販売機サブスク”として2021年4月に登場した『Coke ON Pass』で、これまでのクレジットカードに加え、Apple Payでの購入を可能としました。

ただし、現状のApple Payでは毎月引き落としをするリカーリング(Recurring)処理ができないため(※日本の場合の話。国によって対応が異なる)、毎月サブスクリプションを購入していただく必要がありますが。


(クレジットカードの)ブランド対応の問題も解決し、その流れで8月のApple Pay対応へとつながりました。

まだ始まったばかりですが、クレジットカード情報を登録しないといった手間や心理的ハードルの低さもあり、だいぶサービス利用がしやすくなったと思います」(永井氏)

App Clip対応はコカ・コーラ本社も支援

App Clip

世界でもまだ利用できる例が少ない「App Clip」。

撮影:小林優多郎

このCoke ON PayのApple Pay対応と並行して、まだ世界的に採用例が少ない「App Clip」の対応も可能ということがわかったのも、今回のプロジェクトを推進する要因になった。

「2020年に開催されたアップルの開発者会議『WWDC』でApp Clipのデモを見て興味を持ち、すぐにAppleにコンタクトを取りました。

ネットだけでは得られない情報に対し、我々が仮説としてもっていた情報が合致するかを検証しました。

実際、Coke ONがスタートしてから2年目あたりから『独立したCoke ONアプリではなく、ミニアプリとして我々のプラットフォーム上で展開しないか』という打診を、各プラットフォーマさんからいただくようになりました」

世界のプラットフォーマーから声援を受けた形だが、形にならなかった例もある。

「パートナー戦略の観点からいろいろ検討を進めていましたが、セキュリティーの観点も含め、WeChatなどを含む国内外のプラットフォームでは技術的課題を乗り越えられないことがわかり断念しています。

これは各プラットフォームのミニアプリ実装の仕様によるものですが、アップルの提供するApp Clipは、実質的に通常のアプリの小型版です。以前までに挙げられていた技術的問題もクリアーできるため、導入を進めていくことにしました」(永井氏)

ユニークなApp Clip、なぜ必要なのか?

App Clip

Coke ON対応自動販売機が順次、アップルの「App Clip」に対応する。

撮影:小林優多郎

App Clipは、iOSプラットフォーム向けのApp Storeを使ったアプリの配信以外に、「その場でミニアプリを“即席”でダウンロードして利用を開始する」という新しいアプリ利用の形だ。

特徴としては、

  • 10MB以下の小容量のアプリであること
  • ダウンロードしても直接インストールはされないためホーム画面にアイコンが残らない

という2点が挙げられる(Appライブラリ上には表示される)。

App Clip版Coke ON

App Clip版Coke ONを利用すると、一定期間は標準でホーム画面の最右部にある「App ライブラリ」に表示される。また、設定アプリの「App Clip」項目からも存在を確認できる。

画像:編集部によるスクリーンショット。

インストールされないため、事業者側からすれば“フルサイズ”のアプリの体験版として提供してもいいし、店舗やイベントへの来場者に対して一時的に配布するアプリとして利用するのもいい。

一般的に、多くのユーザーはスマートフォンで過ごす時間を上位10程度のアプリに占有されていると言われている。残りはインストールされても放置されたままか、そもそもインストールさえされない。

つまり、小規模の小売店などが提供するアプリは見向きもされず、せっかく開発費と時間をかけて用意したものであってもほとんど利用されないという悲しい現実がある。

App Clipはこうした課題を解決するサービスとして登場した。

「その点でApp Clipであればダウンロードも必要なく、2次元コード(App Clipコード)を読み取ったり、コード中央付近のマークにiPhoneを近付けるだけでNFCでCoke ONを呼び出せます。

機能を限定した“体験版”という形で提供するのですが、インストールしなければホーム画面が汚れないわけですし、気に入っていただければ、App Clip版Coke ONで貯めたスタンプもそのまま“完全版”のCoke ONアプリへと引き継ぐことが可能です」(永井氏)

App Clip版Coke ON 通知

App Clip版Coke ONの利用から1時間ほどで表示された通知。

画像:編集部によるスクリーンショット。

現状、App Clip版Coke ONはApple Payによる支払いと、スタンプを貯める機能に限定されており、他の決済サービスや貯めたスタンプを飲み物に交換する機能は非対応だ。

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